No.MENというバンドの核心——渋さとグルーヴの正体に迫る
平均年齢はおよそ17歳。
Gt&Vo:Cocona(ココナ/19歳)、Ba:Uri(ウリ/19歳)、Key:Rima(リマ/18歳)、Dr:Nina(ニーナ/13歳)、の4人で構成されたガールズバンド、No.MEN(ノーメン)。
今回はそのうち、Coconaさん、Uriさん、Ninaさんの3名にご登場いただき、バンドの成り立ちや音楽観、人間関係、そしてこれからの展望についてじっくりお話を伺った。
キュートなルックスに“可愛い”を何重にもまとったNo.MEN(ノーメン)が奏でるのは、見た目の印象を裏切るような、ブラックミュージックをルーツに持つ本格的なグルーヴ。
軽音部で出会い、Gt&Vo:Cocona(ココナ)とBa:Uri(ウリ)を中心に結成されたこのバンドは、MVやライブでじわじわと注目を集めながら、着実に進化を続けている。
本特集では、彼女たちの音楽的ルーツから、ステージ裏での素顔、そしてこれから描く未来まで——No.MENというバンドの“中身”にじっくりと迫っていく。
今や独自のサウンドで注目を集めるNo.MEN。最初にバンド結成の経緯を伺ってみた。
—— Cocona
「最初は本当に、身内バンドだったんです(笑)」
きっかけは、高校の軽音部で出会ったCocona(ココナ)とUri(ウリ)。もともと音楽の趣味が似ていた2人だったとのことだ。
—— Uri
その頃はHelsinki Lambda Clubとか、ゲスの極み乙女。あとVULFPECKとかが好きで。お互いに好きなアーティストのライブに行って、だんだん同じ曲を聴くようになっていった感じです。
高校2年生でCoconaが作曲、Uriが作詞を担当し、初めてのオリジナル曲「setelan」が完成。
当時、MVを作りたいという想いから、カラオケ店で自作MVを撮影し、動画をSNSに投稿したところ、予想以上の反響を呼び、ライブ出演のオファーが舞い込んだ。
—— Cocona
でもその時、バンドは2人しかいなくて。
それで、ドラムは私の妹Nina(ニーナ)と、キーボードは幼なじみのRima(リマ)を誘って、本当に“身内だけ”でバンドを組んだんです。
こうしてNo.MENの初ライブが決まった。披露したのは、オリジナル曲とインストを含むわずか2曲だったが初舞台は忘れられないものになった。
—— Uri
メンバーのうち3人がゴスペル育ちで。
演奏したゴスペル曲がオリジナルみたいに受け取られて、すごく反応が良かったんです。
その勢いのまま、名古屋の学生バンドシーンに飛び込んでいったとのことだが、当時は“浮いていた”と2人は振り返った。
—— Cocona
他のバンドは男の子ばかりで、メロコアやラウド系。
うちらは女子だし音楽性も全然違うし、なんか端っこにポツンといる感じでした(笑)
—— Uri
ライブでも、周りに引っ張られてちょっとロックっぽくなっちゃったりしてました。
でも、変わったよね。
今は周りにも似たような空気感のバンドが増えてきて、やりやすくなってきました。
どこの会場でも“違和感”を抱えながら、しかし自分たちらしさを手放さなかった4人。そんな原点が、今のNo.MENの芯の強さにつながっているのかもしれない。
No.MENの音楽を聴いていると、楽曲ごとに異なる“言葉の表情”があることに気づく。
時に抽象的で謎めいていて、時に驚くほどストレートに心情を射抜く。
そんな唯一無二の歌詞は、楽曲ごとにメンバーそれぞれのスタイルで紡がれている。
—— Uri
高校生の頃って、“難しい歌詞=かっこいい”って思ってたんです。意味が読み取りづらいけれど、響きがかっこいいみたいな。
意味はちゃんと考えて書いてたんですけど、今思えばちょっと背伸びしてたなって(笑)。
でもそれが、当時の自分の“ありのまま”だったから、今でも残しておきたいんです。
歌詞の中には、当時の価値観や憧れがそのまま閉じ込められており、難解な言葉選びも、成長とともに変化していく視点も、そのまま“等身大の自分たち”として表現しているのだ。
一方で「GAME」という楽曲では、まったく異なるアプローチも試みていた。
—— Cocona
Uriが受験中だったから、残りの3人でリレー方式で作詞したんです。1行ずつ書いて次に回していく、みたいな。3枚の紙を使って組み合わせて、偶然性も楽しみながら歌詞を作りました。
さらに、「Unlovable」やYouTubeに公開されている「surrender」などの楽曲では、Coconaが歌詞を担当している。
—— Cocona
自分の中で“これだけは伝えたい”って思う言葉は、たとえダサくても入れたいんです。どう脚色しても、軸は曲げたくない。
そこをどうかっこよく伝えるかが作詞や作曲の面白さかなって。歌うのは自分なので、“自分が歌いたい言葉”であることを大事にしてます。
No.MENの歌詞が心を打つのは、技巧だけではなく“真っ直ぐな気持ち”が込められており、楽曲が、それぞれのタイミングでの“自分たちらしさ”を映しているために感じられた。
——Cocona
本当に、曲ごとにバラバラ。でもそれを楽しんでもらえたら嬉しいです。
バンドにとって、音楽性と同じくらい大切なのが“人間関係”だ。
No.MENの4人は、それぞれ個性も年齢も違うが、どこか本当の家族のような温もりを感じさせる。
—— Uri
喧嘩っていう喧嘩は一度もないです。でも、音楽のことではちゃんと意見を言い合えますね。
リズムの捉え方とか、細かい部分で『私はこう思う』『こっちのやり方の方がいいんじゃない?』って。つい先週もそんなやりとりがありました。
それぞれの役割や性格も、自然にバンドの中でバランスを取っているようだ
—— Uri
Ninaは最年少だけど、一番大人。機嫌悪くなるところ見たことないし、練習場所の片付けまでちゃんとしてくれる。
すごく優しくて、メンバーの“中和係”みたいな存在ですね。
—— Cocona
Uriは完全にムードメーカー。毎回の練習で“オリジナルダンス”を披露してくれて、いつも場を明るくしてくれます。
—— Cocona
キーボードのRimaは感情が読みにくいというか、たぶん何も考えてない(笑)。
でも、それがそのままで面白いし、気を遣わないところが逆に信頼できるんです。
そしてこの関係性は、ステージの上でも裏でも変わらない。
—— Uri
ファンの人にも、その時の私たちをそのまま受け取ってほしいなと思ってます。作り込んでないからこそ、感じてもらえるものがあると思うんです。
YouTubeに上がっているVlogも、まさにそんな“ありのまま”の延長線。
No.MENは、音楽的なスキルや才能だけじゃなく、「お互いを信頼してぶつかれる関係性」も持っているバンドだと感じられた。
家族みたいに笑って、少し衝突もして、それでも一緒に前に進んでいる。
だからこそ、彼女たちの音楽には“嘘がない”のだと思う。
最初は身内バンドでライブに出た

ゴスペルが身体に入ってる——音の深さ
No.MENの音楽を初めて聴いたとき、多くのリスナーが驚くのは、その“渋さ”と“音の厚み”だろう。 一般的な青春バンドのイメージとは一線を画す、どこか黒っぽいグルーヴ。 これには、メンバーの多くがゴスペルをルーツに持ち、日常的に“ブラックミュージック”のリズム感を身体で覚えてきたことが大きいのではないだろうか。 作曲を担うCoconaは、その音楽性の核についてこう語ってくれた。 —— Cocona “スルメ曲”を作りたいっていうのが、私の作曲のゴールなんです。一回聴いただけじゃよくわからない。『なんだこれは?』ってなるような。 で、二回聴くと『ここのフレーズがかっこいいな』って思えてきて、何回も聴いてるうちに、どんどん新しい良さが見えてくる。気づけば覚えちゃうくらい聴いちゃう。そんな曲を目指しています。 この“スルメ曲”へのこだわりは、リスナーとの信頼関係から生まれているという。 —— Cocona ちょっと挑戦的な曲作りでも、それを理解しようとしてくれる人がいると信じてやってる。音楽を通して、少しずつ深く伝わっていけばいいなと思っています。 一聴してすぐに分かるキャッチーさではなく、聴くたびに味わいが増す構造。No.MENのサウンドが“ただの若手バンド”では終わらない理由は、こうした美学と挑戦にあると感じられた。伝えたいことがある——まっすぐな言葉と彼女たちのリアル

家族みたいなチーム——4人の関係性
