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JAPAN JAM 2024オープニングアクト出演を果たした「ポルトギース」の魅力に迫る
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JAPAN JAM 2024オープニングアクト出演を果たした「ポルトギース」の魅力に迫る

2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14~16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。 その出演者の中で、筆者が特に注目する次世代学生バンドが「ポルトギース」だ。 2024年5月に「JAPAN JAM」のオープニングアクトとして出演したことでも注目を集め、彼らの楽曲は、聴く人に情景を浮かばせるリアリティのある歌詞、思わず口ずさみたくなる耳に残るメロディ、そして心地よいリズム感が特徴だ。 今回は、その魅力に迫るべく、メンバーの中から中村隆太郎さん(Vo/Gt)と竹澤地洋さん(Ba)にインタビューを行い、楽曲制作へのこだわりやライブにかける熱意についてお話を伺うことができた。

フェス出演を振り返って

__TOKYO CALLINGやSOUND SHOCKを振り返り、現在の心境を教えてください。 竹澤(Ba):両方ともそうなんですけれども、まずお客さんとして見に来てくれる方々の中で、”ポルトギース”という名前の認知度が、徐々に上がってきたなっていう印象がありました。それはすごく、サーキットイベントやフェスに出る上での1つのやりがいというか、目に見えてわかる進捗度みたいな感じには捉えてますね。知ってくれる人が増えていくのがわかるのは、結構嬉しいし、やってて面白いところだなっていう風には思います。  __どういった時に自分たちのお客さんが増えたと感じますか。  竹澤(Ba):シンプルに1つはまずライブハウスにお客さんがいっぱい入ってるっていうのと、その後に物販のスペースに多くのお客さんが来てくれたりと、そういうところですかね。  中村(Vo/Gt):お客さんの乗り方もちょっとずつ、僕らの音楽の乗り方みたいなものにちょっと変わってきてるというか。今までは、曲を知らないだろうなっていう手の挙げ方だったりしたんですけど、最近本当ちょっとずつですけど、“ポルトギース”を知ってるんじゃないかっていう、手の挙げ方だったりするので、それはテンションが上がる部分ではあります。  __今年5月のJAPAN JAMに出演した時の心境はどうでしたか。  中村(Vo/Gt):やっぱり単純に注目度というか、知ってくれる人が増えたなっていう、JAPAN JAMというイベントの大きさを感じましたね。  竹澤(Ba):もう本当に僕はもう、ただただひたすらに楽しかったっていう思い出しかなくて、中学生みたいな感想になっちゃうんですけど(笑)。 中村(Vo/Gt):すごく楽しかった(笑)。  竹澤(Ba):え、そう。すごく楽しかった。でも結局それに尽きない? あんなでかいステージでやる機会がないっていうのはもちろんなんですけど。あの日の天気とかのコンディションもすごく良くて、自分たちの想像よりもお客さんが見てくれて、なんかもうひたすらテンションがぶち上がってたなっていう。終わった後もしばらくはもう余韻ビタビタだったっていう感じ。  __SOUND SHOCKやTOKYO CALLINGなどのサーキットフェスと違った点はありましたか。  中村(Vo/Gt):オープニングアクト、前座の枠だったので、いい意味ですごい気持ちを楽にできたというか。プレッシャーは感じないで、楽しむ全振りでできたなという感じです。 SOUND SHOCKやTOKYO CALLINGみたいなサーキットフェスは良くも悪くも、いつもよりプレッシャーがあるというか、ちゃんとここでお客さんとしてちゃんと取り込まなきゃなみたいな独特の緊張感があるので、それらと比べると、本当に楽しかったという気持ちが強く出た感じです。

バンド結成のきっかけ

__バンドを結成したきっかけやメンバーとの出会いは何ですか。 中村(Vo/Gt):メンバー4人いるんですけど、僕とギターの稲垣がサークルの後輩・先輩という関係、僕が後輩で、彼が2個上の先輩で。そのバンドがコピーバンドサークルで、もっと自分たちらしく表現できる場所を見つけたいですよねっていう話をして。 いわゆる外バンっていう形で、僕が高校の同期だった竹澤を呼んで、 稲垣がその前の高校の同期だったドラムの松田を呼んで、なんとなく結成されてったっていうか。 メンバー全員それぞれコピーバンドサークル出身。 __コピーバンドから、本格的にオリジナルをしていきたいと思ったきっかけは何でしたか。 中村(Vo/Gt):僕と今ベースの竹澤が、中3から高1ぐらいにかけて、2年ぐらいオリジナルでバンドをやってたんです。同じ高校だったんですが、それぞれ別々の大学に進んだので、一旦、オリジナルはお預けだよねってなってて。それぞれでサークルでコピーバンドをやってたんですけど、色々やっていく中で、コピーバンドの楽しさもありつつ、やっぱりオリジナルをやりたいなと、僕も竹澤も思っていて。そこで、僕がギターの稲垣さんを誘ったきっかけとしては、大学のコピーバンドサークルの打ち上げの時に、ちょっと酔っ払った勢いで誘ってみた。なんとか快諾してもらって。  竹澤(Ba):学生時代に僕と隆太郎(中村)が、高校時代にやってたバンドっていうのがコロナともろ被りしちゃってて。で、なかなか活動ができなかったんですよ。 そのモヤモヤみたいなのをずっと抱えたまま大学に各々行ってたので、なんかそれがこう、大学2年ぐらいの時に両方爆発して。それで、コピーバンドサークルからオリジナルを作るようになったって感じですかね。 

聴く人々に寄り添った楽曲づくり

__9月9日にリリースされた「アウトロ」という楽曲について、注目してほしいポイントはありますか。  中村(Vo/Gt):1つは歌詞ですかね。この曲は、1つの楽曲が恋人関係の2人を繋いでいるというような設定で、主人公が相手のことと、その思い出のこもった楽曲を重ねてしまうといったような曲になっています。あとは、「イントロを飛ばして流れたサビは」という部分から早口になっているところがあるんですが、どうしてもあの箇所は入れたくて、1番のBメロであったり、2番のそのAメロの前のところは結構工夫した部分です。 1つの楽曲とその恋人のことを重ねてしまっている情景を、あの箇所で浮かぶようにしたいなと考えた部分です。 YouTube - ポルトギース - アウトロ (Official Music Video): https://youtu.be/6o790p1GZGs?si=_Mzec4fjcJ4g5CvP __楽曲制作はどのような流れで制作していますか。 中村(Vo/Gt):僕がAメロとBメロとサビと、あとCメロをアコギの弾き語りで基本は作ってて、それを送って、その組み合わせ、構成部分はみんなでスタジオで話し合って制作しています。たまに僕が”GarageBand”っていう作曲ソフトで結構ドラムまでかっちり入れて、デモで送ることもたまにあります。前はそうやってたんですけど、それだとドラムは僕が作ったデモに結構縛られちゃうので、最初はシンプルに弾き語りだけで持っていって、ストロークとかもすごくシンプルにして、その決めの部分だったり、構成はなるべくスタジオでみんなの意見取り入れながら作っています。 __影響を受けているアーティストや尊敬してるアーティストはいますか。 中村(Vo/Gt):My Hair is Badの椎木知仁さんと、クリープハイプの尾崎世界観さん、オレンジスパイ二クラブの鈴木さん兄弟ですかね。サウンドもそうですけど、歌詞が特にすごく憧れていて。わかりやすく言えることをちょっとわかりづらく書くというか、解釈の余地の幅が広いのがすごい心地よくて。歌詞を見た時に、「一瞬これどういう意味なんだろう」ってなるんだけど、なんとなく自分の中でこれが答えじゃないかなみたいなのを落とし込める限界のわかりづらさというか、何もわかんないまま終わらない感じがすごく好きです。歌詞を書かせてもらう中で、なるべくどこまでわかりづらく書けるか、でもわかるぐらいがいいしな、みたいな。考える上で結構参考にはしてます。  竹澤(Ba):indigo la Endの川谷絵音さん、あとはLaura day romanceの鈴木迅さんですかね。メンバー4人集まって曲を作ってる時とかに、僕が出すアイディアには、多少は反映されてるんだと思います。 中村(Vo/Gt):我々の曲で「23」っていう曲があるんですけど、その曲の1番のサビが終わった後に、4拍だったのが3拍になるんだっけ。リズムが変わって、また元の4拍に戻るんですけど、それは竹澤が言い出しっぺというか、何かに憧れて付け足した部分なんじゃないかな。  竹澤(Ba):そうですね。なんかそういうのが好きって、ざっくり言っちゃうと抽象度が高いんですけど、急ハンドル切るみたいなのは結構好きだったりしますね。  中村(Vo/Gt):スタジオで、この部分で多分こういう風にやりたいって言うんだろうなっていうのは、もうなんか感じますね。ボツになることもあれば、そのまま採用ってなることも。 それぞれの誰がどんな音楽が好きなのかっていうのがなんとなくわかっている感じがあるので。曲作る時でも、多分この人こういう風にやりたいんだろうなっていうのはお互い感じながらやっていますね。 __状況が思い浮かびやすい歌詞が印象的ですが、改めて作詞作曲の際に意識していることはありますか。 中村(Vo/Gt):作詞で言うと、先ほど申し上げたわかりにくさも持たせつつわかりやすく、あとはおっしゃってもらえたような、情景が浮かぶように意識しています。例えば「アウトロ」という楽曲の『渋谷の3月』という歌詞の部分だったら、3月に渋谷に行ったことがない人でも、こういう気持ちで渋谷の3月を歩いてるんじゃないかと、ないはずの記憶が蘇るじゃないですけど。また、基本的には僕自身の実体験を元に書くことが多くて、すごくリアルな歌詞を書いているつもりです。 作曲については、キャッチーで口ずさんでもらえるようにはしたいと思っています。でもありきたりとキャッチーってすごく紙一重というか。 ありきたりにならないようにメロディや歌い方にちょっとした癖を意識しています。 竹澤(Ba):中村以外のメンバーが携わってるのが編曲面になっていて、それこそ「23」のリズム部分や「アウトロ」の早口の部分もそのイメージになるんですが、急にガラっと転調してみたり、冗長になりすぎないように、そのまま流されて曲に流れていきそうなところを、一旦意識をもう1回向けさせるみたいなタイミングをしっかり作る部分は意識しています。また、ベースっていうと注目されづらいパートではあるんですけど、曲の乗り方を出す上では1番大事だと思っているので、「こういうリズムの取り方を聴いてる人にしてほしいな」という部分は常々意識してて、それに合わせた乗れるようなベースラインを作るのを意識しています。  中村(Vo/Gt):ベースとドラムは、よく乗り方についてスタジオでずっと話してて、ギターはもうやることないみたいな時間が結構あります。 乗り方みたいな部分を気にしていますね、2人は。

ライブ裏側でのストイックな空気感

__ライブの裏側での印象に残った出来事はありますか。 中村(Vo/Gt):ギターの稲垣以外は、前の出番のバンドを見れないんですよ。やっぱり緊張しちゃうので。稲垣以外の3人は、出番が近くなると楽屋にずっと籠ってるんですけど、稲垣だけずっと最後の最後のギリギリまで前の出番の人を見て、戻ってきてやるみたいなスタイルですね。あとは、背中叩いて気合いを入れるっていうのはしてて、あれはやるとやっぱりなんか意外にも気合が入るね。  竹澤(Ba):あの瞬間が1番楽しいかもしれない(笑)。  中村(Vo/Gt):そうだったんだ(笑)。知らなかった。そんな楽しんでるように見えなかったけど(笑)。 竹澤(Ba):楽しいかも。 なんですかね、ライブの流れとかMCを試行錯誤してて、ここでどういう雰囲気で喋るのかとか、ここでどういう曲の流れを作るのかみたいなことは、毎回失敗に失敗に失敗を重ねて、まだ失敗を重ねてるみたいな段階で、ここはもう毎回ライブ来るたびに多分違ったものが見れるみたいな感じですね。  中村(Vo/Gt):僕が基本的にMCを喋ることが多いんですけど、直前までアドレナリンが楽屋の時は出てるから、「大丈夫、俺はいける」とか言っといて、いざその場面になると、全部飛んじゃってそのまま入るみたいなことがあるので、ライブのクオリティという意味では特に試行錯誤が必要だなと思う。あとは、うちのドラムの松田がBPM、テンポ感をすごい気にしてくれる。JAPAN JAMの前日の夜だったかな。夜から当日の入りの直前までずっとイヤホンでBPM聞きながら、楽屋の本当出番の直前まで聞いてたってことはありましたね。 竹澤(Ba):確かに1日中聞いてたよね。 中村(Vo/Gt):ずっと音漏れでピッピッピッピって。こっちが頭おかしくなる(笑)っていうようなことがありましたね。  __結構、真剣に直前まで向き合ってるイメージですか。 中村(Vo/Gt):今日いいライブができないかもしれないとあわあわしてる時ほど、いいライブができて、今日なんか行ける気がすると言ってる時ほど、すごいミスをかましたりしちゃうので。毎回真面目に向き合ってはいるつもりなんですけど、その時のマインドによってパフォーマンスに変化が出ちゃうのは良くないなと感じていますね。 竹澤(Ba):そういうことを考えてるってことは、ストイックではあるんですかね。この空気感ってメンバーみんな一緒なんで、ライブ前はちゃらんぽらんな雰囲気にはならないね。  中村(Vo/Gt):ならないですね。そんな直前までワイワイするタイプではなくて、SEが流れ始めたらそれぞれ結構静かめになって、背中だけとか叩くというような感じ。

居場所となるバンド活動

__活動を通して大変だと思うこと、苦労していることはありますか。 中村(Vo/Gt):それぞれが学生、1人は大学院の1年生なんですけど(稲垣)、レポートだったり研究とか色々、スケジュール感が難しい中では、時間の作り方はやっぱり難しい。 竹澤(Ba):大学の学部も違う4人の学生が一斉に時間を作るっていうのが意外と難しくなってきましたね。楽曲をコンスタントに作って更新して、ライブもコンスタントにこなしていかなきゃいけない。このサイクルはもう崩しちゃいけないという風には思ってるんで。そのために普段、週1くらいのペースで少なくとも集まるようにしてて、そこで曲作ったり練習したりみたいな。今年から1人社会人のメンバーもいる関係で、余計4人の時間を合わせるっていうのが難しくなってきたっていう印象ですね。 中村(Vo/Gt):あとはそうですね。学生の大きな1番の強みって、友達をたくさん呼べるみたいなのがあると思うんですけど、僕ら結構みんな友達少ないので、そこは全然活かせてねえなと(笑)。   でも逆に、学生だからこそサークル等を通していろんな人と関わったり、いろんなことを経験できるので、曲を作るという意味では、恋愛もそうですけど、それ以外にも様々なきっかけがあると感じるので、そこはまだまだ活かしていきたいと思う。  __今後目指していきたい姿はありますか。  竹澤(Ba):時間とかスケジュール感とか、そういうのが許す限りは活動を続けたいなと思ってて。  明確に、「ここまで行きたい」というのは正直そんな大きくは持ってないんですけど、本当に登れるとこまで登りたいみたいな感覚はありますね。もう記録伸ばしチャレンジみたいな感覚でずっとバンド活動やってます。  中村(Vo/Gt):遊びでやってるっていう感覚は、もう個人的にはなくなって超えたかなと思ってて。いろんな方が支えてくれたり関わってくれたりする以上は、本気で向き合うべきだし、向き合っているんですけれども。これを本気で続けながら、それぞれがやらなきゃいけないことがあるのであれば、それも本気でやるっていう。 メンバーのバンド以外のこともちゃんと支えられるような基盤。なるべく長く、死ぬまでぐらいの感じで続けて、それぞれ4人にとってまずはバンドが居場所になる。居場所になるための手段として、いろんな他の研究であるとか就職とかがあるのであれば、そこは認め合いながらみたいな。

音楽を通じたファンの方々とのつながり

__今応援してくれているファンの方々やこれから聴いてくれる方々へのメッセージはありますか。 竹澤(Ba):1番の目的でもあるというか、聴いてくださる方々は届けたい対象になるので、自己満で作ってるっていうよりかは曲を聴いて、良いなって思っていただきたくてずっと活動しているので、コメントとかくださったり、いいねしてくださったり、反応をいただけることは本当に原動力そのものみたいなところがあります。メンバー間で結構共有したりする時もあって、それがすごくモチベーションに繋がっています。 中村(Vo/Gt):ここまで続けてきた、かつこれからも続けていく原動力は、やっぱりまず聞いてくれてる方がいるっていうのが大前提なので、そこは本当にいつもありがとうございます。僕らの1つ1つにいいねをしてくれたりとか、応援のコメントをしてくれることも、すごく励みになっておりますので、今後とも、僕たちもちゃんと応援してくれる方々に寄り添えるようにしたいです。俺たちも支えられてますし、みんなの支えになれるように頑張ります。 

インタビューを通して

今回のインタビューを通じて、彼らの楽曲制作における細部へのこだわりや、裏側でのエピソードから彼らのストイックな一面も知ることができた。現役大学生ならではの背景が生み出す、心を揺さぶる楽曲をぜひ一度聴いてほしい。 【楽曲情報】各種サブスクからリリース中 ・4th Single『アウトロ』 ・3rd Single『花火と煙』 ・2nd Single『相合傘』 ・1st EP『ときめくstay with me』 【ライブ情報】 ・10/22 (火) : U's MUSIC、U-NEXT主催 「MUSIC NEXUS Live 導 - SHIRUBE」 - TOKIO TOKYO渋谷 ・11/2 (土) : KNOCKOUT FES 2024 autumn - 下北沢 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/
特集:AATA、フルアルバム「be in bloom」に込めた10年間の想いとは
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特集:AATA、フルアルバム「be in bloom」に込めた10年間の想いとは

今年4月にフルアルバム「be in bloom」をリリースし、今注目を集めている女性シンガーソングライター「AATA(あーた)」に、インタビューの機会を頂くことができた。 本特集記事では、甘く軽やかな歌声で多くのポップソングを生み出している彼女だが、そのアーティスト活動に対する想いや、一人の人間としての素顔について、インタビュー内容をお届けしたい。

AATAというアーティストとは

最初に、フルアルバムのリリース直後のタイミングでの活動状況について伺ってみた。 ーー今年の4月にフルアルバム「be in bloom」をリリースされ、8月からは全国ツアーを予定されているかと思いますが、直近の活動状況はいかがですか? AATA:そうですね。一旦制作は落ち着いていて、作ったアルバムを色んな方に知っていただこうと活動しているところです。折角コロナも落ち着いたので、今までなかなか行けていなかった場所に直接歌いに行って、お返しができればという気持ちでツアーを組ませていただいています。 ーー今回のツアーは、北海道から九州まで予定されていますよね? AATA:九州は今回初めて行かせていただくんですが、北海道は色々ご縁があって、一番多かった時期はワンシーズンに1回程は行かせてもらっていました。ラジオをやらせてもらっていたり、日本ハムファイターズのキャラクターのテーマソングを作らせていただいたりとか、偶然だったんですけど、凄い縁がある場所だなと感じています。全国の中でも特別に思っています。 ーー最近は、特に活動の幅を広げられていますよね? AATA:そうですね。スズキ ラパンのCMナレーションや、アイドルグループへの楽曲提供もあったり、有難いことに忙しくさせていただいています。東京の新代田にあるライブバーの店長も6月からやらせていただくことになったり、もう自分でも把握しきれない程になってます。 ーー最近は、特に精力的に活動されている様ですね。 AATA:色んな人に還元していくっていうターンなのかなと感じています。今まで好きでやってきたことが、今度は伝えていったり、繋いだりとか、そういう時期になっているのかなって、ちょっと個人的には思っていますね。あと、以前より「自分だけの音楽ではなくなった」っていう感覚もあります。自分の音楽を聴いてくれる人がいて、何かを求めてくれる瞬間が、自分の中で大きなモチベーションに繋がるっていうか。 ーーファンの方との繋がりを感じる瞬間ですか? AATA:そうですね。勿論、ファンの方がいてくれて、ライブの時には自分が求められているんだってことを実感できるんですけど、普段音楽を作ってる時って、すごい不安になったりする瞬間もあるんですね。そんな時でも「自分の曲が好きで私たちのために曲を作ってください」とか、「あなたの声が必要です」って言ってもらえると自信になりますね。 ーー自分の音楽に価値が付くような感覚でしょうか? AATA:そうですね。一種の価値付けのような感覚に近いです。商業ベースというと何か違うような気もするけど、しっかり仕事に繋がっている感覚が嬉しいですね。 ーー今回、北海道から九州までの全国ツアーを企画された経緯はどのようなものでしたか? AATA:フルアルバムのリリースツアーとしての企画なのですが、九州での開催は、ファンの方からの要望があったことも大きかったです。フルアルバム制作時にクラウドファンディングをさせていただいたんですが、自分が今まで歌いに行けていなかった九州にも応援してくれる方がいて、この機会に足を運んでみようかなと思いました。 ーーデジタル化の時代のメリットですね。 AATA:クラウドファンディングやサブスクリプション含め、ファンの方がどこにいるのかが分かる点は良い点ですね。昔だったら、全く分からなかっただろうし。数字やデータでファンの方と繋がっている感覚は凄く嬉しかったですね。

フルアルバム「be in bloom」に込めた10年間

次に、2024年4月にリリースされたフルアルバム「be in bloom」について伺ってみた。 ーー今回リリースされたフルアルバムはどの様な位置付けの作品ですか? AATA:今回のアルバムは、活動10周年を記念した集大成となる作品です。本当にこの10年間、私の中でも色々あったし、社会も変わったり、音楽シーンも変わったりっていうのもあって、周りの仲間たちやファンの方だったり、家族の支えがなかったら本当に続けて来られなかったなって思います。そういう人たちに「ありがとう」って伝えたい気持ちで作りました。 ーー確かに、ここ数年で音楽シーンも大きく変わりましたね。 AATA:そうですね。少し前までは、コロナ禍でライブやイベント自体ができない時期が続いたので、今だからこそ取り組めることがあるなって思います。でも、コロナがあったからこそ、何か普段感じることができなかった”ありがたみ”を再認識できたっていうのもありますね。 その期間は、自分と向き合う期間というか、「自分にとっての音楽」だったり、「暮らしの中での音楽」の意味っていうのをすごく考えた期間だったので、大切な時間でした。今、音楽を続けられていることのありがたみや、仲間や環境の大切さに気づけたし、本当に感謝だなって思いました。 ーー今回のフルアルバムは、荒山諒さんとの共作でしたが、今までの作品と違った点は? AATA:今回のフルアルバムは、この10年間でやってきたことの集大成を、敢えてちょっと音楽性に幅を持たせた形で見せたいなと考えながら、諒君と一緒に作りました。 過去にリリースしたAATAの1枚目のアルバムが「BLUE MOMENT」というタイトルの作品で、音楽的にはトラックに全振りした様なアルバムになっているんですが、元々、そのアルバムより前は弾き語りのシンガーソングライターとして活動していました。 オーガニックというか、弾き語り+バンドサウンドっていう感じの音楽性で、ソウルの要素も入りつつ、ポップスみたいな感じでやらせてもらっていたんですが、「BLUE MOMENT」のアルバムが、それまでの自分が弾き語りで育ててきた良いところを捨ててしまっている様な感覚があったんですよね。 当時、パッケージングする上では、どこを切り取っても同じものが見えた方が1枚目のアルバムとしてはキャッチーで良いなと考えて、それも正解だったなと思います。ただ、その自分の強みをもう1回出していきたいと思って、今回のフルアルバムでは、敢えてちょっと音楽性に幅を持たせた1枚にしました。そういう意味でも、この10年の集大成ですね。 ーーこの10年が凝縮した作品ということですね。 AATA:そうです。ただ、オムニバスみたいな作品にはしたくなかったことと、音楽性に偏りがあるアルバムは美しくないなと思ったので、そのバランスの取り方や音楽性や曲順には、すごくこだわりながら2人で作りました。 ーージャズ的な楽曲も多い印象を受けましたが、そこが狙いだったということですね。 AATA:そうですね。自分の持っているものを全部出しちゃおうみたいな感じですね。 ーー作品を通してのメッセージは何かありますか? AATA:フルアルバムのタイトルが「be in bloom」で、直訳すると「咲いてる」という意味なのですが「みんな生きてるだけで、そのままで素敵だよ」ってメッセージを込めています。 私自身のAATAとの向き合い方の変化にも影響しているんですが、私が20代の頃って、最初にまず自分の中に否定があって「ここが自分ができないから変えていこう」っていう気持ちをモチベーションにしていたところがあったんですが。そうじゃなくて、ちょっと出来ないとか、人より苦手だなって思うところもある意味個性だし、だからこそ生まれてくるものがあるなっていう風に思った時に、何か肯定してあげることも大切だなって思ったんです。 SNSでは、どうしてもビジュアルがどうのとか、ここは駄目だとか言われることもあると思うんですが、あなたの素敵なところを知っている人は周りにたくさんいるし、何より自分の素敵なところは自分が知っているよっていうメッセージを発信していきたいなって思ってて。 なので、フルアルバム1曲目の「C.H.O.O.O.E」っていう曲とか、あとは「MOMANTAI」っていう曲は、そんな思考の変化が現れた曲になっています。 ーーSNS世代の子たちには特に届けたいメッセージですね。変化のきっかけは何だったんですか? AATA:コロナ期間でしょうか。自分を見つめ直す期間を過ごす中で、自分のコンプレックスと思うところを変える努力をする日々を送っていたのですが。コンプレックスと向き合った結果、自分がコンプレックスだと思っていたものも、他の人から見たらすごいキュートなところだったり、少しずつ考えが変わりました。 完全に悪い人や、完全に良い人って絶対いないし、シチュエーション次第で人って悪者にも見えるけど、英雄にもなることって実際あるなって思うと、自分の駄目なところを嫌うよりも、良いところを好きでいてくれる人に何か出来たらなって思います。 このアルバムを通して、同じように悩んでる20代の頃の私みたいな女の子とか、男の子とかがいたら、何か気づいてもらえたらなって思います。 ーー作品制作の観点で、こだわった点はありますか? AATA:自分がワクワクするものや、本気でカッコいいって思えるものしか出さないってことでしょうか。あと、1人で完結させないってところですね。今回のアルバムは、荒山諒がトータルプロデュースをしてくれましたが、それ以外にもトラックメーカーの方とコラボさせていただき、色々な化学反応が生まれました。 私はシンガーソングライターっていう自分で曲を作って歌う人間ではありますけど、何かそこに執着はなくて、私の知らないエッセンスだったり、気づきとかをもらえる瞬間が、音楽をやっていて嬉しい瞬間ですね。 ーー関わってくれた方と納得するものを作ったということでしょうか? AATA:そうですね。商業的に売れるっていう視点も大切ですけど、やっぱり自分が納得したものを作るっていうところは曲げたくないなって思っています。流行りの音楽がどうとかではなく、自分がやりたいと思っているホットなものを作って、みんなに見せられた方が、応援してくれているファンの方もきっとワクワクしてくれるなって、制作チームもそうだろうなって思い、作りました。

幼少期の挫折とは

次に、AATAというアーティストを形作った過去の経験や困難について伺ってみた。 ーー今までの人生の中で苦労された経験はありますか? AATA:大学受験での失敗ですね。私、幼稚園に通っていた頃に、結構ひどい心臓病にかかっていたんです。その頃、同じ病棟でよく一緒に遊んでいた白血病の子が急にいなくなっちゃう様な経験や、看護師さんやお医者さんに救ってもらったっていう思いがあって、その頃からずっと小児科の先生になるのが夢だったんです。 ただ、大学受験まで頑張ったんですけど、受験当日にめちゃくちゃ緊張しちゃって、頭が真っ白になって何も出来なかったんです。そこで、すごく大きな挫折を味わいました。結局、他の医療系の大学に入学したんですが、ずっとコンプレックスが消えなくて「私がこんなところにいてどうするんだろう...」みたいな気持ちで生きてきたんですけど、何年かして、ひょんなことから音楽を始めたんです。 当時歌詞を書いた初期の曲に「各駅停車」っていう曲があって「1駅1駅本当だったら見逃していた景色も、こんな回り道して1つずつ見てる私だから、この景色を知ってるんだ」っていうことを思った時に、大学受験で失敗した経験も何か還元できるかも知れないって思えて。 結果として違う形ではありますけど、音楽を通して「本当に救われました」っていう言葉をもらったり、「この曲で大学受験乗り越えました」って言ってくれる瞬間に、ちょっと違うアプローチだけど誰かのためになってるんだなって思います。 ーーAATAさんの人柄が感じられますね。

リスナーへ伝えたい想い

最後に、リスナーの方へ伝えたいメッセージについて伺ってみた。 ーー本インタビューの最後に、ファンの方へ伝えたいメッセージはありますか。 AATA:音楽を通して、今まで私は色々な出会いをもらって、すごくそれに救われたので、今度は音楽を通じて、また誰かと誰かが出会うきっかけになったり、人生の何かきっかけになれたらいいなと思っています。 今後も、できるだけ多くの方に音楽が届くように頑張って活動していくので、どうか見守っていてください。

インタビューを振り返って

インタビューの中で、AATAのフルアルバム「be in bloom」に込めたメッセージや想いだけでなく、アーティストしてのルーツとなるエピソードを伺うことができた。 昨今の音楽シーンのトレンドを汲み取りつつも、自身のアーティスト感を強く持ち、世の中に「自分らしくいることの大切さ」を投げかける姿は、とても印象的だった。 彼女の音楽に触れ、自分を肯定してあげる。そんな瞬間をあなたも感じてみてはどうだろうか。 ■ リリース情報 AATA 『be in bloom』 2024年4月18日 リリース リンクはこちら:https://aata.thebase.in/items/85541842 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/