インヘイラー、ニューアルバム『Open Wide』が見据える新たな地平
2月7日(金)にアイルランド出身のロックバンド、インヘイラーが3枚目となるニューアルバム『Open Wide』をリリースした。
「U2のボノの息子が率いる4人組バンド」なんて紹介文は不要。今作はまさにそんな印象に与える革命的なアルバムである。
ギターロック・バンドが提示するポップ
これまでノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズやアークティック・モンキーズのツアーに帯同し、その確かな経験値を『It's Won't Always Be Like This』、『Cuts&Bruises』の2枚のアルバムに落とし込んできたインヘイラー。 そんな彼らの今作は「変貌」の一言に尽きる。 今作についてボーカルのイライジャは「過去2作品はツアーに帯同しながら作ってきたんだ。だけど今作はツアーで外に出ながら制作しなくてはならない環境では無かったから、やらなければいけない事のプレッシャーを感じずに制作できた。だからこれまでの アルバムより(Open Wideの方が)インヘイラーの真実に近いと思うよ」と語っている。 今作の『Open Wide』には、グラミー賞を受賞したハリー・スタイルズのソロアルバム『Harry`s House』や、全米6週連続1位を獲得しグラミー賞にも輝いたマイリー・サイラスの名曲「Flowers」などを手掛けた音楽プロデューサー、キッド・ハープーンが制作に参加しており、彼がインヘイラーの変化を押し上げる強力なギアとなっていることは間違いない。 インヘイラーが過去2作品でギターロック・バンドとしてのポップ路線を歩み続けてきたバンドであることは確かだが、リスナーたちが予期していた躍進をたった一枚のアルバムでこれほど急進的に遂げるとは思ってもいなかった。 と言うのも元来のストレートに鳴り響く ギターサウンドは細かく分解され、ギターロック・バンドのグルーヴとポップに抽出されたオーバーラップなサウンドへと様変わりしているからだ。6年の成長
T•レックスからインスピレーションを受けたという「Your House」は、冒頭15秒のイントロからでは決して想像はできないが、これしかないないというほど100点満点の展開を繰り広げ思わず笑がこぼれてしまうし、サビでエンタリングするゴスペルは素晴らしく心地がよい。 「A Question Of You」のシンディー・ローパーを彷彿とさせるリズミカルな80年代ポップと現代ポップロックを見事に融合させたサウンドは普遍的な高揚感へ導くナンバーであり、「Still Young」が与える飛躍感にはUKロックの流麗さを覚えてしまう。 タイトル 曲でもある「Open Wide」には呆気に取られたリスナーも多いはずだ。 2019年にデビューしたインヘイラー が、6年間でこれほどまでに極上なスペクタルサウンドを成立させてしまうバンドへと成長したことに驚愕するが、この成長がなんら不思議でないことをすぐさま理解するだろう。 シンセやエレクトロといったジャンルを雑多にすることなく華やかにミックスアップしてしまうインヘイラーのポップセンスは確実に証明されており、これこそ彼らが現代ロックシーンを担う若手バンドと言われる所以であるのだ。 「この アルバムで、僕たちは変わらなければいけなかった」とイライジャが語ったようにインヘイラー は間違いなく変わった。彼らが歩み始める新たな地平をワイドに広げたタイトル通りの一枚だ。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/第67回グラミー賞、2025年 変革の証明となった一夜とは
現地時間 2月2日(火)にロサンゼルスのクリプト・ドット・コム・アリーナで、第67回グラミー賞受賞式が開催された。
今年1月7日にロサンゼルスのイートンとパシフィックパリーズで発生した大規模な山火事の影響で開催が危ぶまれていたが、無事に行われ多くの衝撃と感動を与える授賞式となった。
今年のグラミー賞で一番の話題を呼んだのは、間違いなくビヨンセの年間最優秀アルバム賞の受賞だ。
グラミー賞の歴代最多受賞者であるビヨンセだが、年間最優秀アルバム賞は4回ノミネートされるも受賞を逃してきた。
しかし、ついにカントリーアルバム『COWBOY CARTER』で長年の悲願であった年間最優秀アルバム賞の受賞を果たし、ビヨンセは21世紀以降にこの賞を受賞した初の黒人女性アーティストとなった。また、自身の持つ受賞最多記録も35に更新した。
2017年のグラミー賞で、ビヨンセと揃ってノミネートされたアデルが年間最優秀 アルバム賞を受賞した際のスピーチで、アデルが涙ながらに「今年の年間最優秀アルバム賞は絶対に『Lemonade』が取るべきだった」とグラミー賞のビヨンセに対する評価を批判するなど、受賞までの間にある意味での不遇を感じてきたはずであるビヨンセにとって、そして、そんな彼女を見続けたファンにとって、今回の受賞は様々な思いが込み上げる重要な位置づけとなったはずだ。
2024年ドレイクとのビーフで世界中で大きな話題を呼んだケンドリック・ラマーの 楽曲『Not Like Us』が年間最優秀楽曲賞、最優秀ラップ賞、最優秀レコード賞、最優秀ミュージック賞、最優秀パフォーマンス賞の5部門で受賞を果たした。
今回で21回目のグラミー賞受賞となるケンドリック・ラマーが、主要部門を受賞するのは今回が初めてというあまりにも意外すぎる話ではあるが、現代のヒップホップ界のキングと表されるケンドリック・ラマーがその地位を確立することになったのは間違いないだろう。
また、受賞した際のスピーチでは、「この賞を俺の街に捧げる」と故郷と彼を支え続けた人々への感謝の思いを表し、続けて「ラップミュージックほどパワフルな音楽を俺は知らない。若いアーティストたちもラップという芸術に誇りを持ってほしい」と、自身のルーツと文化に対する謙虚な姿勢を示した。
ケンドリック・ラマーの次を担う次世代ラッパーとして2024年大きな快進撃を見せたドーチーの3rd アルバム『Alligator Bites Never Heal』が最優秀ラップアルバム賞を受賞した。
これはローリン・ヒル、カーディー・Bに続く史上3人目となる女性アーティストの受賞である。
ドーチーがトロフィーを手に取ると「この賞は3人の女性が受賞しています。ローリン・ヒルとカーディ・B、そしてドーチーです。」と涙ながらに伝えた。そして彼女と同じアフリカ系の女性たちに向けて「今、私を見てくれている黒人女性へ、あなたなら何だってできることを伝えたい。ステレオタイプを許してはいけない。あなたがいる場所が、あなたを必要としている場所であり、そして私がその証明です。」と熱い思いを語った。
そして、授賞式ではアルバム収録 曲である『CATFISH』と『DANIAL IS A RIVER』を披露。ドーチーの圧巻的なパフォーマンスで会場を熱狂の渦に叩き込み、彼女が次世代ではなく現代の怪物ラッパーであることを証明してみせた。
今年1月4日に行われた「rock’in on sonic」に出演し、圧巻のステージで日本のオーディエンスを沸かせたセイント・ヴィンセントが、最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞、最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス賞、最優秀ロック・ソング賞の3部門を受賞した。
セイント・ヴィンセントは最優秀ロック・ソング賞のスピーチで「最初に美しい家族であり、美しい妻であるリア、そして美しい娘に感謝したい」と妻と娘の存在を明かした。
そして、LGBTQであるアーティストのノミネートに関して「昔からクィアのアーティストがいたわけではないが、特に今年は多くのクィアのアーティストが受賞したと思う。これはとても素晴らしいことであり、これからも共感しあい道徳的に歩んでいきたい」と喜びと決意のコメントを残した。
今年のグラミー賞授賞式でもう一つ大きな話題を呼んだ出来事がある。冒頭に述べた2021年からグラミー賞をボイコットしていた ザ・ウィークエンド がシークレットゲストとして出演したのだ。
ザ・ウィークエンドが登場する際に、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーのCEOを務めるハーヴィー・メイソン・ジュニアが姿を現し、ザ・ウィークエンドからの批判を重く受け止め、組織やシステムの改革を行っていることを具体的に説明した。
そして、CEOの紹介でザ・ウィークエンドがステージに現れた瞬間、会場全体が騒然となり、双方の和解とグラミー賞の改革が約束されたことをイメージさせる圧巻のサプライズパフォーマンスが披露された。
グラミー賞の存在意義
世界で最も権威のある音楽賞としてこれまでに様々な歴史を築いてきたグラミー賞だが、21世紀以降、賞そのもの自体の存在意義が問われるようになったことも事実である。 2021年にザ・ウィークエンドは、4週連続全米1位を獲得した傑作 アルバム「After Hours」やSpotifyで最も再生された 楽曲である『Bliding Lights』を生み出したものの、その年のグラミー賞にまさかの1部門もノミネートされず、ザ・ウィークエンドはニューヨークタイムズのコメントで「私の音楽をグラミーに提出することはない」とボイコット宣言。 他にもドレイクやエミネム、デュア・リパ、アデルなど多くの大物アーティストから黒人差別や女性蔑視などの不当な評価が行われているとグラミー賞批判がされてきた。 そんな存在価値が揺らぎはじめていたグラミー賞に今年は多くの注目を集めることとなった。ビヨンセの悲願
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ケンドリック・ラマー 初の主要部門を受賞
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ドーチー 史上3人目の快挙
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セイント・ヴィンセントの告白
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予期せぬサプライズ
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さるべき評価
今年のグラミー賞は、ビヨンセやケンドリックラマー、ドーチーらの受賞のように、評価されるべきアーティストが評価された授賞式となった。 そして、グラミー賞が音楽を通して変わりゆく時代にフィットし、世界で最も権威のある特別な音楽賞であり続けることをアーティスト、そしてリスナーたちが前向きに願える重要な一夜になったはずだ。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/Enfants、ニューシングル『Dying Star』が示す新たなフェーズ
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Enfants、ニューシングル『Dying Star』が示す新たなフェーズ
2022年に松本大によって結成された4人組ロックバンド Enfants が、1月29日に『Dying Star』をシングルリリースした。
Enfantsの初シングルとなる今作は、筆者にとって驚きと期待を隠せない特異な楽曲...
愛知県出身の次世代ラッパーAndre、シングル『I Don’t Know』をリリース
独創的なリリックと洗練されたフロウを武器に、次世代ヒップホップシーンの活躍が期待される2000年生まれの新星ラッパーAndreが、1月29日にニューシングル『I Don’t Know』をリリースした。
ビートメイクはVaVa!
2025年最初のリリース作品であり、Andre の新たなスタートとなる今作は、 生きていく中で恥ずかしい経験や困難に直面しても、それを乗り越え堂々と前を向く姿勢がラップで表現されている。 Andreの開き直りとも取れる ストレートなスタンスがリリックに込められた、まさにリスナーに力を与えるパワフルな楽曲である。 ビートメイクは、SUMMITやCreativeDrugStoreで活躍し、BIMやKID FRESINOといった数多くのアーティストの楽曲プロデュースを手掛けるラッパー / プロデューサー、VaVaが担当しており、独特のビートとサウンドデザインで楽曲を引き立てている。 壮大なイントロから始まる力強い ビートに乗せられたAndreのパ フォーマンスは、リスナーに強烈な印象を残し、Andreのこれからに更なる期待を込めさせるナンバーだ。 また、同日20:00にはMusic Videoも公開される。ぜひこちらもチェックだ。楽曲情報
「I Don't Know (Prod. VaVa) 」 Written : Andre Produced :VaVa Mixed : NAOtheLAIZA Mastered :HiroshiShiota Art design : Palmsvicecity Label. : D.R.C. -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/NAGAN SEVERが、音楽クルー「N.S. DANCEMBLE」を始動!
2025年1月22日(水)に、ラッパー/ウッドベーシストとして活動するNAGAN SEVERが音楽クルー「N.S. DANCEMBLE」を本格的に始動させることを発表した。
実力者揃いのクルー
NAGAN SEVERを中心に結成されたN.S. DANCEMBLEは、Suchmosのメンバーでもあり、4人組バンド賽を率いる鍵盤奏者TAIHEIや、その賽のメンバーでもありLUNA SEAのSUGIZO(Gt.)が率いるジャムバンドSHAGのメンバーでもあるドラマー松浦千昇、D.A.N.のベーシストJinya、23歳のトランペッター寺久保玲矢といった実力派ミュージシャンたちが参加している。 彼らが掲げるテーマは、ダンスミュージックを軸にヒップホップ、ジャズ、ブレイクビーツ、ハウス、テクノなどの多様なジャンルをボーダレスに融合させた音楽だ。 1月15日にリリースされた1stシングル「pave my path」では、奥底に響くミステリアスでスリックなサウンドの上に、ムーディな雰囲気でありながらもNAGAN SERVERの熱い思いが歌われた、まさしくクールでホットな彼らの名刺となる楽曲となっている。ライブも続々決定!
2月16日(日)に表参道WALL&WALLで行われるTRIPPYHOUSINGとのツーマンライブが決定している N.S. DANCEMBLE だが、4月19日、20日に茨城県結城市で開催される街中音楽祭『結いのおと』にも出演することが決定した。 まだまだベールに包まれた N.S. DANCEMBLE のパフォーマンスを目に焼き付けるチャンスだ。ぜひチェックしてみて欲しい。公演概要
N.S. DANCEMBLE/TRIPPYHOUSING ツーマンライブ 2025年2月16日(日)表参道WALL&WALL 開場:18:00/開演19:00 出演者: N.S. DANCEMBLE(NAGAN SEVER、TAIHEI(Suchmos/賽)、松浦千昇、Jinya(D.A.N. )、寺久保玲矢) TRIPPYHOUSING(Skaai、yuya saito(yonawo)、Alex Stevens) -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/マック・ミラー、生前の未発表曲を収録した『Balloonerism』を配信開始
2018年9月7日、キャリア絶頂期の中、わずか26歳という若さで突然この世を去った天才ラッパー、マックミラー。
そんな彼が生前に制作した未発表曲14曲を収録したアルバム『Balloonerism』が、彼の誕生日の2日前となる1月17日(金)に配信リリースされた。
11年の時を経て
『GO:OD AM』や『The Divine Feminine』、『Swimming』といった歴史に名を刻む最高傑作を生み出し、ヒップホップシーンだけにはおさまらず、現代の音楽シーンにおいても多大なる影響を与えたマックミラー。 2014年に『Faces』と同時期に制作され約11年という時を経て発表された今作は、SZAやThundercatといった彼と長年の親交があったアーティストたちが楽曲制作に参加しており、グルーヴィーでチルな楽曲たちがリスナーの耳をしなやかに撫でると同時に、彼はやはりもうこの世にはいないという侘しさを感じられずにはいられなくなる作品である。 特に、4曲目に収録されている「5 Dollar Pony Rides」は、今作において重要な役割を担うサンダーキャットの実兄でもあり、カマシ・ワシントンやマーカス・ミラー、上原ひろみといった数多くのミュージシャンのバンドに参加し、ケンドリック・ラマーの最高傑作『To Pimp A Buttefly」にも携わった天才ドラマー、ロナルド・ブルーナー・ジュニアが兄弟揃って参加している。 サンダーキャットの生き物のように唸るタイトなベースラインと、ロナルド・ブルーナー・ジュニアの華麗に刻まれ溶け込んでいくドラムが見事なグルーヴを生むことにより、少し耳新しいマック・ミラーの顔が伺える新鮮な楽曲となっている。 配信と同時に公開されたトレーラー動画は、子供やネズミといった小さな存在から見た景色を不思議な世界観で描いた色彩豊かなストーリーとなっている。ぜひチェックしてみて欲しい。 YouTube動画:https://www.youtube.com/watch?v=EJlaX3_hMug -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/Benjazzy、待望の1stアルバム『UNTITLED』をリリース!
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Benjazzy、待望の1stアルバム『UNTITLED』をリリース!
今年2月、日本のヒップホップ史上最大規模となる東京ドームライブを最後に解散した8人組ヒップホップ・クルーBAD HOPのメンバー、Benjazzyが、ソロ初となる待望の1stアルバム『UNTITLED』を12月27日にリリースした。
全12曲、客演はなし
BIMやKEIJU、JJJといった数々のラッパーたちの客演に参加し、高いラップスキルで多くのリスナーたちを魅了してきた...
Peterparker69、ジャンルの枠を超えた新生ユニット
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Peterparker69、ジャンルの枠を超えた新生ユニット
12月6日に、ロンドンを拠点に活動するエレクトロ・デュオTwo Shellとの共作『Magic Powers』をリリースし、海外の音楽イベントにも出演するなど活動の幅を大きく広げ始めているヒップホップユニットグループPeterparker69。
ヒップホップの枠を超えた彼らの魅力に迫っていきたいと思う。
結成わずか2年での躍進
Peterparker69は2022年にニューヨーク生まれのラッパーJeterと楽曲のプロデュースを手掛けるY ohtrixpointneverの2人で結成され、その年の2月18日にリリースされた1stシングル『Flight To Mumbai』がApple StoreのCM曲に起用され大きな話題を...
Daichi Yamamoto、新作EP『Secure』をリリース!
今年5月に2ndアルバム『WHITECUBE』以来、約3年ぶりとなるJJJプロデュースの3rdアルバム『Radiant』をリリースし、10月20日には8都市を巡るワンマンツアー「Daichi Yamamoto - Radiant Release Tour “Watch Your Step20204」を大成功に収めたDaichi Yamamotoが、12月18日(水)に新作EPとなる『Secure』をリリースした。
今作は、Daichiが置かれた状況や評価にたいする切実な思いが綴られた内容となっている。
ゲストにElle Teresa、鈴木真海子も参加!
全5曲で構成されている今作は、Elle Teresa、鈴木真海子(chelmico)が参加した楽曲を収録。 そして、ほどよい渇きと潤いを印象付ける「Millon Dollar」や、Daichiのワンマンツアーにも参加した歌手の有坂美香が放つパワフルな歌声が際立つアンセム曲「なんとかなるさ」といった楽曲が連なるとても濃厚なEP作品となっている。 ビートメイクにはDJ DISKや今作が初のタッグとなるDJ MAYAKU、今年9月にYouTubeに公開された「Daichi Yamamoto pro.by KM | Red Bull 64bars」でも大きな話題を呼んだ「N64」のプロデュースを担当したKMに加え、Daichiの故郷でもある京都をベースに活動しており、先行シングル「Newtone」も手がけた4LONが参加している。 Daichi Yamamoto prod. by KM|Red Bull 64 Bars https://www.youtube.com/watch?v=LBtvI6GzsiA -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/XG 世界が熱狂するヒップホップ/R&Bガールズグループ
2022年に1stシングル『Tippy Toes』でミステリアスな雰囲気を放ちながらデビューを果たし、国内に限らず海外からも急速に人気を伸ばし続け、現在アジア、北米、ヨーロッパを周るワールドツアーを行うなど、今最も勢いにのり快進撃を続けているヒップホップ/R&BガールズグループXG。
ビッグウェーブを巻き起こしている彼女たちの魅力とは何なのか迫っていきたいと思う。
XGの公式ホームページのプロファイルには「ヒップホップ/R&Bガールズグループ」として彼女たちは紹介されている。そう、XGはいわゆる一般的なアイドルグループではないのだ。
そこには彼女たちの音楽性とパフォーマンス性が関係している。
現代では、特にアメリカなどではヒップホップが音楽シーンを席巻していると言っても過言ではない。そして、その成長を支えてきた重要な要素の1つがR&Bだ。
90年代以降ローリン・ヒルやエリカ・バドゥ、コモンなどの登場により、それまでヒップホップと分離されていたR&Bとの融合の形が実現し、互いに急成長を遂げながら当時のチャートを賑わすようになった。そして、現代でもその関係性は維持され、ケンドリック・ラマーやSZAといったアーティストたちがこの2つのジャンルをチャートで盛り上げている。
そんな切っても切り離せないヒップホップとR&Bとの関係性に新たな風を吹き込んだのがXGだ。そして、その新しい風というものが「K-POP的アプローチ」である。
2010年以降、BTSやBLACKPINKの台頭によりK-POPが世界的なジャンルへと急成長し、現代の音楽シーンにおいても欠かせない存在となっている。
XGはそんなK-POPの最大の特徴でもある圧倒的なダンススキルや歌唱力、ビジュアル的要素を、先ほど述べたヒップホップ/R&Bとの関係性に結び付け、「ヒップホップ/R&Bガールズグループ」という新しい音楽グループの形としてパフォーマンスの幅を広げたのである。
そして、5年間のトレーニング期間で磨き上げられた劣ることのない確かなスキルでリスナーたちをうならせ、分け隔てなく多方面の音楽ジャンルのファンを獲得することに成功したのだ。
「初」を叩き出し続ける偉業
XGは非公開で行われた5年間にも及ぶ過酷なトレーニング期間を経て、15人の候補生から選抜されたJURIN、CHISA、HINATA、HARVEY、JURIA、MAYA、COCONの7人のメンバーで構成されている。 また、プロデュースを担当するのは、彼女たちの所属事務所XGALXのCEOでもあり、韓国アイドルグループDMTN (DALMATIAN) の元メンバー JAKOPS (SIMON) だ。 そんなメンバー全員が日本人のXGだが、彼女たちの勢いはとどまることを知らない。 2023年にリリースされた1stミニアルバム『NEW DNA』はBillboard JAPAN「Hot Albums」で総合1位を獲得すると、収録曲である「GRL GVNG」が全米ビルボード「Hot Trending Songs Powered by Twitter」で日本人アーティスト初の1位を獲得した。その後、日本人ガールズ・グループとして初めて米『Billboard』の表紙を飾る偉業を成し遂げた。 また、「SHOOTING STAR」や「WOKE UP」のMVではすでに5000万回以上を記録している彼女たちだが、11月8にリリースされたセカンドミニアルバム『AWE』のリード曲「HOWLING」のMVは、アルバムの発売日と同時にYouTubeで公開されてからわずか2週間で850万回再生を記録しており、またm-flowの「prism」がサンプリングされたことでも大きな話題を呼んだ「IYKYK」のMVは1ヶ月で1,256万回再生を突破している。 さらに、XG初となるワールドツアー「XG 1st WORLD TOUR “The first HOWL”」では、アメリカや中国で次々とチケットが完売となり、日本公演では約5万5000人を動員した。11月18日からはヨーロッパツアーをスタートさせ、来年2月には本ツアーの最終公演として追加された日本公演が控えている。 しかし、それだけでは止まらず、来年4月にはアメリカ最大級の音楽フェス、コーチェラフェスティバル2025に、日本人アーティスト初となるセカンド・ヘッドライナーとして出演することが決定している。XGが吹き込む新しい風
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ガールクラッシュのその先?
「ガールラッシュ」という言葉を近頃K -POPシーンの中でよく目にする。 男性からの目線を意識することなく、女性らしさをストレートに表現することで女性ファンの憧れとなる存在という意味でよく使われ、XGもそのガールクラッシュの例として度々名前が挙げられる。 しかし、彼女たちのガールクラッシュは一味違うように思える。 狐をモチーフとしたアメリカンフットボールヘルメットやギラギラとしたティースジュエリー、3000年代という未来感を彷彿とさせる「Y3K」など多彩な要素を照らし合わた今までにない新たなスタイルに、女性だけではなく男性から見てもインスピレーションを受けてしまうインパクトがあるのだ。 “女性から見ても、男性から見ても憧れる女性”というXGの姿勢に、多くの若者たちが惹かれているのではないかと思う。そんな全てにおいて "新しい"を作り上げていくXGに今後も目を離すことはできない。要チェックだ。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/THE1975、世界を代表するロックバンドとしてあるべき姿とは
2010年代から2020年代を代表するロックバンドとして、著者がまず最初に挙げるバンドは間違いなくTHE1975だ。日本でもサマーソニック2022のヘッドライナーとしてステージに出演し、翌年に行われた自身最大規模のジャパンツアーは全公演ソールドアウトとなった。
ロックの衰退期と言われ、ニルヴァーナやオアシスといった絶対的なロックバンドをリアルタイムで体感することがなかった今の若い世代にとって、THE1975はそんな重要な役目を担うロックバンドである。
そんな現代のロックシーンの象徴とも言えるTHE1975の魅力に迫っていきたいと思う。
THE1975のもう一つの魅力は、様々な問題に触れながら「愛」や「希望」を歌う両立性を感じさせる歌詞だ。
戦争や政治問題、貧困、差別を痛烈に批判すると同時に、彼らの「願い」を綴った『Love It If We Made It』や、自殺行為についてに共感し寄り添いながらも「でも死んじゃだめだ!」と歌った『I Always Wanna Die (Sometimes)』など、現代の世界が抱える問題に対して言及しながらも「愛」や「希望」を内在させた歌詞が、多くの人々を惹きつけるのだ。
そして筆者は、彼らがザ・ドアーズやU2、セックス・ピストルズのように本来のあるべきロックバンドの姿を体現しているように思う。
アルバムごとに変化し続けるコンセプト
THE1975は2013年にデビューアルバム『THE1975』でデビューし、いきなり全英チャート1位を記録すると、その後の全アルバム作品が5枚連続で全英チャート1位を記録し、セカンドアルバム『I like It when you sleep,for you are so beautiful yet so unaware it(君が寝ている姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気づいていないから。)』では全米&全英チャート両方で1位を記録している。 そんな現代のロックシーンになくてはならない存在となったTHE1975の最大の魅力は、「コンセプトの変化」だ。それは音楽面だけにとどまらず、ヴィジュアル面においても変化していくのがとてもおもしろいところだ。 しかし筆者自身、バンドのコンセプトチェンジは非常に難易度が高いものだと感じている。なぜなら、それはバンドの芯となるもののブレが生じて、リスナーとの間にも乖離が生まれやすくなるからだ。 THE1975にそのような現象はまず起きることがない。 その理由は、彼らが取り入れるジャンル的要素が最大限に活かされているからだ。 THE1975の楽曲はパンクやポストロック、オルタナティブ、R&B、エレクトロ、シューゲイザー、ダンスミュージックといった多種多様なジャンルで構成されている。そしてこれらから選択したジャンルを徹底的に突き詰めることにより、中途半端なサウンドになることなくバンドのグルーヴに大きく作用し、ポップミュージックへと昇華される。それによりリスナーたちが違和感なく彼らの音楽を受け入れることができるのだ。 言ってしまえば、THE1975はロックバンドとしての存在意義を失う寸前のラインを保っているバンドでもあり、最も自由なバンドでもあるということだ。メッセージ性を帯びた楽曲
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マシュー・ヒーリーのフロントマンとしての立ち位置
若者から絶大な支持を得ているTHE1975だが、その人気の理由の一つとして、圧倒的なライブパフォーマンスが挙げられる。 特にTHE1975のフロントマンでもあるボーカルのマシュー・ヒーリーのパフォーマンスは圧巻だ。ライブ中に飲酒、喫煙はお決まりのことだが、それだけで終わらないところが彼の魅力である。 マイケル・ジャクソンを彷彿とさせる華麗なダンスから、人間の本能を感じさせるほど激しく暴れ回るパフォーマンスまで非常に振り幅が大きく、そんなスマートでもありエネルギッシュでもあるライブパフォーマンスに、多くの若者が魅了されるのだ。6枚目のニューアルバム?
2022年にリリースされた最高傑作『Being Funny In A Foreign Anguage(外国語での言葉遊び)』から2年が経ち、今年3月に完走したライブツアーを最後に、ライブ活動の無期限休止を発表したがTHE1975だが、今年10月にヴォン・イヴェールやジョージなどの楽曲制作を手がけた音楽プロデューサー・ジムイースタックが自身のインスタグラムにTHE1975との共同制作を匂わすストーリーを投稿し、ファンの間で「6枚目のアルバムが出るのか?!」と大きな話題となった。 きっともう彼らの新しい旅路は始まっているのだろう。 次のTHE1975は、どのような姿をしており、どのような音楽を掻き鳴らしているのか期待が膨らむばかりだ。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/ODD Foot Works、唯一無二を追求した新しい音楽の可能性
井口理(King Gnu)や、AAAMYYY(Tempalay)、佐藤千亜妃、TENDREといった国内の著名アーティストから高い評価を受け、またTHE ORAL CIGARETTESが11月から開催する「THE ORAL CIGARETTES presents’’WANDER ABOUT 放浪 TOUR 2024 東海 編’’」※(延期決定)の帯同が決まっており、12月28日には、LIQUIDROOMで行われる単独公演「ODD AREA」を控えるなど、今勢いのある3人組音楽グループODD Foot Works(オド・フット・ワークス)。
唯一無二の音楽を奏でる彼らの魅力とは何か掘り下げていきたいと思う。