名古屋拠点の4人組バンド The Moon – 日常が紡ぐ音楽の物語
筆者がストリーミングで耳にした瞬間、心を掴まれたバンド、The Moon。
愛知県の名古屋を拠点に活動する4人組バンドで、ジャズやR&Bの要素を感じさせる 1st シングル「徒花」をリリースすると同時にバンドを結成し、本格的な活動を開始したようだ。
儚さを感じさせる歌声と、温かみのある音色やメロディが織りなす音楽、そして日常の一部を切り取ったかのような歌詞が印象的で、聴く人の心にそっと寄り添う楽曲となっている。
そんな彼らが、12月15日には初のEP「atodashi」をリリースし、新たな音楽表現の一歩を踏み出した。
今回のインタビューでは、メンバーの琴梨(Vo)さん、宮田(Ba)さん、真央(Key)さん、めい(Dr)さんのうち、宮田(Ba)さん、真央(Key)さん、めい(Dr)さんの3名に、バンド結成の背景や、これまでリリースした楽曲に込めた想い、そして今後の展望についてお話を伺うことができた。
結成のきっかけは、King Gnu のMV
まずは、バンド結成の経緯やメンバーとの出会いについて伺った。 __バンドを結成しようと思ったきっかけは何でしたか。 宮田(Ba):僕と真央(Key)が高校時代からの同級生で、卒業する前から「何かやりたいね」と話していた中で、結局サラリーマンに1回なったんですけど。ある時友達がカラオケで、King GnuさんのVinylを歌っていた時にMVが同時に流れていて、それを見た時に僕に電気が走りまして(笑)。こういうのをしたいと思って。それでKing Gnuさんを追いかけつつ、他のアーティストさん含め、アーティストの人たちがフェスなどのステージに立って見ている景色を見てみたいなと思って。それで真央と2人で、バンドを組むことになりました。 __楽器の経験はそれまであったのですか。 宮田(Ba):全くやったことがなくて。20歳の頃に楽器を始めると同時にバンドを組みました。 __めいさんの、メンバーとの出会いのきっかけは何でしたか。 めい(Dr):ボーカルの琴梨さんとたまたま同じ美容院に通っていて、席が隣になって。その時に、たまたま会話の中で私がドラムをしていることを聞いていてくれたみたいで。琴梨さんから、「今、バンドにドラムがいないから入ってくれませんか」と誘われたのがきっかけでした。私が元々 The Moon のファンで楽曲を聴いていたので、ぜひ参加したいと思って。 __バンド名の「The Moon」、由来を教えてください。 宮田(Ba):由来は、バンド名をどうするかっていう話になっていた時に全然決まらなくて。コンビニで話していて、空を見たら月が綺麗だったっていう(笑)。 バンド名の由来は、日常から切り取ったようなもので、「月」という要素が彼らの楽曲の雰囲気にもぴったりと合っているように感じた。 では、彼らは普段どのような活動をしているのだろうか。SNSでは、レコーディングやスタジオ練習の様子が見受けられたが、実際のところはどうなのか。さらに掘り下げて聞いてみた。 __活動状況としては、楽曲制作やライブは頻繁に行っているのですか。 宮田(Ba):ライブは正直まだ1回しかしたことがなくて、今年の5月に1度だけ行いました。というのも、自分たちの持ち曲がなくて。5月に1回行ったライブは少しなのですが、コピーを交えてのライブをしました。それで今3曲リリースしているのですが、それからは自分たちの曲を増やすために、12月15日リリースのEPに向けてレコーディングと制作を繰り返していました。 レコーディングは、12月15日にリリースの4曲入りEPの制作に向けたものだったようだ。 The Moonの楽曲はどのように作られているのだろうか。 __楽曲制作はどのように行っているのですか。 真央(Key):僕の家にパソコンやインターフェイスとか機材が色々置いてあって、そこでDAW上でできるようになっていて。楽曲は僕と宮田が作ることが多いので、2人で僕の家に集まって、話し合って作っていくことが多いですかね。 __作詞作曲を二人で行っているのですか。 真央(Key):作曲は僕が少しできて、作詞は全て宮田が担当しています。 1人で完全に作るというより、2人で話し合って作っていくので、作り始めに大体最初どういう曲を作るかっていうイメージを2人で固めてから作ることが多いですかね。3つの楽曲に込められた想い
EP作品について伺う前に、まずは現在リリースされている3曲の楽曲について知っていただきたい。 楽曲についてお話を伺う中で、それぞれの楽曲にテーマが意識されていることが印象的だった。 まず、2023年9月にリリースされた1st シングルの「徒花」。 この楽曲は『失恋』をテーマにしているそうだ。 ジャズっぽさを感じさせる独特のリズム感がイントロから引き込んでくれ、琴梨さんのボーカルと切ない曲調が見事に合わさった楽曲だ。 曲名の「徒花」は、『咲いても実を結ばない花』を意味し、外見は華やかでも実質を伴わないもののたとえにも使われる言葉だ。 歌詞は宮田さんの実体験をもとに書かれているようで、実を結ぶことができないもどかしい恋愛心情が表現されている。 __「徒花」という楽曲について、『失恋』をテーマにしたきっかけは何でしたか。 宮田(Ba):僕の失恋です。振られたじゃないですけど、色々あってダメだった女の子に届けばいいなっていう想いで作りました。 __制作にあたって、工夫した部分はありますか。 真央(Key):最初(宮田さんが)コード進行を出してくれて、僕がとりあえずコードだけでピアノのバッキング入れて「いいじゃん」ってなって進んだんですけど、あとはもうなんかセンスでやったよね。 宮田(Ba):センスでやりました(笑)。 真央(Key):センスで結構進めちゃって。 宮田(Ba):真央と僕の好きな音楽が結構似ていて。2人の好きな感じをふんだんに詰め込んだ曲になりました。 __どういったアーティストさんのイメージを持っていたのですか。 真央(Key):僕、The Cardingsさんの『Carnival』っていう曲が好きで、その曲のイントロがオルガンから始まっていて。すごくいいなと思って、オルガンで始まるイントロのアイデアはそこから持ってきましたね。ドラムは最初結構センスで作りましたけど、よく聴いたら僕らJamiroquaiさんが好きなんですが、『Virtual Insanity』っていう曲と似ているね、という話にはなりましたね。 次に、2024年4月にリリースされた 2nd シングル「MUT」。 ラップが印象的で、1stシングルの「徒花」とは異なり、ヒップホップ要素が取り入れられ、楽曲の雰囲気がガラッと変わっている。 曲名の「MUT」は、ドイツ語で『勇気』という意味があるそうだ。 そのテーマでもある通り、踏み出せずにいる人たちに向けて語りかけ、自分の目指す未来へ進んでいけるよう『勇気』を届けるメッセージが込められた楽曲となっている。 __「MUT」という楽曲について、『勇気』という意味を込めた楽曲にした理由は何でしたか。 真央(Key):2ndのシングル「MUT」は、リリースした時期が4月の後半で。 4月は新しい環境で頑張る人が多い時期でもあるので、そういった人たちに向けての『勇気』をイメージしました。 __ラップも印象的で「徒花」に比べて雰囲気も一気に変わったと思いますが、何か意図があったのですか。 宮田(Ba):1番初めに出したのが結構暗い曲なので、次は明るい楽曲をやってみようかっていう。僕が趣味でラップをやってるので、自分のラップを入れようという風に考えました。 宮田さんが趣味でやっているというラップが取り入れられたこの楽曲では、リリックにも寄り添ったメッセージが込められている。ぜひ注目してほしい。 続いて、2024年7月にリリースされた「Soleil」。 この楽曲は『結婚』をテーマに作られた楽曲のようだ。 結婚を誓い合う心情や、人生の新たなスタートを描いた歌詞にも印象を受ける。 __「Soleil」という楽曲について、『結婚』 という意味を込めた楽曲にした理由は何でしたか。 宮田(Ba):3曲目の「Soleil」は、ちょうど友達が結婚式だった時で。その友達は高校からの友達でよく知っていたので、高校から今までの経路をたどっての歌詞になっています。 __イントロの部分でもイメージを感じましたが、『結婚』のテーマを表現するために意識したことはありますか。 真央(Key):「Soleil」は『太陽』っていう意味なんですけど、「ひまわり」っていう捉え方もできるらしくて。結婚した友人の奥さんが向日葵が好きらしく、そこからこの曲名をつけました。 楽曲で表現した部分は、本当は『太陽』という意味なので、最初は、少し焚き火の音みたいな要素を入れて、火を表しました。ここでストリングスも使ったことで、華やかに、少しクラシックっぽさも表していこうかなと考えた感じですかね。盛大に祝いたいなと思って工夫したところです。 このように友人の結婚を祝う気持ちや、その特別な瞬間への思いが楽曲の細部にも表現されている。 聴く人に幸せが伝わるような、温かさの込められた楽曲となっている。EP「atodashi」を通してバンドの色を
既にリリースされている3つの楽曲についてお伺いしたが、12月15日にリリースのEPについてもお話を伺った。 4曲を含めたEP「atodashi」をリリースするようだが、これまでの楽曲とは少し異なるアプローチを取り入れているようだ。 真央(Key):これまでの楽曲では、音色をたくさん重ねるという方向性で編曲とかをしていたんですけど。 宮田が、少ない楽器や音数での「満足感のある曲」を追求しているようで。それを聞いて、最近は少ない音数の中でその1曲で満足感が出るというのを目指して制作していますね。音数が少ない分どう展開していくかを考えることが最近多いかなって思います。 __EPについて、何かテーマはあるのですか。 宮田(Ba):EPの名前が「atodashi」っていう名前になっているんですけど。日常にある恋愛だったり、会話の中での「話し手の後者に回る」といったようなものが、一応テーマになっています。 真央(Key):「笑談」っていう曲があって、その曲は特定の友人とか、周りであったことを歌詞に込めて作っていますね。でもそんなにがっつりとしたテーマはないかな。 __制作において今までの3つの楽曲とは違う、新たな試みはありましたか。 真央(Key):今のところ、3曲ともジャンルが別々っていうか。1曲目はジャズやR&B、2曲目はラップでヒップホップ要素を取り入れて、3曲目がクラシックっぽさをイメージしたんですけど。 でもこれから、自分たちのバンドの色を定めていきたいっていうところもあって、EPで少し固めるようにはした感じですかね。 僕らはいつも通り作ったつもりなんですけど、聴き手からしたらまた新しいものになったのかなと思います。音数が少なくなって、また少し違う感じに聴こえるんじゃないかなと思います。目標は「森、道、市場」
EPのリリースを機に、今後のライブ活動にも期待を抱いているが、過去に一度行ったライブについても、今後の展望を交え、お話を伺った。 __初めて行ったライブはカバーも交えたんですよね。どんな曲をカバーしたのですか。 宮田(Ba):2曲カバーはしたんですけど、うちのボーカルの声に合いそうだと考えてshowmoreさんの「circus」、あとは僕と真央がやりたかったSuchmosさんの「GIRL」という曲をカバーしました。 __どういうお気持ちでしたか。 宮田(Ba):あんまり成功した感はなかったですね(笑)。 真央(Key):「徒花」がオルガンとかを使用して、音色も少し多く取り入れていて。それもあって初のライブで、同期を使って演奏したんですけど。同期をセッティングするっていう部分で、最初手こずったかなって感じですかね。最初やばって思ったけどね(笑)。これからライブをしていって、そういうとこも慣れていって、いろんなところでライブをしていきたいって思いますね。 __その時はどういう規模感の場所で行ったのですか。 宮田(Ba):喫茶店だったんですよね。マニュアル喫茶店で。ほぼ自主企画みたいな感じで、先輩のバンドとか呼んで、ラッパーとかも呼んでみたいな。DJもして。 __楽しそうですね。 宮田(Ba):楽しかったですけどね、あんまり満足できなくて(笑)。 __EPを出すというきっかけで、今後のライブの展望はありますか。 宮田(Ba):無難にライブハウスでやったことがないので、今までで。誰もが一度は通るライブハウスでもやってみたいですし、野外でもやってみたくて。 今のところの僕らの目標が、愛知県の蒲郡市である「森、道、市場」っていう大型のフェスがあるんですけど、出てみたいなと思っているので。野外でもライブをやってみて、経験を積んでいきたいですね。 まずは、来年からライブ活動にも積極的に取り組んでいきたいという熱意も伺うことができた。今後の展開にも注目していきたい。日常で紡ぐ音楽
現在はバンド活動を中心に音楽活動を行っていますが、それぞれの活動の取り組みについても伺った。 __現在、活動はバンド活動中心で行っているのですか。 真央(Key):僕はバンドで楽曲を作る活動をしていることが多いですね。あとは楽器を始めたのが遅くて、実力がまだないなと思っていて。クラシックとジャズを習いながら作曲をしていますね。 宮田(Ba):僕は、バンド組んだと同時期くらいに仕事を辞めて、そこから作曲活動中心でという感じです。 めい(Dr):私は、普段は音楽の先生とピアノの講師をしています。他の時間はもう趣味も音楽なので、全部ドラム、バンドです。 __ボーカルの琴梨さんも、弾き語りでステージに出ていますね。 宮田(Ba):琴梨さんは高校からギターを始めて、卒業したタイミングぐらいから弾き語りを始めたようで。そこからも趣味という感じでステージに出ているのだと思います。 __今後バンドとして挑戦していきたいと思っていることはありますか。 真央(Key):12月はEPで4曲をリリースする予定ですが、今後はアルバム、もう少し大きな作品を僕は作っていきたいなと考えていますね。ライブは先ほども言った「森、道、市場」を目標に頑張りたいです。 めい(Dr):県内でも県外でもいっぱいライブやりたいです。あと私も作曲したいです、一緒に(笑)。 めいさんはEPがほぼ完成していた段階でバンドに参加したとのことで、今後は制作活動にも積極的に取り組んでいきたいとのこと。 今後、新たな楽曲の世界が広がる可能性を感じさせるコメントだった。 The Moon が作り出す新たな音楽の世界が、今後の楽曲やライブ活動を通じて多くの人に広がっていくことを期待したい。 __EPリリースを踏まえて、どういう風に聴いてほしいといった想いはありますか。 宮田(Ba):今回のEPの楽曲は意外と寄り添った曲というか、さまざまな人に当てはまることが多いと思う曲ばかりなので。自分を当てはめてじゃないですけど、感化されてほしいなって思います。 めい(Dr):感化されてほしいですね(笑)。 まお(Key):やっぱ僕と宮田が、楽器を始めるのが遅かったけど、こんなことができるよっていうのを思ってもらえたら、多くの人が色々な道に挑戦したり、 今からでもできるって思えたらいいなって僕は思っています。 12月にリリースされるEPでも、私たちの日常に寄り添う、素敵な楽曲が詰まっているだろう。 ぜひこの機会に、The Moon の音楽に触れてみてはいかがでしょうか。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/「嫌々」で大注目の “HALVES” 、双子が手掛ける音楽とイラストの融合
TikTokをきっかけに注目を集め、楽曲「嫌々」がストリーミングで1,000万再生、YouTubeではMVが300万再生を超えるなど、話題を呼んでいる双子で活動中の“HALVES”。
弟・りょうまさんが手掛ける心に響く楽曲と、兄・みらいさんの描くキャラクターアニメーションが融合したMVが注目を集めている。
今回のインタビューでは、彼らの活動の背景、楽曲やMV制作へのこだわり、そしてこれからの挑戦についてお話を伺た。なぜ彼らの作品が多くの人の心を捉えるのか、その魅力に迫る。
TikTokを通じて始まった活動
「嫌々」のMVが300万回再生、Spotifyでのチャートイン、プレイリスト選出などで話題を集める一方、「ウェルテル」も100万回再生を突破するなど、公開された楽曲が次々と反響を呼んでいる。そんな彼らに、現在の心境を伺った。 __YouTubeのMVが大きな注目を集めていますが、現在の心境はいかがですか。 みらい(兄):弟の作る楽曲は素人の僕が聴いても素晴らしいものなので、楽曲が注目されたのは「やっぱりな」という感想です。そのおまけといってはなんですが、僕の手がけるMVが300万再生超えを果たし、自分のキャラクターにも注目していただけて嬉しさと驚きでいっぱいです。 りょうま(弟):まさかここまで多くの人に見られるとは思っていなかったので、驚きと嬉しさでいっぱいです。 TikTokを通じて、「迷夢」や「どうせ」をはじめとした、現在リリースされている楽曲を含む数々の動画を投稿し始め、次第に注目を集めるようになった “HALVES”。 その活動を始めたきっかけを伺った。 __TikTokの投稿を始めた理由を教えてください。 みらい(兄):弟の歌を多くの人に聴いてもらいたいという強い思いからTikTokへの投稿を始めました。その中で、2人でHALVESとして活動するため、MVのアニメーション制作を始めました。 りょうま(弟):数あるSNSの中でTikTokを選んだ理由としては、一番拡散力や影響力があると考えたからです。 二人の活動が始まった背景には、兄・みらいさんの「弟の楽曲をもっと多くの人に届けたい」という強い思いがあった。この思いをきっかけに、二人はHALVESとしての活動をスタートし、楽曲にイラストを融合させたMVを投稿し続けている。二人で作り上げる一つのMV
世界観や言葉にならない感情を楽曲へ
メッセージ性のある歌詞や、癖になる心地よいリズムやメロディが印象的なHALVESの楽曲。 そんな楽曲の制作を担当する双子の弟・りょうまさんにその背景を伺った。 __楽曲を制作するようになったきっかけは何ですか。 りょうま(弟):僕は16歳から楽曲制作を始めたのですが、自分の世界観や言葉にならない感情を表現したいと思ったのがきっかけです。 __メッセージ性のある歌詞が特徴的ですが、作詞において意識していることはありますか。 りょうま(弟):作詞は、「嫌々」や「完璧なLIFE」では言葉を並べること、「フラットアース」や「海底宇宙」では物語性を持たせることを意識したりと、曲ごとに表現の仕方を変えています。自分自身の感性を一番に、これまでにない新しさ、HALVESらしい雰囲気を大切にしています。 __その中で、最も注目を浴びた「嫌々」という楽曲では、何か意識したことはありますか。 りょうま(弟):「嫌々」の歌詞には、この世界に溢れているたくさんの嫌なことを詰め込んで、言葉を並べることを意識しました。ストーリーを意識したアニメーション
さらに、HALVESは楽曲だけでなく、ポップなキャラクターが描かれたアニメーション映像のMVも見る人を楽しませている。そんなイラストを手掛ける双子の兄・みらいさんにMV制作についてお話を伺った。 __MV制作はどのように行っているのですか。 みらい(兄):MVはiPadの「プロクリエイト」というアプリで描いたものをパソコンで編集しています。弟(りょうま)の楽曲の歌詞ではなく、曲調に焦点をあててイメージしたものを描いています。 __キャラクターの動きやストーリー性まで細かく表現されている印象を受けましたが、MV制作において意識していることはありますか。 みらい(兄):MVを作る際に意識していることは、ストーリー的な繋がりを作ることです。伏線を貼るのが好きで、よくMVを見てみると全てのMVに繋がりがあることに気づけるはずです。例えば「嫌々」の最後の方に出てきたロケットに乗ったリンゴは、「海底宇宙」で月に到着していたり。そういったキャラクターのストーリーも楽しんでもらいたいです。 __制作の際は、お二人で話し合いながら進めることが多いのですか。 みらい(兄):基本僕1人で作っています。アイデアが出ない時や感想が聞きたい時などは、りょうまと話し合っています。 歌詞の内面的な要素と、ポップなイラストが絶妙に組み合わさった彼らのMVは、多くの人に共感を呼び、同時に勇気を与えている。このような二面性について意識しているのか尋ねたところ、特に意識しているわけではないが、「双子の特権」なのかもしれないと答えてくれた。次回リリースの「誰もが死にたくなる夜に」
HALVESは現在、毎月リリースを実施し、月に一度新たなMVを公開し続けている。そんなお二人に、次回のリリース作品である12月13日配信予定の「誰もが死にたがる夜に」について、込めた想いや注目してほしいポイントを伺った。 りょうま(弟):次回配信予定の「誰もが死にたがる夜に」は、多くの人が抱える命に対する負の感情を、言葉を羅列してストレートに表現しています。この曲を聴いた人が自分の感情と向き合い、本音を曝け出し、一歩踏みとどまって前を向いてほしいと言う願いを込めています。 みらい(兄):MVでも、今までの楽曲のMVでキャラクター達が犯してきた悪事によって捕まってしまうといった伏線回収をしているので、そこも楽しみながら見ていただけたら嬉しいです。今後の挑戦
MVに寄せられたファンのコメントには、「アニメを制作してほしい」「ライブをするなら行きたい」「グッズが欲しい」といった声が多く見受けられる。そうした中、お二人に今後挑戦してみたいことを伺った。 __今後挑戦したいことはありますか。 みらい(兄):今後はグッズ展開などにも挑戦していきたいです。キャラクターのぬいぐるみや服など、様々なグッズを作りたいなと思っています。 りょうま(弟):ライブなどにも挑戦していきたいです。また、メディアに出ることを目標にしていて、特にラジオのパーソナリティを務めてみたいです。ファンの方へのメッセージ
__最後に、ファンの方へのメッセージをお願いします。 みらい(兄):ファンの方々には感謝で一杯です。僕ら双子のこと、特に弟(りょうま)の楽曲を好きになっていただきありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。 りょうま(弟):ファンの方々の存在は僕が音楽活動をしていくなかでの大きな支えになっています。コメントは全て読んでいて、心温かい言葉に元気付けられています。感謝で一杯です。これからも頑張ります。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024オープニングアクトに登場した“HINONABE”の音楽とその世界観に迫る
2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14日から16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。
その出演者の中で、筆者が特に注目している次世代学生バンドが「HINONABE」である。
彼らは、2024年8月10日のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 にオープニングアクトとして出演し、さらに独特の世界観と迫力ある映像で注目を集めた「裸体」のミュージックビデオは、YouTube再生回数が3万回を超えるなど大きな反響を呼んでいる。
そんな彼らの楽曲に込められた想いや楽曲制作、ライブの背景に迫るべく、メンバー4人のうち、磯 敢太さん(Vo/Gt)、菊地 楓さん(Gt/Cho)、佐藤 ケンゾウさん(Dr/Cho)にお話を伺うことができた。
新たな目標が見えたフェス出演
__TOKYO CALLINGやSOUND SHOCKを振り返り、現在の心境を教えてください。 磯(Vo/Gt):サーキットイベントということで新しいお客さんもたくさん来るので、今までやってないようなライブをしたり、少ない曲の中でも少し変化をつけたりして、楽しく激しいライブができたので、すごくいい夏の思い出になりました。 菊地(Gt/Cho):今まで出たことのない規模の大きなフェスやサーキットに色々と出ることができて、嬉しかったです。 佐藤(Dr/Cho):第一に、出たことがなかったサーキットに出られたことが嬉しかったのと、自分たちのやっている音楽をいろんな人に見てもらえる場っていう意味でも、そういう機会が嬉しかったし、もっと知ってもらいたいなという思いが、嬉しい気持ちの中にも強くありました。 __今年8月のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 に出演した時の心境はどうでしたか。 佐藤(Dr/Cho):ロッキンは誰もが知ってるぐらい大きいフェス、夏の1番のフェスっていう認識なんですけど、そのようなフェスにオープニングアクトとして出演できたことがまず光栄でした。嬉しい気持ちはもちろんのこと、自分たちの年齢で簡単に立てるようなステージではないと思うので、貴重な経験ができて、これからも頑張っていこうっていうモチベーションにも繋がった気がします。 菊地(Gt/Cho):今回はロッキンのオーディションで勝ち上がって出演できた形になるんですけど、今後の目標にも繋がる良い経験になったと思っています。 あと、ちょうど自分の20歳の誕生日とロッキンの日が重なってて。お客さんにも「おめでとう」と言ってもらえたことはすごく嬉しかったですね。 磯(Vo/Gt):ロッキン、初めての規模感のキャパ、初めての野外ライブで。そんな大きいフェスに初めて出られるということで、不安もめちゃくちゃあって、もう本番直前まですごい緊張もあったんですけど、いざステージに立つと、すごく気持ちよかったですね。あとはオープニングアクトとして気合いももちろん入ってましたが、これがまたオープニングアクトじゃない形として出られた時、もう楽しみだなっていうのが思い浮かぶステージでしたね。メンバーとの出会いや影響を受けた音楽
__バンドを結成されたきっかけやメンバーとの出会いを教えてください。 磯(Vo/Gt):僕とギターの楓(菊地)は元々音楽に一切触れてなかった人間で、全然違う部活をやってたんですけど。僕がオリジナル曲を作りたいと思って楓を誘って、その後ベースの優之介が入ってきて。活動していく過程で、高校卒業した時に前のドラムが脱退して、そこで募集をした時にケンゾウが来てくれて、今のメンバーで活動をしている状態です。 __皆さん元々お知り合いだったのですか。 磯(Vo/Gt):ギターともベースとも高校で初めて会いました。僕が高校に入る前からカバー曲よりオリジナル曲を作りたいなと考えていたので、それがきっかけになって、オリジナル曲を多く作る高校生バンドとして活動するようになったんだと思います。 __結成されたのはいつ頃ですか。 磯(Vo/Gt):今のHINONABEという名前になる前のバンドでは2020年〜2021年頃から活動していて、今のメンバーで本格的に始めたのは2024年、今年からです。 __佐藤さんはどのようなきっかけで参加することになったのですか。 佐藤(Dr/Cho):元々高校時代の彼らを見たことがあったんですけど、ちょっと興味があって。それでずっと見ていたら、ドラムが脱退しちゃうって話で、メンバーを探してるって聞いて。自分の感性的に、高校生でこういう音楽をしてるのは本当にすごいなと思っていたので、そこから、入らせてもらおうかなっていう経緯で自ら連絡しました。インスピレーションを受けているアーティスト
__影響を受けてるアーティストや尊敬しているアーティストはいますか。 菊地(Gt/Cho):高校に入るまでは全く音楽に触れてなかったのですが、音楽を始めてからヨルシカさんにハマって、高校の時ずっと好きでした。今はリーガルリリーさんや羊文学さんが好きです。 __高校入学してからギターも始めたのですか。 菊地(Gt/Cho):そうですね。 磯(Vo/Gt):僕はボカロを中学の時から聴いていて。高校に入ってからは、カラオケトップランキングとかに入ってるような曲ばかりを聞いたんですけど、NEEさんっていうバンドがきっかけで、アンダーグラウンドな曲を聴くようになりました。そこからより一層音楽の面白さを知った気がしています。僕にとってはNEEさんがでかいですね。 1人で楽曲を作ってる時には、できる限りその期間は1つのアーティストだけを聴かないようにしてるんですけど、サカナクションさんとかカネコアヤノさんとかは、影響というか、何回も戻ってきます。苦戦した時に、どうしたらこういう雰囲気を出せるんだろうかっていう時には、助けてもらったり、ある意味ちょっと気持ちを戻してもらったりしてますね。 __磯さんも高校に入ったタイミングで楽器を始めたのですか。 磯(Vo/Gt):そうです。高校に入る前は全然楽器とかは一切やってなくて。鼻歌はやってました(笑)。 佐藤(Dr/Cho):逆に僕は3歳ぐらいからピアノを習わせてもらってたので、割と物心ついた頃には音楽に触れてたので、明確に影響を受けたアーティストが誰かと聞かれると、覚えていないっていうのが答えです。ずっと音楽には触れていたけど、バンド系の音楽には触れてなくて。でも、いま僕のドラムに影響を与えているアーティストでいうと、絶対にルサンチマンっていうバンドを答えますね。 __ドラムはいつ頃始めたのですか。 佐藤(Dr/Cho):中学校から高校まで吹奏楽をやってたんですけど、ドラムはそこでちょっと触るぐらいで、ちゃんとやり始めたのは18歳の時で、2、3年前ぐらいですね。独自の世界観を生み出す楽曲制作
HINONABEの楽曲には一貫したテーマがあるのか、作詞作曲を担当する磯さんに尋ねると、彼は「愛」を大きな題材にすることが多いと語ってくれた。彼らは「愛」のさまざまな側面を追求し、その要素を楽曲の独特な世界観に取り込んでいる。そんな彼らの楽曲制作の過程に迫ってみた。 __楽曲制作はどのように行われていますか。 磯(Vo/Gt):楽曲制作は、僕がパソコンで全楽器を軽く入れたデモをメンバーに提出して、そこからはメンバーとアレンジを長時間かけてやってきたのが今までの作り方ですね。 __楽曲の世界観に衝撃を受けたのですが、どこからインスピレーションを得ていますか。 磯(Vo/Gt):抽象的になるんですけど、景色や匂い、温度とか、空間的な要素で曲作りが変わると思っています。また、ギターの種類とか出すアンプの音とかで、曲作りの雰囲気、モチベーションも変わりますね。逆に「生で音を出すからこういう曲ができる」という時もあったり、その時々で変わるのを高校生の頃くらいに気づいてから、1つの楽器でずっと作ったり、初めからパソコンでやったりというようなずっと同じ方法では作ってない気がします。 __歌詞も印象的ですが、どのように考えているのですか。 磯(Vo/Gt):文学に精通してるわけではないんですけど、小さい頃から本を読むのが好きだったり、漫画とかアニメとか映画が好きで。歌詞を書く時でも、気持ちを主体に出したい曲の時は気持ち主体で出して、言葉にできない雰囲気や世界観がある時は、変にその世界観を括らないように、その世界観が浮かんだ時にそばにあるものを風景として歌詞に織り込んだり。それプラス自分の感情とか、曲を作ってる時の温度感とかを一緒に歌詞に込めてますね。 __アレンジ面で意識していることはありますか。 菊地(Gt/Cho):アレンジでは、ボーカルメロディー、他のバンドメンバーのリズム感、自分の音の並び方を意識してて、自分のリードフレーズに関しては音の繋がりをよく意識してアレンジしてます。いつも楽譜ソフトでアレンジするんですけど、全体をまとめて聴いた時に聴きやすく感じるかどうかを大切にしています。 佐藤(Dr/Cho):僕が1番考えてるのは、ボーカルを立たせるのはもちろんのこと、リズムを刻みつつも、リードギターが出してるフレーズに寄り添うようなドラムをしたり、ベースが動いた時にはそれについてくじゃないですけど、それに沿ったり、バンドとしての一体感を大事にしてます。 磯(Vo/Gt):アレンジは技量を詰め込みすぎても、それが楽曲と合ってない時に、その世界観を崩してしまうこともあると思っているので、そこは変に喧嘩しないようにしたいなと思っています。また、曲作りでも一緒になるんですけど、すごく綺麗な音ばかりを使いたいとは思ってなくて、汚くてもいい音があると思ってるので、使用する音も意識しています。その中でも、全部の音やアレンジ、構成、全てに、後から聞かれた時に意味を伝えられたり、そういうのを具現化できるような範囲内でアレンジをしようとは思っています。ここでため(間)を作ったり、息を止めたりという部分には、こういう意味があるんだという風に、誰にでもわかりやすく伝えられるぐらい、堂々としたアレンジや音作りにしようって思っています。愛の二面性を表現した「裸体」
__「裸体」という楽曲が注目されたと思いますが、こだわったポイントはありますか。 磯(Vo/Gt):この楽曲は高校生の時に作ったものなんですけど、自分たちの曲の中でも、特にメロディーやギターの音が聴きやすく、かっこよくできたとは思っていますね。この「裸体」は元々「人間失格」っていう違う楽曲名だったんですけど、それだと聴く人がそのタイトルに引っ張られてしまうのもどこか違うなということで「裸体」という名前にして。この楽曲もテーマは「愛」なんですが、愛にも気持ち悪い部分と、綺麗だと思う部分があると思っていて。そこで裸も、愛し合う時は裸になるし、かといって普通に裸で街を歩いてたら気持ち悪がられるし、みたいな。そういう二面性がある部分を表現したいなと思ったときに、1番自分がその時に身近にあったのが、「裸」っていう題材だったのかなということで、「裸体」という楽曲名にしました。 __ミュージックビデオの制作においてこだわった点はありますか。 磯(Vo/Gt):ミュージックビデオの制作では、監督さんと色々お話をしたり、撮影中もモニターで確認させてもらいながら進めました。汚い、気持ち悪いような、「いびつさ」っていうのを、綺麗に撮りたいというところに関して苦戦しつつ、結果かっこよく仕上げてもらったので、それはすごい感謝ですね。途中で映像が激しく変わる部分では、自分のボーカルとしての動きもそうですけど、あんまり日常では見ない、いびつな動きを取り入れました。日常ではしない動きを、楽器を持っていたり、ライブ中だとできちゃうので、そういう動き方は意識しましたね。 楽曲「裸体」で表現された「愛」の二面性を示す世界観は、楽曲の隅々にまで緻密に作り上げられており、彼が語る「いびつさ」を美しく映し出したミュージックビデオも非常に印象的だ。ぜひ、楽曲に込められた深い思いを感じながら、一度聴いてみてほしい。 YouTube - 裸体 / HINONABE (Music Video) : https://youtu.be/nM17h2AQdpsライブで作り上げる一体感のある空間
__ライブパフォーマンスにおいて大事にしていることはありますか。 磯(Vo/Gt):少し前まではどちらかというと独りよがりというか、自分たちが気持ちよければいいや、そこに楽曲が持ってるパワーをお客さんにぶつけようっていうライブの仕方をしてたんですけど、最近になってお客さんもお金を払って見に来てくれてるし、いつでもできるライブをしちゃダメだなっていう気持ちがメンバー内でも強くなって。コンディションとかそういうの関係なしに、その時、その空間だから出せるライブ。仮に喉が枯れてたら枯れてるから出せるっていうような、ライブを全部プラスに持っていって、お客さん自体も生活の中でプラス要素になってくれるように、っていうことを心がけてやってますね。 菊地(Gt/Cho):ライブだとお客さんの表情を見て確認するっていうのを最近は意識してるようにしていますね。こだわっている部分だと、ギターの音作りではお客さんが聴きやすい音量感を気を付けたりしてます。 佐藤(Dr/Cho):磯の話に通ずるんですけど、ライブ感を大事にしてるつもりでいて。やっぱりドラムは、自分が出すテンポで曲の速さが決まったりとか、自分のテンション感でお客さんのノリが変わったりするので、自分が最初にテンション感を出さないとっていう気持ちもあって。動きだったりとか、それこそボーカルを見たりとか、お客さんの反応を一緒に楽しんだりとか。楽曲を聴くだけじゃなくて、ライブを楽しませるような考え方はいつも持っています。 ライブではお客さんの反応や一体感を何より大切にしているという。その瞬間、その場所でしか味わえない熱気や空気感、テンションがダイレクトに伝わってくるはずだ。ぜひ、実際に足を運び、その瞬間を体感してほしい。聴いてくれる方々が誇れるバンドに
__今後の展望、ファンの方やこれから聴いてくれる方に向けてのメッセージをお願いします。 磯(Vo/Gt):もちろん変わらず曲はいっぱい作っていきたいし、今しか作れないものを作っていきたいし、そこに意味があると思っています。常に楽曲を作って、今応援してくれてるファンの方たちが自分たちのバンドの名前を言うのが恥ずかしくないような、誇れるバンドになりたいですね。ファンの方たちに向けては、曲をリリースするにしろ、ライブをするにしろ、そうやって聴いてくれてる方のためにやってるというか。そのファンの方たちの時間を絶対に無駄にしないように、悪影響を及ぼさない、良い影響を及すバンドになるので、楽曲からも色々なことを汲み取って、日々のプラスになってくれていれば嬉しいです。 菊地(Gt/Cho):もっとみんなに知ってもらいたいし、応援してもらえるバンドになりたいですね。ファンの方には今、古参でいられることが嬉しいと思ってもらえる、最近知ってくれた方には自慢にできるようなバンドになります。 佐藤(Dr/Cho):具体的にどこのステージに立ちたいとかっていう明確な目標はないんですけど、 磯も楓も言ってるように、名前を出したら知ってるって言ってもらえるような、そんな規模感のバンドになりたいなって思ってますね。ファンの方々に対しては聴いてくださったり、見てくださったりしてる方々がいるから、僕らもライブができてたり、楽曲を作れていたり、それをモチベーションにしていたりするので、今使ってくれてる時間だったり、聴いてくれてる方の心を無駄にしないように、これからその恩じゃないけど、楽曲やライブで返していけるようなバンドになりたいので、応援していてほしいです。”Vatelier.”自由な音楽のアトリエで創り上げる未来
2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14日から16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。
その出演者の中で、筆者が特に注目している次世代学生バンドが「Vatelier.」である。
「Fly Day」という楽曲がテレビ朝日系列YTS山形テレビ深夜版「Do~んな天気」の9月度テーマとして起用され、注目を集めているほか、YouTubeに公開されたMVは1万回再生を超えるなど、今後の活躍が期待される。
特に、バンド名の由来でもある「5人のアトリエ」が表現された自由な音楽スタイルが魅力的だ。
そんな彼らの楽曲制作に対する姿勢や活動の実態に迫るべく、アリマさん(Gt/Vo)、コトミさん(Key/Vo)、ヨタカさん(Gt)、シオウさん(Ba)、サラさん(Dr)の5人のメンバーにお話を伺うことができた。
SOUND SHOCKの出演を振り返って
__SOUND SHOCKを振り返り、現在の心境を教えてください。 アリマ(Gt/Vo): 今まで自分たちが出た中では1番大きい規模感で、入っているお客さんも人数が多かったので、緊張して気合いが入りましたね。 __他のライブやイベントと何か違った点はありましたか。 ヨタカ(Gt):僕は、大きなライブではあるけれども、いつもと違うってことはあまりなかったんですけど、他のメンバーはどうですか。 コトミ(Key/Vo):私もヨタカが言ってるように、 特にその他のイベントと全然違う感覚でいたわけではなく、普段からお金を払って見に来てくださってる方がいて、その分は意識を持ってやらければならないと思っているので、どのイベントにかける思いも一応同じではやっています。でも普段出ているようなイベントよりは大きいイベントに出ることができたので、ワクワク感であったり、どんな他のアーティストさんと出会えるのかなというのは結構楽しみでした。その分のモチベーションは結構高かったかなと思います。コピーバンドからオリジナルバンドへ
__結成の経緯が、軽音サークルだったようですが、どのような流れで結成に至ったのですか。 サラ(Dr):サークルでコピーバンドをするんですけど、King Gnuさんのコピーバンドをしたくて。私が、コトミとヨタカと、あと私のお兄ちゃんを誘って、そのメンバーだけ集まってて、じゃあキーボードボーカルもう1人どうしようってなって。そしたら先輩が「アリマさんやりたがってたよ」って言ってたので、その場でアリマさんに電話して。まずその5人で結成されました。 ヨタカ(Gt):付け足すなら、俺はやるとは言ってなかったよね。その時 (笑)。 サラ(Dr):名前書いて(笑)。 ヨタカ(Gt):いつの間にか名前書かれてたよね(笑)。 サラ(Dr):コピーバンドから徐々にオリジナルに移行していったという感じです。でも、途中でお兄ちゃんが個人の事情で脱退してしまって、そこにシオウくんが入ったという感じですね。 __結成されたのはいつ頃になるんですか。 コトミ(Key/Vo):オリジナルとして、完全にVatelier.としてやろうってなったのは多分1年半ぐらい前。 3月1日にVatelier.になった気がする。 __元々音楽性とかは皆さん一緒だったんですか。 ヨタカ(Gt):そうですね。 アリマ(Gt/Vo):みんなおしゃれ寄りの曲好きだよね。 コトミ(Key/Vo):あとシティポップとか好きな人も多い。 アリマ(Gt/Vo):バンドコンセプト的に「5人のアトリエ」ということで、それぞれの音楽感を1つのバンドに思い描いてこうかなっていう感じでつけた名前なので。みんなよくやってくれていると思います(笑)。 __元々コピーバンドをされていて、オリジナル曲を制作する方向性に変化したきっかけはありましたか。 アリマ(Gt/Vo):明確に路線が変わったのは、いつもサークルで出させてもらってるライブハウスが対外向けに行った、学生が出るコピーバンドイベントに出た時でしたね。そのライブハウスの店長の方が、「君たちはもっとオリジナルやってもいいと思うよ」みたいな感じで猛プッシュしてくれて。それで、始めてみたという感じでしたね。 コトミ(Key/Vo):で、その曲が意外と周りにも褒めてもらったりとかして、楽しいなみたいな感じで、ぬるっと始まって、どんどん曲も増えてきて今になりました。 __YouTubeやサブスクを見ると現在リリースされてるのは2曲でしたが、まだ他にも楽曲はあるのですか。 ヨタカ(Gt):いっぱいあります。 あるけど、なんもしてないねまだ。早くやろうね(笑)。 全員:(笑) コトミ(Key/Vo):オリジナル曲だけでライブはいっぱいしてて、もう完全オリジナルバンドとしてやってはいるんですけど。 曲枠をどんどん増やしていこうとはしてるんですけど、ちょっとボツになったり色々よくあるので(笑)。試行錯誤しながら進めてます。 YouTubeやサブスクで正式に公開されている楽曲は2曲だが、実際にお話を伺うと、お蔵入りしている楽曲を含めると10曲近くあることが分かった。今後どのようにリリースや公開が行われるのか、そしてどのような楽曲が秘められているのかは、注目すべきだ。楽曲づくりのインスピレーション
Vatelier.では、アリマさん(Gt/Vo)とコトミさん(Key/Vo)が中心となってデモを作成し、ヨタカさん(Gt)がそのデモをアレンジしてメンバーに提案するというプロセスで楽曲制作を行っているようだ。それぞれがどのように楽曲制作に取り組んでいるのか、詳しく伺ってみた。 ヨタカ(Gt):楽曲は基本的にコトミとかアリマが持ってきたものを、僕が全部アレンジして1度みんなにまた返して、またそこからどうですかっていう風に制作を進めています。 アリマの曲は基本的に音とかも作り込んで持ってきてくれるんで、あとはそれをバンドサウンドに。僕が全部ギターを入れたりとかしながら、細かいところを修正して直していきますね。コトミの方が弾き語りで送ってくれるので、その音源にキーボードを入れたりとか、ドラム入れたり、ベース弾いたり、ギター弾いたりみたいな感じで、自分が手広くやったのを最後にみんなに返す形で進めています。影響を受けたアーティスト
まずは楽曲制作の中心となっているメンバー3人に、楽曲制作においてインスピレーションを受けているアーティストについて掘り下げてみた。 コトミ(Key/Vo):1番好きなアーティストが、東京事変さんですかね。ジャズ要素が入ってる音楽が結構好きで、ピアノの方がジャズ専攻だったというところからマカロニえんぴつさんも好きです。あとはSIRUPさんが好きで、ラップとちょっとジャズっぽさ、R&Bっぽさもあるんですけど、その方の影響は結構受けてると思います。 アリマ(Gt/Vo):僕はKing Gnuさんもそうなんですけど、元々B'zさんがめちゃめちゃ好きで。なので多分、ロックのゴリゴリな要素も抜けずに作っちゃってるみたいな感じですね。 その中でVatelier.は、今でいうとお洒落な路線に行き始めたから、できるだけ自分の感性もそっちに寄せないとなと思ってて。 ヨタカ(Gt):僕はメンバーの中だと割と幅広く聴いていて、日本のアーティストだとヨルシカさん、米津さん、BUMP OF THE CHICKENさんだったりとか。あと、自分が素養を深めなきゃなと思うところがあって、ジャンルで色々聴いたりとかしてます。例えば、ネオソウルだとソエジマトシキさんとか、有賀教平さんのようなギターリストの演奏を参考にしてたりとか。メタルだとSlipknotさんがすごく好きなので、たくさん聴いたりとか。あと最近は海外だとPOLIPHIAさんとかすごい好きなんで、その辺りも参考にしながら曲に入れたいなと思って、いろんなアーティストからつまみ食いみたいな感じで聴いてますね。 アレンジってリファレンス曲があるかないかで結構違うなって思ってて。偉大なアーティストがいろんな良いものを残してくれているのを活用しない手はないよなっていう感じで、毎度毎度送られてくるデモをアレンジしながら頭を抱えてますね。バンドのリズム隊の視点
リズム隊のメンバーであるサラさん(Dr)とシオウさん(Ba)にも、それぞれの楽曲制作に対するアプローチや影響を伺った。 サラ(Dr):結構作り込まれた音源を送ってくれると、大体それに寄った感じのドラムを作る感じになるんですけど、私自身はそれこそコピーしてたKing Gnuさんとか、あと普通に好きなバンドなんですけど、Co shu Nieさんが好きです。あとはめちゃめちゃUNISON SQUARE GARDENさんをコピーしました。 自分の技術を上達させることはできたのかなと思っています。とにかく手数が多すぎて、次から次へと変則的っていうか、特殊なリズムがたくさん出てくるので、手数を吸収することができたのかなと思っています。 シオウ(Ba):僕は、アレンジして送ってくれた音源を比較的そのまま弾くことが多いんですけど、 その送ってくれたものに、この部分はこうした方が楽しいなとか、弾いてて気持ちいいなっていうフレーズに変えることが多いです。元々コピーしてたKing Gnuさんのフレーズを、ちょっと入れたこともありますし。あとシティポップが昔からずっと好きで、リズムの乗り方とか、スライドの音とかがすごい好きなんですけど、それを無意識で入れたりしています。五弦ベースを買ったんで、もっと低い音を入れてみたりとか、スライドのドゥーンって音を結構長めに尺取ったりっていうのは、影響受けてるかなっていうのは思いますね。最初の曲作りとアレンジ
バンドが最初に楽曲を作り始めたときの話や、アレンジの流れについても伺った。 アリマ(Gt/Vo):Vatelier.の1番最初の曲は、僕が元々作ってあった曲を何曲かピックアップして、この中からどれを1番最初にやりたいかをみんなに聞いて決まったのをやりました。最初の曲に関してはそんなにアレンジをしてないね。 アレンジが目立つのはコトミが持ってくる曲ですね、弾き語りベースでデモを送ってくれるので。それをどういう風に味付けしようかなっていう感じだよね。それでうまくいったのが「Fly Day」とかになるんじゃない。 ヨタカ(Gt):そうだね。「Fly Day」とか「Star」、あとは音源上での「黒猫」とかね。5人で彩る「Fly Day」
__楽曲「Fly Day」、注目されたと思いますが、どのように制作を行ったのですか。 コトミ(Key/Vo):私が弾き語りを少しやってた時期があって、個人的に曲を作るのが中学生の時から好きだったんです。それで、高校生の時に「Fly Day」の大枠になるような、歌詞や大体のメロディーをかいていて。Vatelier.を結成して、どういう音楽をやっていくのかはまだ定まってない段階だったので、「こういうコンセプトにしよう」とかではなく思いつきで作ったところはあったんですけど、メロディーと歌詞を結構変えて、リニューアルみたいな感じでできたのが「Fly Day」でした。 __作詞作曲の際、こだわりはありましたか。 コトミ(Key/Vo):私は思いつきというか、降ってきたもので作っちゃいますね。あとは韻を踏んだり、リズム感、テンポがよくきこえるように作りました。作詞に関しては、どこにどの言葉を入れようかを考えるのが結構好きで、「こういう意味の単語を入れたい」というところから、わからない言葉も調べたりして、パチっとパズルみたいにあてはめて作るのが楽しいと感じますね。 __アレンジの面でも、こだわった部分はありますか。 ヨタカ(Gt):「Fly Day」の時はベースが違ったのかな、今と。 シオウ(Ba):そうですね。当時アレンジに参加はしてないですけど、ライブ中で演奏する時は若干変えています。ベースラインはいじってないんですけど、少しゴーストノートを増やしてテンポ良くしてみたりとか。あとこれは他の曲でもそうなんですけど、ドラムに合わせるのは結構意識してやってるかな。サビのリズムの取り方もラスサビと1番のサビで変えてみたりとかは少ししてますね。 ヨタカ(Gt):他のメンバーは、最初の出来た当時の話になるのかな。Fly Dayのアレンジは今と形態がちょっと違ってて。その当時はまだ僕もアレンジとか作曲とか全然知識もなかったんで、持ってきた弾き語りの音源を聞きながら、みんなで1つずつ考えながら作ってったよね、その場で。 アリマ(Gt/Vo):3、4時間くらい一気に練習とって、ずっと缶詰めでしたね。 ヨタカ(Gt):やったやってた。 6時間取って、一生懸命詰めた時期もあった。結構コスパの悪いことやってたけど、それも大切な時期だったと思うな、振り返ると。そのコスパの悪さというか、がむしゃらさがなんか良さに出てるなと思うな。 アリマ(Gt/Vo):多分誰かが作ってきたやつじゃ、あのグルーヴ感にはなんなかったよね。みんなで生で、実際に一緒に入って作り上げたから、ゆったりとした感じに仕上がったんじゃないかなと思ってます。 __タイアップもされたということで反響もあったと思いますが、どういう心境でしたか。 アリマ(Gt/Vo):地上波映るんだって思ったね。 ヨタカ(Gt):メンバーの誰にも、知り合いにも言ってなかったんだけど、通ってる大学で実習に行かなきゃいけないんですよ。その実習は、1人じゃなく複数人で行く形になってて。一緒に行った同期の1人に山形出身の人がいて、タイアップしてるテレビを知ってたんですよね。それで番組のことを聞いたら、山形ならみんな知ってるお天気番組って聞いて。自分が山形に行ったことがないからどういう番組なんだろうと思っていたら、どうやら向こうも知っているみたいで、すごい盛り上がったっていう話があったんだよ。 サラ(Dr):バイト先の山形県出身の人とか、知り合いの山形県出身の人、みんな知ってて。 アリマ(Gt/Vo):YouTubeのコメント欄にも、テレビから来ましたっていうコメントがあったね、1個。 ヨタカ(Gt):ただ1つ東京から見れないってことが残念だったよね。どんな風に流れてるのか(笑)。 全員:(笑) 「Fly Day」の制作にあたり、メンバー全員が時間をかけて作り込んだエピソードや、ライブでの演奏を通じてさらに磨きをかけている様子から、まさに「5人のアトリエ」というコンセプトが色濃く表れている楽曲であることが伝わってきた。 YouTube - Vatelier. - Fly Day: https://youtu.be/HzfKXcu25tY?si=x57tx8U7bB1bq9NP活動を通して生まれた想い
__楽曲制作やライブの裏側で起きた印象に残った出来事はありますか。 コトミ(Key/Vo):私はVatelier.として曲を作っていく上で思ったことがあるんですけど、 最初はオリジナル曲をどういう方向性・ジャンルで作ろうか全然定まっていなくて難しかったんですけど、やっていくうちにVatelier.の色が出始めて来たような感じがしていて。今はお洒落なポップスっていうイメージで作るのと、個人的に「1つの物語を読んでるような感覚」になれるような曲を作っていきたいなと思っています。1つの曲に世界観がしっかりあって、ライブで聴いていても飽きないというか。どの曲も世界観があって良いと思える曲が作れたらいいなと今思っているので、このような方向性が見えてきたのは、私の中で印象的な出来事だと思います。 ヨタカ(Gt):喫煙所界隈。 『シュガースプレー』と『アローン』がいたりとか。ライブの裏側というか、共演者で仲良くなる機会は僕としては印象に残ることが多くて。自主企画をした時に来てくれた『Redrums』と『ココ』は、昔から国分寺の箱で一緒にやってる中で知り合ったりとか。バンドの横の繋がりというか、今でも関わり深い対バンの人との出会いっていうのはやっぱり印象に残るね。 アリマ(Gt/Vo):僕が1番印象に残ってるのはライブなんですけど、少し前に初の自主企画のライブをやらせてもらって。その時に30人くらい、それ以上は呼べたのかな、お客さん。結構狭いパンパンな中で、舞台の上から1人1人の顔を見ている時に感慨深さはありましたね。 なんかすごい気持ちよかった、あの景色は。 ヨタカ(Gt):それと同時に、いろんな人に支えられてたんだなっていうのも俺はあの時感じたよ。 アリマ(Gt/Vo):そう、みんな応援してくれてんだねみたいな。ありがとうっていう思いを込めて、めちゃめちゃ弾き倒した記憶があります。 サラ(Dr):私はライブ1回1回の、バンドの横の繋がりもそうだし、お客さん、あとライブハウスの方との繋がりってすごい大事だと思ってて。そこから自主企画のライブに呼ぶことができたり、違うバンドを見に来てたお客さんが私たちのバンドにも来てくれたり。あとはライブハウスの方にライブ誘っていただいたりっていうことが多くて。1つ1つの繋がりは大切なんだなって思ってます。 シオウ(Ba):バンド同士の繋がりで仲良くなって、他のイベントで一緒になった時に喋ったりというのは嬉しいなっていう風に思うんですけど。それ以上に感じるのは、僕は途中から入ったメンバーで、かつ周りのメンバーも全員サークルの先輩なので、最初はちょっと不安はあったんですけど、何度も一緒にライブを重ねるごとに距離が縮まったなと感じるのがすごい嬉しいです。もう今ほぼ友達みたいな感じで、先輩なんですけど接してる時もあるんで、毎回嬉しいなと感じている部分ではありますね。 アリマ(Gt/Vo):最初から友達だよ(笑)。可愛いやつで。 全員:(笑) それぞれのお話を伺う中で、Vatelier.としての音楽活動の方向性が、活動を通して徐々に形作られていく様子が見えてきた。また、共演者やライブハウス、そしてお客さんとのつながりを大切にする姿勢も強く感じられた。さらに、メンバー間の温かい関係性や仲の良さがインタビュー中のやり取りから自然と伝わり、Vatelier.の音楽には、こうした人とのつながりや信頼感が深く反映されているのかもしれない。ファンの方へのメッセージ
__最後に、ファンの方々やこれから聴いてくださる方々へメッセージはありますか。 シオウ(Ba):バンドとしても個人としても、これからパワーアップして、いい曲、いいベースラインを作れるようになろうと思うので、少しでもいいなと思ったらいっぱい聴いて、いっぱい応援してほしいなっていう風に思います。 サラ(Dr):日常に寄り添える曲を作りたいので、日常でいっぱい聞いてほしいです。 ヨタカ(Gt):星の数ほどあるアーティストの中から、もし自分たちの動画や楽曲を見つけてくれたなら、まずはそれにありがとうということと、あとはよかったらライブを見に来てねというところですかね。本当にありがとうございます。 アリマ(Gt/Vo):僕から逆に聞いてみたいですね、ちゃんと僕らの音楽ができてるか。5人のアトリエってちゃんと伝わってるかな、みたいな。ありとあらゆる曲をやりたいんだけど飽きずについてこれてるかな、みたいな部分は気になるところですね。飽きさせないバンドだと思うんで。多種多様な曲を作っていきたいと思ってます。 コトミ(Key/Vo):私自身、いかにCD音源を超えるかみたいなところで生演奏に最近こだわりを持ってやっていて。自分の実力を上げていけるように試行錯誤してライブに挑んでいるので、その成長も応援してくれる方々は楽しめると思っています。これからに期待というか、ライブを見に来てたり、楽曲をたくさん聴いてくれたら嬉しいなと思います。私自身も頑張ります。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/JAPAN JAM 2024オープニングアクト出演を果たした「ポルトギース」の魅力に迫る
2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14~16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。
その出演者の中で、筆者が特に注目する次世代学生バンドが「ポルトギース」だ。
2024年5月に「JAPAN JAM」のオープニングアクトとして出演したことでも注目を集め、彼らの楽曲は、聴く人に情景を浮かばせるリアリティのある歌詞、思わず口ずさみたくなる耳に残るメロディ、そして心地よいリズム感が特徴だ。
今回は、その魅力に迫るべく、メンバーの中から中村隆太郎さん(Vo/Gt)と竹澤地洋さん(Ba)にインタビューを行い、楽曲制作へのこだわりやライブにかける熱意についてお話を伺うことができた。
フェス出演を振り返って
__TOKYO CALLINGやSOUND SHOCKを振り返り、現在の心境を教えてください。 竹澤(Ba):両方ともそうなんですけれども、まずお客さんとして見に来てくれる方々の中で、”ポルトギース”という名前の認知度が、徐々に上がってきたなっていう印象がありました。それはすごく、サーキットイベントやフェスに出る上での1つのやりがいというか、目に見えてわかる進捗度みたいな感じには捉えてますね。知ってくれる人が増えていくのがわかるのは、結構嬉しいし、やってて面白いところだなっていう風には思います。 __どういった時に自分たちのお客さんが増えたと感じますか。 竹澤(Ba):シンプルに1つはまずライブハウスにお客さんがいっぱい入ってるっていうのと、その後に物販のスペースに多くのお客さんが来てくれたりと、そういうところですかね。 中村(Vo/Gt):お客さんの乗り方もちょっとずつ、僕らの音楽の乗り方みたいなものにちょっと変わってきてるというか。今までは、曲を知らないだろうなっていう手の挙げ方だったりしたんですけど、最近本当ちょっとずつですけど、“ポルトギース”を知ってるんじゃないかっていう、手の挙げ方だったりするので、それはテンションが上がる部分ではあります。 __今年5月のJAPAN JAMに出演した時の心境はどうでしたか。 中村(Vo/Gt):やっぱり単純に注目度というか、知ってくれる人が増えたなっていう、JAPAN JAMというイベントの大きさを感じましたね。 竹澤(Ba):もう本当に僕はもう、ただただひたすらに楽しかったっていう思い出しかなくて、中学生みたいな感想になっちゃうんですけど(笑)。 中村(Vo/Gt):すごく楽しかった(笑)。 竹澤(Ba):え、そう。すごく楽しかった。でも結局それに尽きない? あんなでかいステージでやる機会がないっていうのはもちろんなんですけど。あの日の天気とかのコンディションもすごく良くて、自分たちの想像よりもお客さんが見てくれて、なんかもうひたすらテンションがぶち上がってたなっていう。終わった後もしばらくはもう余韻ビタビタだったっていう感じ。 __SOUND SHOCKやTOKYO CALLINGなどのサーキットフェスと違った点はありましたか。 中村(Vo/Gt):オープニングアクト、前座の枠だったので、いい意味ですごい気持ちを楽にできたというか。プレッシャーは感じないで、楽しむ全振りでできたなという感じです。 SOUND SHOCKやTOKYO CALLINGみたいなサーキットフェスは良くも悪くも、いつもよりプレッシャーがあるというか、ちゃんとここでお客さんとしてちゃんと取り込まなきゃなみたいな独特の緊張感があるので、それらと比べると、本当に楽しかったという気持ちが強く出た感じです。バンド結成のきっかけ
__バンドを結成したきっかけやメンバーとの出会いは何ですか。 中村(Vo/Gt):メンバー4人いるんですけど、僕とギターの稲垣がサークルの後輩・先輩という関係、僕が後輩で、彼が2個上の先輩で。そのバンドがコピーバンドサークルで、もっと自分たちらしく表現できる場所を見つけたいですよねっていう話をして。 いわゆる外バンっていう形で、僕が高校の同期だった竹澤を呼んで、 稲垣がその前の高校の同期だったドラムの松田を呼んで、なんとなく結成されてったっていうか。 メンバー全員それぞれコピーバンドサークル出身。 __コピーバンドから、本格的にオリジナルをしていきたいと思ったきっかけは何でしたか。 中村(Vo/Gt):僕と今ベースの竹澤が、中3から高1ぐらいにかけて、2年ぐらいオリジナルでバンドをやってたんです。同じ高校だったんですが、それぞれ別々の大学に進んだので、一旦、オリジナルはお預けだよねってなってて。それぞれでサークルでコピーバンドをやってたんですけど、色々やっていく中で、コピーバンドの楽しさもありつつ、やっぱりオリジナルをやりたいなと、僕も竹澤も思っていて。そこで、僕がギターの稲垣さんを誘ったきっかけとしては、大学のコピーバンドサークルの打ち上げの時に、ちょっと酔っ払った勢いで誘ってみた。なんとか快諾してもらって。 竹澤(Ba):学生時代に僕と隆太郎(中村)が、高校時代にやってたバンドっていうのがコロナともろ被りしちゃってて。で、なかなか活動ができなかったんですよ。 そのモヤモヤみたいなのをずっと抱えたまま大学に各々行ってたので、なんかそれがこう、大学2年ぐらいの時に両方爆発して。それで、コピーバンドサークルからオリジナルを作るようになったって感じですかね。聴く人々に寄り添った楽曲づくり
__9月9日にリリースされた「アウトロ」という楽曲について、注目してほしいポイントはありますか。 中村(Vo/Gt):1つは歌詞ですかね。この曲は、1つの楽曲が恋人関係の2人を繋いでいるというような設定で、主人公が相手のことと、その思い出のこもった楽曲を重ねてしまうといったような曲になっています。あとは、「イントロを飛ばして流れたサビは」という部分から早口になっているところがあるんですが、どうしてもあの箇所は入れたくて、1番のBメロであったり、2番のそのAメロの前のところは結構工夫した部分です。 1つの楽曲とその恋人のことを重ねてしまっている情景を、あの箇所で浮かぶようにしたいなと考えた部分です。 YouTube - ポルトギース - アウトロ (Official Music Video): https://youtu.be/6o790p1GZGs?si=_Mzec4fjcJ4g5CvP __楽曲制作はどのような流れで制作していますか。 中村(Vo/Gt):僕がAメロとBメロとサビと、あとCメロをアコギの弾き語りで基本は作ってて、それを送って、その組み合わせ、構成部分はみんなでスタジオで話し合って制作しています。たまに僕が”GarageBand”っていう作曲ソフトで結構ドラムまでかっちり入れて、デモで送ることもたまにあります。前はそうやってたんですけど、それだとドラムは僕が作ったデモに結構縛られちゃうので、最初はシンプルに弾き語りだけで持っていって、ストロークとかもすごくシンプルにして、その決めの部分だったり、構成はなるべくスタジオでみんなの意見取り入れながら作っています。 __影響を受けているアーティストや尊敬してるアーティストはいますか。 中村(Vo/Gt):My Hair is Badの椎木知仁さんと、クリープハイプの尾崎世界観さん、オレンジスパイ二クラブの鈴木さん兄弟ですかね。サウンドもそうですけど、歌詞が特にすごく憧れていて。わかりやすく言えることをちょっとわかりづらく書くというか、解釈の余地の幅が広いのがすごい心地よくて。歌詞を見た時に、「一瞬これどういう意味なんだろう」ってなるんだけど、なんとなく自分の中でこれが答えじゃないかなみたいなのを落とし込める限界のわかりづらさというか、何もわかんないまま終わらない感じがすごく好きです。歌詞を書かせてもらう中で、なるべくどこまでわかりづらく書けるか、でもわかるぐらいがいいしな、みたいな。考える上で結構参考にはしてます。 竹澤(Ba):indigo la Endの川谷絵音さん、あとはLaura day romanceの鈴木迅さんですかね。メンバー4人集まって曲を作ってる時とかに、僕が出すアイディアには、多少は反映されてるんだと思います。 中村(Vo/Gt):我々の曲で「23」っていう曲があるんですけど、その曲の1番のサビが終わった後に、4拍だったのが3拍になるんだっけ。リズムが変わって、また元の4拍に戻るんですけど、それは竹澤が言い出しっぺというか、何かに憧れて付け足した部分なんじゃないかな。 竹澤(Ba):そうですね。なんかそういうのが好きって、ざっくり言っちゃうと抽象度が高いんですけど、急ハンドル切るみたいなのは結構好きだったりしますね。 中村(Vo/Gt):スタジオで、この部分で多分こういう風にやりたいって言うんだろうなっていうのは、もうなんか感じますね。ボツになることもあれば、そのまま採用ってなることも。 それぞれの誰がどんな音楽が好きなのかっていうのがなんとなくわかっている感じがあるので。曲作る時でも、多分この人こういう風にやりたいんだろうなっていうのはお互い感じながらやっていますね。 __状況が思い浮かびやすい歌詞が印象的ですが、改めて作詞作曲の際に意識していることはありますか。 中村(Vo/Gt):作詞で言うと、先ほど申し上げたわかりにくさも持たせつつわかりやすく、あとはおっしゃってもらえたような、情景が浮かぶように意識しています。例えば「アウトロ」という楽曲の『渋谷の3月』という歌詞の部分だったら、3月に渋谷に行ったことがない人でも、こういう気持ちで渋谷の3月を歩いてるんじゃないかと、ないはずの記憶が蘇るじゃないですけど。また、基本的には僕自身の実体験を元に書くことが多くて、すごくリアルな歌詞を書いているつもりです。 作曲については、キャッチーで口ずさんでもらえるようにはしたいと思っています。でもありきたりとキャッチーってすごく紙一重というか。 ありきたりにならないようにメロディや歌い方にちょっとした癖を意識しています。 竹澤(Ba):中村以外のメンバーが携わってるのが編曲面になっていて、それこそ「23」のリズム部分や「アウトロ」の早口の部分もそのイメージになるんですが、急にガラっと転調してみたり、冗長になりすぎないように、そのまま流されて曲に流れていきそうなところを、一旦意識をもう1回向けさせるみたいなタイミングをしっかり作る部分は意識しています。また、ベースっていうと注目されづらいパートではあるんですけど、曲の乗り方を出す上では1番大事だと思っているので、「こういうリズムの取り方を聴いてる人にしてほしいな」という部分は常々意識してて、それに合わせた乗れるようなベースラインを作るのを意識しています。 中村(Vo/Gt):ベースとドラムは、よく乗り方についてスタジオでずっと話してて、ギターはもうやることないみたいな時間が結構あります。 乗り方みたいな部分を気にしていますね、2人は。ライブ裏側でのストイックな空気感
__ライブの裏側での印象に残った出来事はありますか。 中村(Vo/Gt):ギターの稲垣以外は、前の出番のバンドを見れないんですよ。やっぱり緊張しちゃうので。稲垣以外の3人は、出番が近くなると楽屋にずっと籠ってるんですけど、稲垣だけずっと最後の最後のギリギリまで前の出番の人を見て、戻ってきてやるみたいなスタイルですね。あとは、背中叩いて気合いを入れるっていうのはしてて、あれはやるとやっぱりなんか意外にも気合が入るね。 竹澤(Ba):あの瞬間が1番楽しいかもしれない(笑)。 中村(Vo/Gt):そうだったんだ(笑)。知らなかった。そんな楽しんでるように見えなかったけど(笑)。 竹澤(Ba):楽しいかも。 なんですかね、ライブの流れとかMCを試行錯誤してて、ここでどういう雰囲気で喋るのかとか、ここでどういう曲の流れを作るのかみたいなことは、毎回失敗に失敗に失敗を重ねて、まだ失敗を重ねてるみたいな段階で、ここはもう毎回ライブ来るたびに多分違ったものが見れるみたいな感じですね。 中村(Vo/Gt):僕が基本的にMCを喋ることが多いんですけど、直前までアドレナリンが楽屋の時は出てるから、「大丈夫、俺はいける」とか言っといて、いざその場面になると、全部飛んじゃってそのまま入るみたいなことがあるので、ライブのクオリティという意味では特に試行錯誤が必要だなと思う。あとは、うちのドラムの松田がBPM、テンポ感をすごい気にしてくれる。JAPAN JAMの前日の夜だったかな。夜から当日の入りの直前までずっとイヤホンでBPM聞きながら、楽屋の本当出番の直前まで聞いてたってことはありましたね。 竹澤(Ba):確かに1日中聞いてたよね。 中村(Vo/Gt):ずっと音漏れでピッピッピッピって。こっちが頭おかしくなる(笑)っていうようなことがありましたね。 __結構、真剣に直前まで向き合ってるイメージですか。 中村(Vo/Gt):今日いいライブができないかもしれないとあわあわしてる時ほど、いいライブができて、今日なんか行ける気がすると言ってる時ほど、すごいミスをかましたりしちゃうので。毎回真面目に向き合ってはいるつもりなんですけど、その時のマインドによってパフォーマンスに変化が出ちゃうのは良くないなと感じていますね。 竹澤(Ba):そういうことを考えてるってことは、ストイックではあるんですかね。この空気感ってメンバーみんな一緒なんで、ライブ前はちゃらんぽらんな雰囲気にはならないね。 中村(Vo/Gt):ならないですね。そんな直前までワイワイするタイプではなくて、SEが流れ始めたらそれぞれ結構静かめになって、背中だけとか叩くというような感じ。居場所となるバンド活動
__活動を通して大変だと思うこと、苦労していることはありますか。 中村(Vo/Gt):それぞれが学生、1人は大学院の1年生なんですけど(稲垣)、レポートだったり研究とか色々、スケジュール感が難しい中では、時間の作り方はやっぱり難しい。 竹澤(Ba):大学の学部も違う4人の学生が一斉に時間を作るっていうのが意外と難しくなってきましたね。楽曲をコンスタントに作って更新して、ライブもコンスタントにこなしていかなきゃいけない。このサイクルはもう崩しちゃいけないという風には思ってるんで。そのために普段、週1くらいのペースで少なくとも集まるようにしてて、そこで曲作ったり練習したりみたいな。今年から1人社会人のメンバーもいる関係で、余計4人の時間を合わせるっていうのが難しくなってきたっていう印象ですね。 中村(Vo/Gt):あとはそうですね。学生の大きな1番の強みって、友達をたくさん呼べるみたいなのがあると思うんですけど、僕ら結構みんな友達少ないので、そこは全然活かせてねえなと(笑)。 でも逆に、学生だからこそサークル等を通していろんな人と関わったり、いろんなことを経験できるので、曲を作るという意味では、恋愛もそうですけど、それ以外にも様々なきっかけがあると感じるので、そこはまだまだ活かしていきたいと思う。 __今後目指していきたい姿はありますか。 竹澤(Ba):時間とかスケジュール感とか、そういうのが許す限りは活動を続けたいなと思ってて。 明確に、「ここまで行きたい」というのは正直そんな大きくは持ってないんですけど、本当に登れるとこまで登りたいみたいな感覚はありますね。もう記録伸ばしチャレンジみたいな感覚でずっとバンド活動やってます。 中村(Vo/Gt):遊びでやってるっていう感覚は、もう個人的にはなくなって超えたかなと思ってて。いろんな方が支えてくれたり関わってくれたりする以上は、本気で向き合うべきだし、向き合っているんですけれども。これを本気で続けながら、それぞれがやらなきゃいけないことがあるのであれば、それも本気でやるっていう。 メンバーのバンド以外のこともちゃんと支えられるような基盤。なるべく長く、死ぬまでぐらいの感じで続けて、それぞれ4人にとってまずはバンドが居場所になる。居場所になるための手段として、いろんな他の研究であるとか就職とかがあるのであれば、そこは認め合いながらみたいな。音楽を通じたファンの方々とのつながり
__今応援してくれているファンの方々やこれから聴いてくれる方々へのメッセージはありますか。 竹澤(Ba):1番の目的でもあるというか、聴いてくださる方々は届けたい対象になるので、自己満で作ってるっていうよりかは曲を聴いて、良いなって思っていただきたくてずっと活動しているので、コメントとかくださったり、いいねしてくださったり、反応をいただけることは本当に原動力そのものみたいなところがあります。メンバー間で結構共有したりする時もあって、それがすごくモチベーションに繋がっています。 中村(Vo/Gt):ここまで続けてきた、かつこれからも続けていく原動力は、やっぱりまず聞いてくれてる方がいるっていうのが大前提なので、そこは本当にいつもありがとうございます。僕らの1つ1つにいいねをしてくれたりとか、応援のコメントをしてくれることも、すごく励みになっておりますので、今後とも、僕たちもちゃんと応援してくれる方々に寄り添えるようにしたいです。俺たちも支えられてますし、みんなの支えになれるように頑張ります。インタビューを通して
今回のインタビューを通じて、彼らの楽曲制作における細部へのこだわりや、裏側でのエピソードから彼らのストイックな一面も知ることができた。現役大学生ならではの背景が生み出す、心を揺さぶる楽曲をぜひ一度聴いてほしい。 【楽曲情報】各種サブスクからリリース中 ・4th Single『アウトロ』 ・3rd Single『花火と煙』 ・2nd Single『相合傘』 ・1st EP『ときめくstay with me』 【ライブ情報】 ・10/22 (火) : U's MUSIC、U-NEXT主催 「MUSIC NEXUS Live 導 - SHIRUBE」 - TOKIO TOKYO渋谷 ・11/2 (土) : KNOCKOUT FES 2024 autumn - 下北沢 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/特集:AATA、フルアルバム「be in bloom」に込めた10年間の想いとは
今年4月にフルアルバム「be in bloom」をリリースし、今注目を集めている女性シンガーソングライター「AATA(あーた)」に、インタビューの機会を頂くことができた。
本特集記事では、甘く軽やかな歌声で多くのポップソングを生み出している彼女だが、そのアーティスト活動に対する想いや、一人の人間としての素顔について、インタビュー内容をお届けしたい。