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名古屋拠点の4人組バンド The Moon – 日常が紡ぐ音楽の物語
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名古屋拠点の4人組バンド The Moon – 日常が紡ぐ音楽の物語

筆者がストリーミングで耳にした瞬間、心を掴まれたバンド、The Moon。 愛知県の名古屋を拠点に活動する4人組バンドで、ジャズやR&Bの要素を感じさせる 1st シングル「徒花」をリリースすると同時にバンドを結成し、本格的な活動を開始したようだ。 儚さを感じさせる歌声と、温かみのある音色やメロディが織りなす音楽、そして日常の一部を切り取ったかのような歌詞が印象的で、聴く人の心にそっと寄り添う楽曲となっている。 そんな彼らが、12月15日には初のEP「atodashi」をリリースし、新たな音楽表現の一歩を踏み出した。 今回のインタビューでは、メンバーの琴梨(Vo)さん、宮田(Ba)さん、真央(Key)さん、めい(Dr)さんのうち、宮田(Ba)さん、真央(Key)さん、めい(Dr)さんの3名に、バンド結成の背景や、これまでリリースした楽曲に込めた想い、そして今後の展望についてお話を伺うことができた。

結成のきっかけは、King Gnu のMV

まずは、バンド結成の経緯やメンバーとの出会いについて伺った。 __バンドを結成しようと思ったきっかけは何でしたか。 宮田(Ba):僕と真央(Key)が高校時代からの同級生で、卒業する前から「何かやりたいね」と話していた中で、結局サラリーマンに1回なったんですけど。ある時友達がカラオケで、King GnuさんのVinylを歌っていた時にMVが同時に流れていて、それを見た時に僕に電気が走りまして(笑)。こういうのをしたいと思って。それでKing Gnuさんを追いかけつつ、他のアーティストさん含め、アーティストの人たちがフェスなどのステージに立って見ている景色を見てみたいなと思って。それで真央と2人で、バンドを組むことになりました。 __楽器の経験はそれまであったのですか。 宮田(Ba):全くやったことがなくて。20歳の頃に楽器を始めると同時にバンドを組みました。 __めいさんの、メンバーとの出会いのきっかけは何でしたか。 めい(Dr):ボーカルの琴梨さんとたまたま同じ美容院に通っていて、席が隣になって。その時に、たまたま会話の中で私がドラムをしていることを聞いていてくれたみたいで。琴梨さんから、「今、バンドにドラムがいないから入ってくれませんか」と誘われたのがきっかけでした。私が元々 The Moon のファンで楽曲を聴いていたので、ぜひ参加したいと思って。 __バンド名の「The Moon」、由来を教えてください。 宮田(Ba):由来は、バンド名をどうするかっていう話になっていた時に全然決まらなくて。コンビニで話していて、空を見たら月が綺麗だったっていう(笑)。 バンド名の由来は、日常から切り取ったようなもので、「月」という要素が彼らの楽曲の雰囲気にもぴったりと合っているように感じた。 では、彼らは普段どのような活動をしているのだろうか。SNSでは、レコーディングやスタジオ練習の様子が見受けられたが、実際のところはどうなのか。さらに掘り下げて聞いてみた。 __活動状況としては、楽曲制作やライブは頻繁に行っているのですか。 宮田(Ba):ライブは正直まだ1回しかしたことがなくて、今年の5月に1度だけ行いました。というのも、自分たちの持ち曲がなくて。5月に1回行ったライブは少しなのですが、コピーを交えてのライブをしました。それで今3曲リリースしているのですが、それからは自分たちの曲を増やすために、12月15日リリースのEPに向けてレコーディングと制作を繰り返していました。 レコーディングは、12月15日にリリースの4曲入りEPの制作に向けたものだったようだ。 The Moonの楽曲はどのように作られているのだろうか。 __楽曲制作はどのように行っているのですか。 真央(Key):僕の家にパソコンやインターフェイスとか機材が色々置いてあって、そこでDAW上でできるようになっていて。楽曲は僕と宮田が作ることが多いので、2人で僕の家に集まって、話し合って作っていくことが多いですかね。 __作詞作曲を二人で行っているのですか。 真央(Key):作曲は僕が少しできて、作詞は全て宮田が担当しています。 1人で完全に作るというより、2人で話し合って作っていくので、作り始めに大体最初どういう曲を作るかっていうイメージを2人で固めてから作ることが多いですかね。

3つの楽曲に込められた想い

EP作品について伺う前に、まずは現在リリースされている3曲の楽曲について知っていただきたい。 楽曲についてお話を伺う中で、それぞれの楽曲にテーマが意識されていることが印象的だった。 まず、2023年9月にリリースされた1st シングルの「徒花」。 この楽曲は『失恋』をテーマにしているそうだ。 ジャズっぽさを感じさせる独特のリズム感がイントロから引き込んでくれ、琴梨さんのボーカルと切ない曲調が見事に合わさった楽曲だ。 曲名の「徒花」は、『咲いても実を結ばない花』を意味し、外見は華やかでも実質を伴わないもののたとえにも使われる言葉だ。 歌詞は宮田さんの実体験をもとに書かれているようで、実を結ぶことができないもどかしい恋愛心情が表現されている。 __「徒花」という楽曲について、『失恋』をテーマにしたきっかけは何でしたか。 宮田(Ba):僕の失恋です。振られたじゃないですけど、色々あってダメだった女の子に届けばいいなっていう想いで作りました。 __制作にあたって、工夫した部分はありますか。 真央(Key):最初(宮田さんが)コード進行を出してくれて、僕がとりあえずコードだけでピアノのバッキング入れて「いいじゃん」ってなって進んだんですけど、あとはもうなんかセンスでやったよね。 宮田(Ba):センスでやりました(笑)。 真央(Key):センスで結構進めちゃって。 宮田(Ba):真央と僕の好きな音楽が結構似ていて。2人の好きな感じをふんだんに詰め込んだ曲になりました。 __どういったアーティストさんのイメージを持っていたのですか。 真央(Key):僕、The Cardingsさんの『Carnival』っていう曲が好きで、その曲のイントロがオルガンから始まっていて。すごくいいなと思って、オルガンで始まるイントロのアイデアはそこから持ってきましたね。ドラムは最初結構センスで作りましたけど、よく聴いたら僕らJamiroquaiさんが好きなんですが、『Virtual Insanity』っていう曲と似ているね、という話にはなりましたね。 次に、2024年4月にリリースされた 2nd シングル「MUT」。 ラップが印象的で、1stシングルの「徒花」とは異なり、ヒップホップ要素が取り入れられ、楽曲の雰囲気がガラッと変わっている。 曲名の「MUT」は、ドイツ語で『勇気』という意味があるそうだ。 そのテーマでもある通り、踏み出せずにいる人たちに向けて語りかけ、自分の目指す未来へ進んでいけるよう『勇気』を届けるメッセージが込められた楽曲となっている。 __「MUT」という楽曲について、『勇気』という意味を込めた楽曲にした理由は何でしたか。 真央(Key):2ndのシングル「MUT」は、リリースした時期が4月の後半で。 4月は新しい環境で頑張る人が多い時期でもあるので、そういった人たちに向けての『勇気』をイメージしました。 __ラップも印象的で「徒花」に比べて雰囲気も一気に変わったと思いますが、何か意図があったのですか。 宮田(Ba):1番初めに出したのが結構暗い曲なので、次は明るい楽曲をやってみようかっていう。僕が趣味でラップをやってるので、自分のラップを入れようという風に考えました。 宮田さんが趣味でやっているというラップが取り入れられたこの楽曲では、リリックにも寄り添ったメッセージが込められている。ぜひ注目してほしい。 続いて、2024年7月にリリースされた「Soleil」。 この楽曲は『結婚』をテーマに作られた楽曲のようだ。 結婚を誓い合う心情や、人生の新たなスタートを描いた歌詞にも印象を受ける。 __「Soleil」という楽曲について、『結婚』 という意味を込めた楽曲にした理由は何でしたか。 宮田(Ba):3曲目の「Soleil」は、ちょうど友達が結婚式だった時で。その友達は高校からの友達でよく知っていたので、高校から今までの経路をたどっての歌詞になっています。 __イントロの部分でもイメージを感じましたが、『結婚』のテーマを表現するために意識したことはありますか。 真央(Key):「Soleil」は『太陽』っていう意味なんですけど、「ひまわり」っていう捉え方もできるらしくて。結婚した友人の奥さんが向日葵が好きらしく、そこからこの曲名をつけました。 楽曲で表現した部分は、本当は『太陽』という意味なので、最初は、少し焚き火の音みたいな要素を入れて、火を表しました。ここでストリングスも使ったことで、華やかに、少しクラシックっぽさも表していこうかなと考えた感じですかね。盛大に祝いたいなと思って工夫したところです。 このように友人の結婚を祝う気持ちや、その特別な瞬間への思いが楽曲の細部にも表現されている。 聴く人に幸せが伝わるような、温かさの込められた楽曲となっている。

EP「atodashi」を通してバンドの色を

既にリリースされている3つの楽曲についてお伺いしたが、12月15日にリリースのEPについてもお話を伺った。 4曲を含めたEP「atodashi」をリリースするようだが、これまでの楽曲とは少し異なるアプローチを取り入れているようだ。 真央(Key):これまでの楽曲では、音色をたくさん重ねるという方向性で編曲とかをしていたんですけど。 宮田が、少ない楽器や音数での「満足感のある曲」を追求しているようで。それを聞いて、最近は少ない音数の中でその1曲で満足感が出るというのを目指して制作していますね。音数が少ない分どう展開していくかを考えることが最近多いかなって思います。 __EPについて、何かテーマはあるのですか。 宮田(Ba):EPの名前が「atodashi」っていう名前になっているんですけど。日常にある恋愛だったり、会話の中での「話し手の後者に回る」といったようなものが、一応テーマになっています。 真央(Key):「笑談」っていう曲があって、その曲は特定の友人とか、周りであったことを歌詞に込めて作っていますね。でもそんなにがっつりとしたテーマはないかな。 __制作において今までの3つの楽曲とは違う、新たな試みはありましたか。 真央(Key):今のところ、3曲ともジャンルが別々っていうか。1曲目はジャズやR&B、2曲目はラップでヒップホップ要素を取り入れて、3曲目がクラシックっぽさをイメージしたんですけど。 でもこれから、自分たちのバンドの色を定めていきたいっていうところもあって、EPで少し固めるようにはした感じですかね。 僕らはいつも通り作ったつもりなんですけど、聴き手からしたらまた新しいものになったのかなと思います。音数が少なくなって、また少し違う感じに聴こえるんじゃないかなと思います。

目標は「森、道、市場」

EPのリリースを機に、今後のライブ活動にも期待を抱いているが、過去に一度行ったライブについても、今後の展望を交え、お話を伺った。 __初めて行ったライブはカバーも交えたんですよね。どんな曲をカバーしたのですか。 宮田(Ba):2曲カバーはしたんですけど、うちのボーカルの声に合いそうだと考えてshowmoreさんの「circus」、あとは僕と真央がやりたかったSuchmosさんの「GIRL」という曲をカバーしました。 __どういうお気持ちでしたか。 宮田(Ba):あんまり成功した感はなかったですね(笑)。 真央(Key):「徒花」がオルガンとかを使用して、音色も少し多く取り入れていて。それもあって初のライブで、同期を使って演奏したんですけど。同期をセッティングするっていう部分で、最初手こずったかなって感じですかね。最初やばって思ったけどね(笑)。これからライブをしていって、そういうとこも慣れていって、いろんなところでライブをしていきたいって思いますね。 __その時はどういう規模感の場所で行ったのですか。 宮田(Ba):喫茶店だったんですよね。マニュアル喫茶店で。ほぼ自主企画みたいな感じで、先輩のバンドとか呼んで、ラッパーとかも呼んでみたいな。DJもして。 __楽しそうですね。 宮田(Ba):楽しかったですけどね、あんまり満足できなくて(笑)。 __EPを出すというきっかけで、今後のライブの展望はありますか。 宮田(Ba):無難にライブハウスでやったことがないので、今までで。誰もが一度は通るライブハウスでもやってみたいですし、野外でもやってみたくて。 今のところの僕らの目標が、愛知県の蒲郡市である「森、道、市場」っていう大型のフェスがあるんですけど、出てみたいなと思っているので。野外でもライブをやってみて、経験を積んでいきたいですね。 まずは、来年からライブ活動にも積極的に取り組んでいきたいという熱意も伺うことができた。今後の展開にも注目していきたい。

日常で紡ぐ音楽

現在はバンド活動を中心に音楽活動を行っていますが、それぞれの活動の取り組みについても伺った。 __現在、活動はバンド活動中心で行っているのですか。 真央(Key):僕はバンドで楽曲を作る活動をしていることが多いですね。あとは楽器を始めたのが遅くて、実力がまだないなと思っていて。クラシックとジャズを習いながら作曲をしていますね。 宮田(Ba):僕は、バンド組んだと同時期くらいに仕事を辞めて、そこから作曲活動中心でという感じです。 めい(Dr):私は、普段は音楽の先生とピアノの講師をしています。他の時間はもう趣味も音楽なので、全部ドラム、バンドです。 __ボーカルの琴梨さんも、弾き語りでステージに出ていますね。 宮田(Ba):琴梨さんは高校からギターを始めて、卒業したタイミングぐらいから弾き語りを始めたようで。そこからも趣味という感じでステージに出ているのだと思います。 __今後バンドとして挑戦していきたいと思っていることはありますか。 真央(Key):12月はEPで4曲をリリースする予定ですが、今後はアルバム、もう少し大きな作品を僕は作っていきたいなと考えていますね。ライブは先ほども言った「森、道、市場」を目標に頑張りたいです。 めい(Dr):県内でも県外でもいっぱいライブやりたいです。あと私も作曲したいです、一緒に(笑)。 めいさんはEPがほぼ完成していた段階でバンドに参加したとのことで、今後は制作活動にも積極的に取り組んでいきたいとのこと。 今後、新たな楽曲の世界が広がる可能性を感じさせるコメントだった。 The Moon が作り出す新たな音楽の世界が、今後の楽曲やライブ活動を通じて多くの人に広がっていくことを期待したい。 __EPリリースを踏まえて、どういう風に聴いてほしいといった想いはありますか。 宮田(Ba):今回のEPの楽曲は意外と寄り添った曲というか、さまざまな人に当てはまることが多いと思う曲ばかりなので。自分を当てはめてじゃないですけど、感化されてほしいなって思います。 めい(Dr):感化されてほしいですね(笑)。 まお(Key):やっぱ僕と宮田が、楽器を始めるのが遅かったけど、こんなことができるよっていうのを思ってもらえたら、多くの人が色々な道に挑戦したり、 今からでもできるって思えたらいいなって僕は思っています。 12月にリリースされるEPでも、私たちの日常に寄り添う、素敵な楽曲が詰まっているだろう。 ぜひこの機会に、The Moon の音楽に触れてみてはいかがでしょうか。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024オープニングアクトに登場した“HINONABE”の音楽とその世界観に迫る
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ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024オープニングアクトに登場した“HINONABE”の音楽とその世界観に迫る

2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14日から16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。 その出演者の中で、筆者が特に注目している次世代学生バンドが「HINONABE」である。 彼らは、2024年8月10日のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 にオープニングアクトとして出演し、さらに独特の世界観と迫力ある映像で注目を集めた「裸体」のミュージックビデオは、YouTube再生回数が3万回を超えるなど大きな反響を呼んでいる。 そんな彼らの楽曲に込められた想いや楽曲制作、ライブの背景に迫るべく、メンバー4人のうち、磯 敢太さん(Vo/Gt)、菊地 楓さん(Gt/Cho)、佐藤 ケンゾウさん(Dr/Cho)にお話を伺うことができた。

新たな目標が見えたフェス出演

__TOKYO CALLINGやSOUND SHOCKを振り返り、現在の心境を教えてください。 磯(Vo/Gt):サーキットイベントということで新しいお客さんもたくさん来るので、今までやってないようなライブをしたり、少ない曲の中でも少し変化をつけたりして、楽しく激しいライブができたので、すごくいい夏の思い出になりました。 菊地(Gt/Cho):今まで出たことのない規模の大きなフェスやサーキットに色々と出ることができて、嬉しかったです。 佐藤(Dr/Cho):第一に、出たことがなかったサーキットに出られたことが嬉しかったのと、自分たちのやっている音楽をいろんな人に見てもらえる場っていう意味でも、そういう機会が嬉しかったし、もっと知ってもらいたいなという思いが、嬉しい気持ちの中にも強くありました。 __今年8月のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 に出演した時の心境はどうでしたか。 佐藤(Dr/Cho):ロッキンは誰もが知ってるぐらい大きいフェス、夏の1番のフェスっていう認識なんですけど、そのようなフェスにオープニングアクトとして出演できたことがまず光栄でした。嬉しい気持ちはもちろんのこと、自分たちの年齢で簡単に立てるようなステージではないと思うので、貴重な経験ができて、これからも頑張っていこうっていうモチベーションにも繋がった気がします。 菊地(Gt/Cho):今回はロッキンのオーディションで勝ち上がって出演できた形になるんですけど、今後の目標にも繋がる良い経験になったと思っています。 あと、ちょうど自分の20歳の誕生日とロッキンの日が重なってて。お客さんにも「おめでとう」と言ってもらえたことはすごく嬉しかったですね。 磯(Vo/Gt):ロッキン、初めての規模感のキャパ、初めての野外ライブで。そんな大きいフェスに初めて出られるということで、不安もめちゃくちゃあって、もう本番直前まですごい緊張もあったんですけど、いざステージに立つと、すごく気持ちよかったですね。あとはオープニングアクトとして気合いももちろん入ってましたが、これがまたオープニングアクトじゃない形として出られた時、もう楽しみだなっていうのが思い浮かぶステージでしたね。

メンバーとの出会いや影響を受けた音楽

__バンドを結成されたきっかけやメンバーとの出会いを教えてください。 磯(Vo/Gt):僕とギターの楓(菊地)は元々音楽に一切触れてなかった人間で、全然違う部活をやってたんですけど。僕がオリジナル曲を作りたいと思って楓を誘って、その後ベースの優之介が入ってきて。活動していく過程で、高校卒業した時に前のドラムが脱退して、そこで募集をした時にケンゾウが来てくれて、今のメンバーで活動をしている状態です。 __皆さん元々お知り合いだったのですか。 磯(Vo/Gt):ギターともベースとも高校で初めて会いました。僕が高校に入る前からカバー曲よりオリジナル曲を作りたいなと考えていたので、それがきっかけになって、オリジナル曲を多く作る高校生バンドとして活動するようになったんだと思います。 __結成されたのはいつ頃ですか。 磯(Vo/Gt):今のHINONABEという名前になる前のバンドでは2020年〜2021年頃から活動していて、今のメンバーで本格的に始めたのは2024年、今年からです。 __佐藤さんはどのようなきっかけで参加することになったのですか。 佐藤(Dr/Cho):元々高校時代の彼らを見たことがあったんですけど、ちょっと興味があって。それでずっと見ていたら、ドラムが脱退しちゃうって話で、メンバーを探してるって聞いて。自分の感性的に、高校生でこういう音楽をしてるのは本当にすごいなと思っていたので、そこから、入らせてもらおうかなっていう経緯で自ら連絡しました。

インスピレーションを受けているアーティスト

__影響を受けてるアーティストや尊敬しているアーティストはいますか。 菊地(Gt/Cho):高校に入るまでは全く音楽に触れてなかったのですが、音楽を始めてからヨルシカさんにハマって、高校の時ずっと好きでした。今はリーガルリリーさんや羊文学さんが好きです。 __高校入学してからギターも始めたのですか。 菊地(Gt/Cho):そうですね。 磯(Vo/Gt):僕はボカロを中学の時から聴いていて。高校に入ってからは、カラオケトップランキングとかに入ってるような曲ばかりを聞いたんですけど、NEEさんっていうバンドがきっかけで、アンダーグラウンドな曲を聴くようになりました。そこからより一層音楽の面白さを知った気がしています。僕にとってはNEEさんがでかいですね。 1人で楽曲を作ってる時には、できる限りその期間は1つのアーティストだけを聴かないようにしてるんですけど、サカナクションさんとかカネコアヤノさんとかは、影響というか、何回も戻ってきます。苦戦した時に、どうしたらこういう雰囲気を出せるんだろうかっていう時には、助けてもらったり、ある意味ちょっと気持ちを戻してもらったりしてますね。 __磯さんも高校に入ったタイミングで楽器を始めたのですか。 磯(Vo/Gt):そうです。高校に入る前は全然楽器とかは一切やってなくて。鼻歌はやってました(笑)。 佐藤(Dr/Cho):逆に僕は3歳ぐらいからピアノを習わせてもらってたので、割と物心ついた頃には音楽に触れてたので、明確に影響を受けたアーティストが誰かと聞かれると、覚えていないっていうのが答えです。ずっと音楽には触れていたけど、バンド系の音楽には触れてなくて。でも、いま僕のドラムに影響を与えているアーティストでいうと、絶対にルサンチマンっていうバンドを答えますね。 __ドラムはいつ頃始めたのですか。 佐藤(Dr/Cho):中学校から高校まで吹奏楽をやってたんですけど、ドラムはそこでちょっと触るぐらいで、ちゃんとやり始めたのは18歳の時で、2、3年前ぐらいですね。

独自の世界観を生み出す楽曲制作

HINONABEの楽曲には一貫したテーマがあるのか、作詞作曲を担当する磯さんに尋ねると、彼は「愛」を大きな題材にすることが多いと語ってくれた。彼らは「愛」のさまざまな側面を追求し、その要素を楽曲の独特な世界観に取り込んでいる。そんな彼らの楽曲制作の過程に迫ってみた。 __楽曲制作はどのように行われていますか。 磯(Vo/Gt):楽曲制作は、僕がパソコンで全楽器を軽く入れたデモをメンバーに提出して、そこからはメンバーとアレンジを長時間かけてやってきたのが今までの作り方ですね。 __楽曲の世界観に衝撃を受けたのですが、どこからインスピレーションを得ていますか。 磯(Vo/Gt):抽象的になるんですけど、景色や匂い、温度とか、空間的な要素で曲作りが変わると思っています。また、ギターの種類とか出すアンプの音とかで、曲作りの雰囲気、モチベーションも変わりますね。逆に「生で音を出すからこういう曲ができる」という時もあったり、その時々で変わるのを高校生の頃くらいに気づいてから、1つの楽器でずっと作ったり、初めからパソコンでやったりというようなずっと同じ方法では作ってない気がします。 __歌詞も印象的ですが、どのように考えているのですか。 磯(Vo/Gt):文学に精通してるわけではないんですけど、小さい頃から本を読むのが好きだったり、漫画とかアニメとか映画が好きで。歌詞を書く時でも、気持ちを主体に出したい曲の時は気持ち主体で出して、言葉にできない雰囲気や世界観がある時は、変にその世界観を括らないように、その世界観が浮かんだ時にそばにあるものを風景として歌詞に織り込んだり。それプラス自分の感情とか、曲を作ってる時の温度感とかを一緒に歌詞に込めてますね。 __アレンジ面で意識していることはありますか。 菊地(Gt/Cho):アレンジでは、ボーカルメロディー、他のバンドメンバーのリズム感、自分の音の並び方を意識してて、自分のリードフレーズに関しては音の繋がりをよく意識してアレンジしてます。いつも楽譜ソフトでアレンジするんですけど、全体をまとめて聴いた時に聴きやすく感じるかどうかを大切にしています。 佐藤(Dr/Cho):僕が1番考えてるのは、ボーカルを立たせるのはもちろんのこと、リズムを刻みつつも、リードギターが出してるフレーズに寄り添うようなドラムをしたり、ベースが動いた時にはそれについてくじゃないですけど、それに沿ったり、バンドとしての一体感を大事にしてます。 磯(Vo/Gt):アレンジは技量を詰め込みすぎても、それが楽曲と合ってない時に、その世界観を崩してしまうこともあると思っているので、そこは変に喧嘩しないようにしたいなと思っています。また、曲作りでも一緒になるんですけど、すごく綺麗な音ばかりを使いたいとは思ってなくて、汚くてもいい音があると思ってるので、使用する音も意識しています。その中でも、全部の音やアレンジ、構成、全てに、後から聞かれた時に意味を伝えられたり、そういうのを具現化できるような範囲内でアレンジをしようとは思っています。ここでため(間)を作ったり、息を止めたりという部分には、こういう意味があるんだという風に、誰にでもわかりやすく伝えられるぐらい、堂々としたアレンジや音作りにしようって思っています。

愛の二面性を表現した「裸体」

__「裸体」という楽曲が注目されたと思いますが、こだわったポイントはありますか。 磯(Vo/Gt):この楽曲は高校生の時に作ったものなんですけど、自分たちの曲の中でも、特にメロディーやギターの音が聴きやすく、かっこよくできたとは思っていますね。この「裸体」は元々「人間失格」っていう違う楽曲名だったんですけど、それだと聴く人がそのタイトルに引っ張られてしまうのもどこか違うなということで「裸体」という名前にして。この楽曲もテーマは「愛」なんですが、愛にも気持ち悪い部分と、綺麗だと思う部分があると思っていて。そこで裸も、愛し合う時は裸になるし、かといって普通に裸で街を歩いてたら気持ち悪がられるし、みたいな。そういう二面性がある部分を表現したいなと思ったときに、1番自分がその時に身近にあったのが、「裸」っていう題材だったのかなということで、「裸体」という楽曲名にしました。 __ミュージックビデオの制作においてこだわった点はありますか。 磯(Vo/Gt):ミュージックビデオの制作では、監督さんと色々お話をしたり、撮影中もモニターで確認させてもらいながら進めました。汚い、気持ち悪いような、「いびつさ」っていうのを、綺麗に撮りたいというところに関して苦戦しつつ、結果かっこよく仕上げてもらったので、それはすごい感謝ですね。途中で映像が激しく変わる部分では、自分のボーカルとしての動きもそうですけど、あんまり日常では見ない、いびつな動きを取り入れました。日常ではしない動きを、楽器を持っていたり、ライブ中だとできちゃうので、そういう動き方は意識しましたね。 楽曲「裸体」で表現された「愛」の二面性を示す世界観は、楽曲の隅々にまで緻密に作り上げられており、彼が語る「いびつさ」を美しく映し出したミュージックビデオも非常に印象的だ。ぜひ、楽曲に込められた深い思いを感じながら、一度聴いてみてほしい。 YouTube - 裸体 / HINONABE (Music Video) : https://youtu.be/nM17h2AQdps

ライブで作り上げる一体感のある空間

__ライブパフォーマンスにおいて大事にしていることはありますか。 磯(Vo/Gt):少し前まではどちらかというと独りよがりというか、自分たちが気持ちよければいいや、そこに楽曲が持ってるパワーをお客さんにぶつけようっていうライブの仕方をしてたんですけど、最近になってお客さんもお金を払って見に来てくれてるし、いつでもできるライブをしちゃダメだなっていう気持ちがメンバー内でも強くなって。コンディションとかそういうの関係なしに、その時、その空間だから出せるライブ。仮に喉が枯れてたら枯れてるから出せるっていうような、ライブを全部プラスに持っていって、お客さん自体も生活の中でプラス要素になってくれるように、っていうことを心がけてやってますね。 菊地(Gt/Cho):ライブだとお客さんの表情を見て確認するっていうのを最近は意識してるようにしていますね。こだわっている部分だと、ギターの音作りではお客さんが聴きやすい音量感を気を付けたりしてます。 佐藤(Dr/Cho):磯の話に通ずるんですけど、ライブ感を大事にしてるつもりでいて。やっぱりドラムは、自分が出すテンポで曲の速さが決まったりとか、自分のテンション感でお客さんのノリが変わったりするので、自分が最初にテンション感を出さないとっていう気持ちもあって。動きだったりとか、それこそボーカルを見たりとか、お客さんの反応を一緒に楽しんだりとか。楽曲を聴くだけじゃなくて、ライブを楽しませるような考え方はいつも持っています。 ライブではお客さんの反応や一体感を何より大切にしているという。その瞬間、その場所でしか味わえない熱気や空気感、テンションがダイレクトに伝わってくるはずだ。ぜひ、実際に足を運び、その瞬間を体感してほしい。

聴いてくれる方々が誇れるバンドに

__今後の展望、ファンの方やこれから聴いてくれる方に向けてのメッセージをお願いします。 磯(Vo/Gt):もちろん変わらず曲はいっぱい作っていきたいし、今しか作れないものを作っていきたいし、そこに意味があると思っています。常に楽曲を作って、今応援してくれてるファンの方たちが自分たちのバンドの名前を言うのが恥ずかしくないような、誇れるバンドになりたいですね。ファンの方たちに向けては、曲をリリースするにしろ、ライブをするにしろ、そうやって聴いてくれてる方のためにやってるというか。そのファンの方たちの時間を絶対に無駄にしないように、悪影響を及ぼさない、良い影響を及すバンドになるので、楽曲からも色々なことを汲み取って、日々のプラスになってくれていれば嬉しいです。 菊地(Gt/Cho):もっとみんなに知ってもらいたいし、応援してもらえるバンドになりたいですね。ファンの方には今、古参でいられることが嬉しいと思ってもらえる、最近知ってくれた方には自慢にできるようなバンドになります。 佐藤(Dr/Cho):具体的にどこのステージに立ちたいとかっていう明確な目標はないんですけど、 磯も楓も言ってるように、名前を出したら知ってるって言ってもらえるような、そんな規模感のバンドになりたいなって思ってますね。ファンの方々に対しては聴いてくださったり、見てくださったりしてる方々がいるから、僕らもライブができてたり、楽曲を作れていたり、それをモチベーションにしていたりするので、今使ってくれてる時間だったり、聴いてくれてる方の心を無駄にしないように、これからその恩じゃないけど、楽曲やライブで返していけるようなバンドになりたいので、応援していてほしいです。
”Vatelier.”自由な音楽のアトリエで創り上げる未来
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”Vatelier.”自由な音楽のアトリエで創り上げる未来

2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14日から16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。  その出演者の中で、筆者が特に注目している次世代学生バンドが「Vatelier.」である。 「Fly Day」という楽曲がテレビ朝日系列YTS山形テレビ深夜版「Do~んな天気」の9月度テーマとして起用され、注目を集めているほか、YouTubeに公開されたMVは1万回再生を超えるなど、今後の活躍が期待される。 特に、バンド名の由来でもある「5人のアトリエ」が表現された自由な音楽スタイルが魅力的だ。 そんな彼らの楽曲制作に対する姿勢や活動の実態に迫るべく、アリマさん(Gt/Vo)、コトミさん(Key/Vo)、ヨタカさん(Gt)、シオウさん(Ba)、サラさん(Dr)の5人のメンバーにお話を伺うことができた。

SOUND SHOCKの出演を振り返って

__SOUND SHOCKを振り返り、現在の心境を教えてください。 アリマ(Gt/Vo): 今まで自分たちが出た中では1番大きい規模感で、入っているお客さんも人数が多かったので、緊張して気合いが入りましたね。 __他のライブやイベントと何か違った点はありましたか。  ヨタカ(Gt):僕は、大きなライブではあるけれども、いつもと違うってことはあまりなかったんですけど、他のメンバーはどうですか。 コトミ(Key/Vo):私もヨタカが言ってるように、 特にその他のイベントと全然違う感覚でいたわけではなく、普段からお金を払って見に来てくださってる方がいて、その分は意識を持ってやらければならないと思っているので、どのイベントにかける思いも一応同じではやっています。でも普段出ているようなイベントよりは大きいイベントに出ることができたので、ワクワク感であったり、どんな他のアーティストさんと出会えるのかなというのは結構楽しみでした。その分のモチベーションは結構高かったかなと思います。

コピーバンドからオリジナルバンドへ

__結成の経緯が、軽音サークルだったようですが、どのような流れで結成に至ったのですか。 サラ(Dr):サークルでコピーバンドをするんですけど、King Gnuさんのコピーバンドをしたくて。私が、コトミとヨタカと、あと私のお兄ちゃんを誘って、そのメンバーだけ集まってて、じゃあキーボードボーカルもう1人どうしようってなって。そしたら先輩が「アリマさんやりたがってたよ」って言ってたので、その場でアリマさんに電話して。まずその5人で結成されました。 ヨタカ(Gt):付け足すなら、俺はやるとは言ってなかったよね。その時 (笑)。 サラ(Dr):名前書いて(笑)。 ヨタカ(Gt):いつの間にか名前書かれてたよね(笑)。  サラ(Dr):コピーバンドから徐々にオリジナルに移行していったという感じです。でも、途中でお兄ちゃんが個人の事情で脱退してしまって、そこにシオウくんが入ったという感じですね。  __結成されたのはいつ頃になるんですか。 コトミ(Key/Vo):オリジナルとして、完全にVatelier.としてやろうってなったのは多分1年半ぐらい前。 3月1日にVatelier.になった気がする。  __元々音楽性とかは皆さん一緒だったんですか。  ヨタカ(Gt):そうですね。  アリマ(Gt/Vo):みんなおしゃれ寄りの曲好きだよね。 コトミ(Key/Vo):あとシティポップとか好きな人も多い。 アリマ(Gt/Vo):バンドコンセプト的に「5人のアトリエ」ということで、それぞれの音楽感を1つのバンドに思い描いてこうかなっていう感じでつけた名前なので。みんなよくやってくれていると思います(笑)。  __元々コピーバンドをされていて、オリジナル曲を制作する方向性に変化したきっかけはありましたか。  アリマ(Gt/Vo):明確に路線が変わったのは、いつもサークルで出させてもらってるライブハウスが対外向けに行った、学生が出るコピーバンドイベントに出た時でしたね。そのライブハウスの店長の方が、「君たちはもっとオリジナルやってもいいと思うよ」みたいな感じで猛プッシュしてくれて。それで、始めてみたという感じでしたね。  コトミ(Key/Vo):で、その曲が意外と周りにも褒めてもらったりとかして、楽しいなみたいな感じで、ぬるっと始まって、どんどん曲も増えてきて今になりました。  __YouTubeやサブスクを見ると現在リリースされてるのは2曲でしたが、まだ他にも楽曲はあるのですか。 ヨタカ(Gt):いっぱいあります。 あるけど、なんもしてないねまだ。早くやろうね(笑)。  全員:(笑) コトミ(Key/Vo):オリジナル曲だけでライブはいっぱいしてて、もう完全オリジナルバンドとしてやってはいるんですけど。 曲枠をどんどん増やしていこうとはしてるんですけど、ちょっとボツになったり色々よくあるので(笑)。試行錯誤しながら進めてます。  YouTubeやサブスクで正式に公開されている楽曲は2曲だが、実際にお話を伺うと、お蔵入りしている楽曲を含めると10曲近くあることが分かった。今後どのようにリリースや公開が行われるのか、そしてどのような楽曲が秘められているのかは、注目すべきだ。

楽曲づくりのインスピレーション

Vatelier.では、アリマさん(Gt/Vo)とコトミさん(Key/Vo)が中心となってデモを作成し、ヨタカさん(Gt)がそのデモをアレンジしてメンバーに提案するというプロセスで楽曲制作を行っているようだ。それぞれがどのように楽曲制作に取り組んでいるのか、詳しく伺ってみた。 ヨタカ(Gt):楽曲は基本的にコトミとかアリマが持ってきたものを、僕が全部アレンジして1度みんなにまた返して、またそこからどうですかっていう風に制作を進めています。 アリマの曲は基本的に音とかも作り込んで持ってきてくれるんで、あとはそれをバンドサウンドに。僕が全部ギターを入れたりとかしながら、細かいところを修正して直していきますね。コトミの方が弾き語りで送ってくれるので、その音源にキーボードを入れたりとか、ドラム入れたり、ベース弾いたり、ギター弾いたりみたいな感じで、自分が手広くやったのを最後にみんなに返す形で進めています。

影響を受けたアーティスト

まずは楽曲制作の中心となっているメンバー3人に、楽曲制作においてインスピレーションを受けているアーティストについて掘り下げてみた。 コトミ(Key/Vo):1番好きなアーティストが、東京事変さんですかね。ジャズ要素が入ってる音楽が結構好きで、ピアノの方がジャズ専攻だったというところからマカロニえんぴつさんも好きです。あとはSIRUPさんが好きで、ラップとちょっとジャズっぽさ、R&Bっぽさもあるんですけど、その方の影響は結構受けてると思います。   アリマ(Gt/Vo):僕はKing Gnuさんもそうなんですけど、元々B'zさんがめちゃめちゃ好きで。なので多分、ロックのゴリゴリな要素も抜けずに作っちゃってるみたいな感じですね。 その中でVatelier.は、今でいうとお洒落な路線に行き始めたから、できるだけ自分の感性もそっちに寄せないとなと思ってて。 ヨタカ(Gt):僕はメンバーの中だと割と幅広く聴いていて、日本のアーティストだとヨルシカさん、米津さん、BUMP OF THE CHICKENさんだったりとか。あと、自分が素養を深めなきゃなと思うところがあって、ジャンルで色々聴いたりとかしてます。例えば、ネオソウルだとソエジマトシキさんとか、有賀教平さんのようなギターリストの演奏を参考にしてたりとか。メタルだとSlipknotさんがすごく好きなので、たくさん聴いたりとか。あと最近は海外だとPOLIPHIAさんとかすごい好きなんで、その辺りも参考にしながら曲に入れたいなと思って、いろんなアーティストからつまみ食いみたいな感じで聴いてますね。  アレンジってリファレンス曲があるかないかで結構違うなって思ってて。偉大なアーティストがいろんな良いものを残してくれているのを活用しない手はないよなっていう感じで、毎度毎度送られてくるデモをアレンジしながら頭を抱えてますね。 

バンドのリズム隊の視点

リズム隊のメンバーであるサラさん(Dr)とシオウさん(Ba)にも、それぞれの楽曲制作に対するアプローチや影響を伺った。 サラ(Dr):結構作り込まれた音源を送ってくれると、大体それに寄った感じのドラムを作る感じになるんですけど、私自身はそれこそコピーしてたKing Gnuさんとか、あと普通に好きなバンドなんですけど、Co shu Nieさんが好きです。あとはめちゃめちゃUNISON SQUARE GARDENさんをコピーしました。 自分の技術を上達させることはできたのかなと思っています。とにかく手数が多すぎて、次から次へと変則的っていうか、特殊なリズムがたくさん出てくるので、手数を吸収することができたのかなと思っています。 シオウ(Ba):僕は、アレンジして送ってくれた音源を比較的そのまま弾くことが多いんですけど、 その送ってくれたものに、この部分はこうした方が楽しいなとか、弾いてて気持ちいいなっていうフレーズに変えることが多いです。元々コピーしてたKing Gnuさんのフレーズを、ちょっと入れたこともありますし。あとシティポップが昔からずっと好きで、リズムの乗り方とか、スライドの音とかがすごい好きなんですけど、それを無意識で入れたりしています。五弦ベースを買ったんで、もっと低い音を入れてみたりとか、スライドのドゥーンって音を結構長めに尺取ったりっていうのは、影響受けてるかなっていうのは思いますね。 

最初の曲作りとアレンジ

バンドが最初に楽曲を作り始めたときの話や、アレンジの流れについても伺った。 アリマ(Gt/Vo):Vatelier.の1番最初の曲は、僕が元々作ってあった曲を何曲かピックアップして、この中からどれを1番最初にやりたいかをみんなに聞いて決まったのをやりました。最初の曲に関してはそんなにアレンジをしてないね。 アレンジが目立つのはコトミが持ってくる曲ですね、弾き語りベースでデモを送ってくれるので。それをどういう風に味付けしようかなっていう感じだよね。それでうまくいったのが「Fly Day」とかになるんじゃない。  ヨタカ(Gt):そうだね。「Fly Day」とか「Star」、あとは音源上での「黒猫」とかね。  

5人で彩る「Fly Day」

__楽曲「Fly Day」、注目されたと思いますが、どのように制作を行ったのですか。  コトミ(Key/Vo):私が弾き語りを少しやってた時期があって、個人的に曲を作るのが中学生の時から好きだったんです。それで、高校生の時に「Fly Day」の大枠になるような、歌詞や大体のメロディーをかいていて。Vatelier.を結成して、どういう音楽をやっていくのかはまだ定まってない段階だったので、「こういうコンセプトにしよう」とかではなく思いつきで作ったところはあったんですけど、メロディーと歌詞を結構変えて、リニューアルみたいな感じでできたのが「Fly Day」でした。 __作詞作曲の際、こだわりはありましたか。 コトミ(Key/Vo):私は思いつきというか、降ってきたもので作っちゃいますね。あとは韻を踏んだり、リズム感、テンポがよくきこえるように作りました。作詞に関しては、どこにどの言葉を入れようかを考えるのが結構好きで、「こういう意味の単語を入れたい」というところから、わからない言葉も調べたりして、パチっとパズルみたいにあてはめて作るのが楽しいと感じますね。 __アレンジの面でも、こだわった部分はありますか。  ヨタカ(Gt):「Fly Day」の時はベースが違ったのかな、今と。  シオウ(Ba):そうですね。当時アレンジに参加はしてないですけど、ライブ中で演奏する時は若干変えています。ベースラインはいじってないんですけど、少しゴーストノートを増やしてテンポ良くしてみたりとか。あとこれは他の曲でもそうなんですけど、ドラムに合わせるのは結構意識してやってるかな。サビのリズムの取り方もラスサビと1番のサビで変えてみたりとかは少ししてますね。 ヨタカ(Gt):他のメンバーは、最初の出来た当時の話になるのかな。Fly Dayのアレンジは今と形態がちょっと違ってて。その当時はまだ僕もアレンジとか作曲とか全然知識もなかったんで、持ってきた弾き語りの音源を聞きながら、みんなで1つずつ考えながら作ってったよね、その場で。  アリマ(Gt/Vo):3、4時間くらい一気に練習とって、ずっと缶詰めでしたね。  ヨタカ(Gt):やったやってた。 6時間取って、一生懸命詰めた時期もあった。結構コスパの悪いことやってたけど、それも大切な時期だったと思うな、振り返ると。そのコスパの悪さというか、がむしゃらさがなんか良さに出てるなと思うな。  アリマ(Gt/Vo):多分誰かが作ってきたやつじゃ、あのグルーヴ感にはなんなかったよね。みんなで生で、実際に一緒に入って作り上げたから、ゆったりとした感じに仕上がったんじゃないかなと思ってます。  __タイアップもされたということで反響もあったと思いますが、どういう心境でしたか。  アリマ(Gt/Vo):地上波映るんだって思ったね。 ヨタカ(Gt):メンバーの誰にも、知り合いにも言ってなかったんだけど、通ってる大学で実習に行かなきゃいけないんですよ。その実習は、1人じゃなく複数人で行く形になってて。一緒に行った同期の1人に山形出身の人がいて、タイアップしてるテレビを知ってたんですよね。それで番組のことを聞いたら、山形ならみんな知ってるお天気番組って聞いて。自分が山形に行ったことがないからどういう番組なんだろうと思っていたら、どうやら向こうも知っているみたいで、すごい盛り上がったっていう話があったんだよ。 サラ(Dr):バイト先の山形県出身の人とか、知り合いの山形県出身の人、みんな知ってて。  アリマ(Gt/Vo):YouTubeのコメント欄にも、テレビから来ましたっていうコメントがあったね、1個。 ヨタカ(Gt):ただ1つ東京から見れないってことが残念だったよね。どんな風に流れてるのか(笑)。  全員:(笑) 「Fly Day」の制作にあたり、メンバー全員が時間をかけて作り込んだエピソードや、ライブでの演奏を通じてさらに磨きをかけている様子から、まさに「5人のアトリエ」というコンセプトが色濃く表れている楽曲であることが伝わってきた。 YouTube - Vatelier. - Fly Day: https://youtu.be/HzfKXcu25tY?si=x57tx8U7bB1bq9NP

活動を通して生まれた想い

__楽曲制作やライブの裏側で起きた印象に残った出来事はありますか。  コトミ(Key/Vo):私はVatelier.として曲を作っていく上で思ったことがあるんですけど、 最初はオリジナル曲をどういう方向性・ジャンルで作ろうか全然定まっていなくて難しかったんですけど、やっていくうちにVatelier.の色が出始めて来たような感じがしていて。今はお洒落なポップスっていうイメージで作るのと、個人的に「1つの物語を読んでるような感覚」になれるような曲を作っていきたいなと思っています。1つの曲に世界観がしっかりあって、ライブで聴いていても飽きないというか。どの曲も世界観があって良いと思える曲が作れたらいいなと今思っているので、このような方向性が見えてきたのは、私の中で印象的な出来事だと思います。  ヨタカ(Gt):喫煙所界隈。 『シュガースプレー』と『アローン』がいたりとか。ライブの裏側というか、共演者で仲良くなる機会は僕としては印象に残ることが多くて。自主企画をした時に来てくれた『Redrums』と『ココ』は、昔から国分寺の箱で一緒にやってる中で知り合ったりとか。バンドの横の繋がりというか、今でも関わり深い対バンの人との出会いっていうのはやっぱり印象に残るね。  アリマ(Gt/Vo):僕が1番印象に残ってるのはライブなんですけど、少し前に初の自主企画のライブをやらせてもらって。その時に30人くらい、それ以上は呼べたのかな、お客さん。結構狭いパンパンな中で、舞台の上から1人1人の顔を見ている時に感慨深さはありましたね。 なんかすごい気持ちよかった、あの景色は。  ヨタカ(Gt):それと同時に、いろんな人に支えられてたんだなっていうのも俺はあの時感じたよ。  アリマ(Gt/Vo):そう、みんな応援してくれてんだねみたいな。ありがとうっていう思いを込めて、めちゃめちゃ弾き倒した記憶があります。  サラ(Dr):私はライブ1回1回の、バンドの横の繋がりもそうだし、お客さん、あとライブハウスの方との繋がりってすごい大事だと思ってて。そこから自主企画のライブに呼ぶことができたり、違うバンドを見に来てたお客さんが私たちのバンドにも来てくれたり。あとはライブハウスの方にライブ誘っていただいたりっていうことが多くて。1つ1つの繋がりは大切なんだなって思ってます。 シオウ(Ba):バンド同士の繋がりで仲良くなって、他のイベントで一緒になった時に喋ったりというのは嬉しいなっていう風に思うんですけど。それ以上に感じるのは、僕は途中から入ったメンバーで、かつ周りのメンバーも全員サークルの先輩なので、最初はちょっと不安はあったんですけど、何度も一緒にライブを重ねるごとに距離が縮まったなと感じるのがすごい嬉しいです。もう今ほぼ友達みたいな感じで、先輩なんですけど接してる時もあるんで、毎回嬉しいなと感じている部分ではありますね。  アリマ(Gt/Vo):最初から友達だよ(笑)。可愛いやつで。  全員:(笑) それぞれのお話を伺う中で、Vatelier.としての音楽活動の方向性が、活動を通して徐々に形作られていく様子が見えてきた。また、共演者やライブハウス、そしてお客さんとのつながりを大切にする姿勢も強く感じられた。さらに、メンバー間の温かい関係性や仲の良さがインタビュー中のやり取りから自然と伝わり、Vatelier.の音楽には、こうした人とのつながりや信頼感が深く反映されているのかもしれない。

ファンの方へのメッセージ

__最後に、ファンの方々やこれから聴いてくださる方々へメッセージはありますか。 シオウ(Ba):バンドとしても個人としても、これからパワーアップして、いい曲、いいベースラインを作れるようになろうと思うので、少しでもいいなと思ったらいっぱい聴いて、いっぱい応援してほしいなっていう風に思います。 サラ(Dr):日常に寄り添える曲を作りたいので、日常でいっぱい聞いてほしいです。  ヨタカ(Gt):星の数ほどあるアーティストの中から、もし自分たちの動画や楽曲を見つけてくれたなら、まずはそれにありがとうということと、あとはよかったらライブを見に来てねというところですかね。本当にありがとうございます。  アリマ(Gt/Vo):僕から逆に聞いてみたいですね、ちゃんと僕らの音楽ができてるか。5人のアトリエってちゃんと伝わってるかな、みたいな。ありとあらゆる曲をやりたいんだけど飽きずについてこれてるかな、みたいな部分は気になるところですね。飽きさせないバンドだと思うんで。多種多様な曲を作っていきたいと思ってます。  コトミ(Key/Vo):私自身、いかにCD音源を超えるかみたいなところで生演奏に最近こだわりを持ってやっていて。自分の実力を上げていけるように試行錯誤してライブに挑んでいるので、その成長も応援してくれる方々は楽しめると思っています。これからに期待というか、ライブを見に来てたり、楽曲をたくさん聴いてくれたら嬉しいなと思います。私自身も頑張ります。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/
特集:AATA、フルアルバム「be in bloom」に込めた10年間の想いとは
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特集:AATA、フルアルバム「be in bloom」に込めた10年間の想いとは

今年4月にフルアルバム「be in bloom」をリリースし、今注目を集めている女性シンガーソングライター「AATA(あーた)」に、インタビューの機会を頂くことができた。 本特集記事では、甘く軽やかな歌声で多くのポップソングを生み出している彼女だが、そのアーティスト活動に対する想いや、一人の人間としての素顔について、インタビュー内容をお届けしたい。

AATAというアーティストとは

最初に、フルアルバムのリリース直後のタイミングでの活動状況について伺ってみた。 ーー今年の4月にフルアルバム「be in bloom」をリリースされ、8月からは全国ツアーを予定されているかと思いますが、直近の活動状況はいかがですか? AATA:そうですね。一旦制作は落ち着いていて、作ったアルバムを色んな方に知っていただこうと活動しているところです。折角コロナも落ち着いたので、今までなかなか行けていなかった場所に直接歌いに行って、お返しができればという気持ちでツアーを組ませていただいています。 ーー今回のツアーは、北海道から九州まで予定されていますよね? AATA:九州は今回初めて行かせていただくんですが、北海道は色々ご縁があって、一番多かった時期はワンシーズンに1回程は行かせてもらっていました。ラジオをやらせてもらっていたり、日本ハムファイターズのキャラクターのテーマソングを作らせていただいたりとか、偶然だったんですけど、凄い縁がある場所だなと感じています。全国の中でも特別に思っています。 ーー最近は、特に活動の幅を広げられていますよね? AATA:そうですね。スズキ ラパンのCMナレーションや、アイドルグループへの楽曲提供もあったり、有難いことに忙しくさせていただいています。東京の新代田にあるライブバーの店長も6月からやらせていただくことになったり、もう自分でも把握しきれない程になってます。 ーー最近は、特に精力的に活動されている様ですね。 AATA:色んな人に還元していくっていうターンなのかなと感じています。今まで好きでやってきたことが、今度は伝えていったり、繋いだりとか、そういう時期になっているのかなって、ちょっと個人的には思っていますね。あと、以前より「自分だけの音楽ではなくなった」っていう感覚もあります。自分の音楽を聴いてくれる人がいて、何かを求めてくれる瞬間が、自分の中で大きなモチベーションに繋がるっていうか。 ーーファンの方との繋がりを感じる瞬間ですか? AATA:そうですね。勿論、ファンの方がいてくれて、ライブの時には自分が求められているんだってことを実感できるんですけど、普段音楽を作ってる時って、すごい不安になったりする瞬間もあるんですね。そんな時でも「自分の曲が好きで私たちのために曲を作ってください」とか、「あなたの声が必要です」って言ってもらえると自信になりますね。 ーー自分の音楽に価値が付くような感覚でしょうか? AATA:そうですね。一種の価値付けのような感覚に近いです。商業ベースというと何か違うような気もするけど、しっかり仕事に繋がっている感覚が嬉しいですね。 ーー今回、北海道から九州までの全国ツアーを企画された経緯はどのようなものでしたか? AATA:フルアルバムのリリースツアーとしての企画なのですが、九州での開催は、ファンの方からの要望があったことも大きかったです。フルアルバム制作時にクラウドファンディングをさせていただいたんですが、自分が今まで歌いに行けていなかった九州にも応援してくれる方がいて、この機会に足を運んでみようかなと思いました。 ーーデジタル化の時代のメリットですね。 AATA:クラウドファンディングやサブスクリプション含め、ファンの方がどこにいるのかが分かる点は良い点ですね。昔だったら、全く分からなかっただろうし。数字やデータでファンの方と繋がっている感覚は凄く嬉しかったですね。

フルアルバム「be in bloom」に込めた10年間

次に、2024年4月にリリースされたフルアルバム「be in bloom」について伺ってみた。 ーー今回リリースされたフルアルバムはどの様な位置付けの作品ですか? AATA:今回のアルバムは、活動10周年を記念した集大成となる作品です。本当にこの10年間、私の中でも色々あったし、社会も変わったり、音楽シーンも変わったりっていうのもあって、周りの仲間たちやファンの方だったり、家族の支えがなかったら本当に続けて来られなかったなって思います。そういう人たちに「ありがとう」って伝えたい気持ちで作りました。 ーー確かに、ここ数年で音楽シーンも大きく変わりましたね。 AATA:そうですね。少し前までは、コロナ禍でライブやイベント自体ができない時期が続いたので、今だからこそ取り組めることがあるなって思います。でも、コロナがあったからこそ、何か普段感じることができなかった”ありがたみ”を再認識できたっていうのもありますね。 その期間は、自分と向き合う期間というか、「自分にとっての音楽」だったり、「暮らしの中での音楽」の意味っていうのをすごく考えた期間だったので、大切な時間でした。今、音楽を続けられていることのありがたみや、仲間や環境の大切さに気づけたし、本当に感謝だなって思いました。 ーー今回のフルアルバムは、荒山諒さんとの共作でしたが、今までの作品と違った点は? AATA:今回のフルアルバムは、この10年間でやってきたことの集大成を、敢えてちょっと音楽性に幅を持たせた形で見せたいなと考えながら、諒君と一緒に作りました。 過去にリリースしたAATAの1枚目のアルバムが「BLUE MOMENT」というタイトルの作品で、音楽的にはトラックに全振りした様なアルバムになっているんですが、元々、そのアルバムより前は弾き語りのシンガーソングライターとして活動していました。 オーガニックというか、弾き語り+バンドサウンドっていう感じの音楽性で、ソウルの要素も入りつつ、ポップスみたいな感じでやらせてもらっていたんですが、「BLUE MOMENT」のアルバムが、それまでの自分が弾き語りで育ててきた良いところを捨ててしまっている様な感覚があったんですよね。 当時、パッケージングする上では、どこを切り取っても同じものが見えた方が1枚目のアルバムとしてはキャッチーで良いなと考えて、それも正解だったなと思います。ただ、その自分の強みをもう1回出していきたいと思って、今回のフルアルバムでは、敢えてちょっと音楽性に幅を持たせた1枚にしました。そういう意味でも、この10年の集大成ですね。 ーーこの10年が凝縮した作品ということですね。 AATA:そうです。ただ、オムニバスみたいな作品にはしたくなかったことと、音楽性に偏りがあるアルバムは美しくないなと思ったので、そのバランスの取り方や音楽性や曲順には、すごくこだわりながら2人で作りました。 ーージャズ的な楽曲も多い印象を受けましたが、そこが狙いだったということですね。 AATA:そうですね。自分の持っているものを全部出しちゃおうみたいな感じですね。 ーー作品を通してのメッセージは何かありますか? AATA:フルアルバムのタイトルが「be in bloom」で、直訳すると「咲いてる」という意味なのですが「みんな生きてるだけで、そのままで素敵だよ」ってメッセージを込めています。 私自身のAATAとの向き合い方の変化にも影響しているんですが、私が20代の頃って、最初にまず自分の中に否定があって「ここが自分ができないから変えていこう」っていう気持ちをモチベーションにしていたところがあったんですが。そうじゃなくて、ちょっと出来ないとか、人より苦手だなって思うところもある意味個性だし、だからこそ生まれてくるものがあるなっていう風に思った時に、何か肯定してあげることも大切だなって思ったんです。 SNSでは、どうしてもビジュアルがどうのとか、ここは駄目だとか言われることもあると思うんですが、あなたの素敵なところを知っている人は周りにたくさんいるし、何より自分の素敵なところは自分が知っているよっていうメッセージを発信していきたいなって思ってて。 なので、フルアルバム1曲目の「C.H.O.O.O.E」っていう曲とか、あとは「MOMANTAI」っていう曲は、そんな思考の変化が現れた曲になっています。 ーーSNS世代の子たちには特に届けたいメッセージですね。変化のきっかけは何だったんですか? AATA:コロナ期間でしょうか。自分を見つめ直す期間を過ごす中で、自分のコンプレックスと思うところを変える努力をする日々を送っていたのですが。コンプレックスと向き合った結果、自分がコンプレックスだと思っていたものも、他の人から見たらすごいキュートなところだったり、少しずつ考えが変わりました。 完全に悪い人や、完全に良い人って絶対いないし、シチュエーション次第で人って悪者にも見えるけど、英雄にもなることって実際あるなって思うと、自分の駄目なところを嫌うよりも、良いところを好きでいてくれる人に何か出来たらなって思います。 このアルバムを通して、同じように悩んでる20代の頃の私みたいな女の子とか、男の子とかがいたら、何か気づいてもらえたらなって思います。 ーー作品制作の観点で、こだわった点はありますか? AATA:自分がワクワクするものや、本気でカッコいいって思えるものしか出さないってことでしょうか。あと、1人で完結させないってところですね。今回のアルバムは、荒山諒がトータルプロデュースをしてくれましたが、それ以外にもトラックメーカーの方とコラボさせていただき、色々な化学反応が生まれました。 私はシンガーソングライターっていう自分で曲を作って歌う人間ではありますけど、何かそこに執着はなくて、私の知らないエッセンスだったり、気づきとかをもらえる瞬間が、音楽をやっていて嬉しい瞬間ですね。 ーー関わってくれた方と納得するものを作ったということでしょうか? AATA:そうですね。商業的に売れるっていう視点も大切ですけど、やっぱり自分が納得したものを作るっていうところは曲げたくないなって思っています。流行りの音楽がどうとかではなく、自分がやりたいと思っているホットなものを作って、みんなに見せられた方が、応援してくれているファンの方もきっとワクワクしてくれるなって、制作チームもそうだろうなって思い、作りました。

幼少期の挫折とは

次に、AATAというアーティストを形作った過去の経験や困難について伺ってみた。 ーー今までの人生の中で苦労された経験はありますか? AATA:大学受験での失敗ですね。私、幼稚園に通っていた頃に、結構ひどい心臓病にかかっていたんです。その頃、同じ病棟でよく一緒に遊んでいた白血病の子が急にいなくなっちゃう様な経験や、看護師さんやお医者さんに救ってもらったっていう思いがあって、その頃からずっと小児科の先生になるのが夢だったんです。 ただ、大学受験まで頑張ったんですけど、受験当日にめちゃくちゃ緊張しちゃって、頭が真っ白になって何も出来なかったんです。そこで、すごく大きな挫折を味わいました。結局、他の医療系の大学に入学したんですが、ずっとコンプレックスが消えなくて「私がこんなところにいてどうするんだろう...」みたいな気持ちで生きてきたんですけど、何年かして、ひょんなことから音楽を始めたんです。 当時歌詞を書いた初期の曲に「各駅停車」っていう曲があって「1駅1駅本当だったら見逃していた景色も、こんな回り道して1つずつ見てる私だから、この景色を知ってるんだ」っていうことを思った時に、大学受験で失敗した経験も何か還元できるかも知れないって思えて。 結果として違う形ではありますけど、音楽を通して「本当に救われました」っていう言葉をもらったり、「この曲で大学受験乗り越えました」って言ってくれる瞬間に、ちょっと違うアプローチだけど誰かのためになってるんだなって思います。 ーーAATAさんの人柄が感じられますね。

リスナーへ伝えたい想い

最後に、リスナーの方へ伝えたいメッセージについて伺ってみた。 ーー本インタビューの最後に、ファンの方へ伝えたいメッセージはありますか。 AATA:音楽を通して、今まで私は色々な出会いをもらって、すごくそれに救われたので、今度は音楽を通じて、また誰かと誰かが出会うきっかけになったり、人生の何かきっかけになれたらいいなと思っています。 今後も、できるだけ多くの方に音楽が届くように頑張って活動していくので、どうか見守っていてください。

インタビューを振り返って

インタビューの中で、AATAのフルアルバム「be in bloom」に込めたメッセージや想いだけでなく、アーティストしてのルーツとなるエピソードを伺うことができた。 昨今の音楽シーンのトレンドを汲み取りつつも、自身のアーティスト感を強く持ち、世の中に「自分らしくいることの大切さ」を投げかける姿は、とても印象的だった。 彼女の音楽に触れ、自分を肯定してあげる。そんな瞬間をあなたも感じてみてはどうだろうか。 ■ リリース情報 AATA 『be in bloom』 2024年4月18日 リリース リンクはこちら:https://aata.thebase.in/items/85541842 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/