Author: 石原ふみや

Adoの「うっせぇわ」が社会現象と呼べない理由とは…?
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Adoの「うっせぇわ」が社会現象と呼べない理由とは…?

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巷でAdoの「うっせぇわ」が話題になって久しい。 YouTubeのMusic Videoの再生数が、2億回に到達したらしい。耳に残る洗練された曲だなと思っていたが、まさかここまで行くとは思ってなかった。すごいの一言に尽きるのが本音だ。 また、同曲は、社会的なマナーや慣習にそって従うことを良しとする大人の主張に対し、”うるさい” の一点張りで3分20秒の間、けたたましく抗議し続ける "一種のプロテストソング(社会の不公平や不正を告発し抗議する楽曲)" と言える。 実際に、楽曲中で何回 ”うっせぇわ” というフレーズを歌っているかを数えてみたら、全部で21個あった。当たり前に存在する世のルールに対し、その非合理性を追求するでも、多様性を示すでも、新たな見方を提示するでもない。 攻撃手段はただ1つ。「うるさい」 援護射撃として...「あなたが思うより健康です。」「私が俗にいう天才です。」...など、心身の発育が順調であることを根拠として、21回にわたる ”うるさい” という論調を武器に、骨が見えるまで噛み付いてやろうという楽曲である。 誰に噛みついているのか私には図りかねるが、急所を外している様には思える。

Adoと尾崎豊の違い

さて、プロテストソングといえばやはり "尾崎豊" だろう。 高校在学中にデビューし、特に10代の頃は「社会への反抗・疑問」「反支配」などを表現した。校内暴力や学生による飲酒・喫煙が横行し、偏差値教育や受験戦争のひずみが露呈していた昭和の独特な時代世相と相まって社会現象となった。マスメディアは彼を「10代の教祖」と呼び、若者の代弁者として時代から求められていた。 そしてふと思った。 令和のプロテストソング「うっせぇわ」に対する時代の反応と、昭和の尾崎を聞いたあの時の時代の反応が明らかに違うのではないか。 一言で言うと、聞き手を巻き込んだ "社会現象になってるか否か" の違いである。 尾崎を聞いて、若者は盗んだバイクで走り出し、校舎の窓ガラスを叩き割ったらしいが、「うっせぇわ」を聞いた令和の若者は果たして何をするのか...。曲に従えば、やはり ”うるさい” と連呼するのである。根拠は健康と天才。「うるさい。抹茶フラペチーノは抹茶飲料だから」と、強引な四捨五入で健康をアピールし、それを片手に撮った30枚の写真から厳選した1枚をSNSに載せて「アフィリエイト・インスタグラマー」を名乗って天才を自称する。 申し遅れたが、本記事を書いている私は現在大学2年生の学生で、順調にいけばこの春で3年になる。 順調にいけば、就活も始まり出し、社会との接点が徐々に増えるのが大学3年生というものだ。社会へのステップとして1歩2歩と大人への歩みを実感する、というのがこの多感な時期の1〜2年における変化だろう。一応、令和の若者という立場で率直な感想を述べると、あくまで個人の意見だが、「うっせぇわ」とは時代批判というより思春期の過剰反応に近い様な印象を持った。 尾崎がもたらした社会現象を肌感覚では知り得ない為、この2者の対比に ”昭和と令和” の時代比較を落とし込むことは難しい。 しかし、実感として、Adoに対して向けられる若者の視線は、不満を代弁してくれた尾崎を象徴的存在として崇めた若者の視線の様な熱を帯びているとは思えないし、Adoがそれを望んでいる様にも思えない。 これらの違いはなぜ生まれているのか...。以下ではこの問いについて考えていきたい。

尾崎豊の苦しみの理由

なぜ尾崎のプロテストソングは、若者を煽動する社会現象になり、Adoのソレはならないのか...。 私が思うに、それは「ルールを取り巻く人物相関が変化した為」と考えている。 ルールというのは、作る人とそれに従う人の二項対立の構図になりがちだが、重要な第三のポストがあると私は思っている。それは「ルールを説明する人」である。「なぜ黒髪じゃなきゃいけないのか」と問う生徒と、「そういう校則。ルールだからだ」という先生の議論が摩擦を帯びながら平行線のままになるのは、この第三のポストが見えてこないからではないだろうか...。 「こんな校則には意味がない。改変すべきだ。」という訴えが一向に汲み取られない理由は、その先生がルールを ”作る人” でなくルールを ”説明する人” だからだと考えられる。昔の先生や教育委員会などの組織上部、ひいては文化や慣習などの曖昧な合意形成によって出来上がったルールは、複雑すぎて目の前の先生には100%納得のいく説明が出来ない。 この構造が見えないまま理不尽とも思える制限が続けば、必然的に大人社会への不満というガスが溜まり、そこに反支配を歌うソウルシンガー・尾崎が火をつければ、大爆発になるのは想像に難くない。 一方で、今の若者は不満が溜まるとどうするだろうか...。 答えは『インターネット』である。 誰もルールの構造や闇を説明しきってくれなかった昔とは違う。ネットには膨大な量の情報があり、テキストや動画などその媒体も様々で、自分にあった最適な手段で情報にアクセスできる。そこでは、あらゆる人があらゆる事象を説明してくれる環境が整っており、SNSなどで大きく共感を生んだ話題が、現場での現状見直しのきっかけになる例も多い。 それらが適度なガス抜きになっているので、プロテストソングも着火剤としての機能を失わざるを得ない、というのが私の結論だ。 勿論、見るだけでなく発信者になり易くなった事も、ネットやSNSの重要な側面であり、あらゆる人がクリエイターになれるのでコンテンツの絶対数は昔とは比にならない。以前には無かった様々なコンテンツ文化が発達しているという意味では、今の時代ならではの強烈なメッセージを歌うシンガーはこの令和にも多く存在している。 思うのだが、尾崎の苦しみは代弁者に徹した故のものでもあるかもしれない。誰かの気持ちを歌うことを求められ、それが内部化して自分の思いとすり替わったならば、自分が見えなくなるのは当然である。そうなったなら、もう誰かに助けてもらうしかない。それこそ音楽の出番だ。 一例だが、ヨルシカの『思想犯』という楽曲がある。 "他人に優しいあんたにこの心がわかるものか"、という訴求力の強い言葉から始まり、"死にたくないが生きられない だから詩を書いてる" というアーティストならではの苦悩なクリエイティビティが描かれる。Music Videoはアニメーションのストーリー仕立てになっており、強盗らしき人が素顔を隠すために日常的に仮面を付けているシーンが描かれている。 そして、最後のサビに入る3分10秒辺りで疲れ切った強盗は仮面を外すのだが、鏡を見て驚愕する。仮面の下に、もう一枚仮面があったのだ。その下にも、さらにその下にも様々な仮面が張り付いており、剥がせど剥がせど素顔が見えてこない。そのサビでの歌詞がこれだ... 君の言葉が呑みたい 入れ物もない両手で受けて いつしか喉が潤う その時を待ちながら 付けすぎた仮面に、素顔が乗っ取られるという隠喩と照らし合わせて、あくまで私が個人的に導いた『思想犯』という楽曲の解釈を尾崎にぶつけたい。他人の言葉を飲み続ける事でしか渇きを癒せなくなっていたなら、そして、それを自覚できていなかったのなら、逃げていい。 もしかしたら、と考えてしまう...。 ”尾崎がヨルシカを聞いていたなら、歴史は変わっていたかもしれない。” そう思っても、歴史にタラレバはない。だから、我々にできることは一つしかない。今を生きる、この瞬間と人に向き合う。命の意味がわからない人は、カンザキイオリの「命に嫌われている」を聞いてくれ。生きるのが辛い人は、森山直太朗の「生きてることが辛いなら」を聞いてくれ。天国の尾崎、あいみょんの「生きていたんだよな」を聞いてくれ。まだまだある。まだまだあるんですわ聞いてほしい曲が...。 ということで次回以降は...「〇〇なやつはこれを聞け」...的なのとか。「ヨルシカの楽曲、独断と偏見で鬼深掘り」「あいみょんを聴きすぎて彼女にフラれた話(実話)」...みたいな記事を書こうと考えています。 最後まで読んでいただき、有難うございます。 -- メディア運営:Evening Music Records Inc.
【2022年注目】imaseやasmiなど… TikTokで注目の今来てるアーティスト3選。
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【2022年注目】imaseやasmiなど… TikTokで注目の今来てるアーティスト3選。

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大学の期末テストが終わって、先日久しぶりにTikTokのアプリを開いた。 見る人も投稿する人も圧倒的に増えて、よりクリエイティブなプラットフォームとなった今では、ユーチューブ動画の合間で乱入してくる広告がウザがられていた初期を懐かしく感じられる。 途中に割り込んできた時は度々アンインストールを検討してきたがその都度、柴犬が毛刈りされる動画やダンスに明け暮れるJkを散見しては、なんとなくホーム画面の左上に鎮座させていた。 気づけばかなりの規模になり、今では音楽を語る上でこのサービスを無視することはできない。  そこで、最近TikTokをきっかけとして個人的に注目してるアーティストとして下記の3組を紹介する。 ・imase ・asmi ・きゃない 3者の共通点として、楽曲がキャッチーで覚えやすく、1曲のヒットで終わらないバズセンスなどが挙げられるが、その活動スタイルや音楽性は様々である。 それぞれの特徴をざっくりとまとめていく。

imase - 代表曲「Have a nice day」

まずは、やはりimase。 音楽活動を始めてからわずか1年という21歳。 代表曲の「Have a nice day」はTikTok総再生回数が3億回を超えるほどのヒットとなり、続く「逃避行」でも数字を伸ばし、サンプラーを用いた電子的な音と、ゴチャゴチャしすぎない音数のバランスが心地いい。騒がしいようで騒がしくない。 個人的に彼のリラックス感が特徴的だと思ってる。 歌声や表情にいい意味で無機質な印象がある。力まず落ち着いていて、淡々としてるようだが感情の表現はちゃんとある感じ。 どこのスクールカーストにも属さないが女子人気でベスト3に必ず食い込む、ちょいミステリアス味を感じさせる文学男子のような感じ。 休み時間は大体寝てるか読書してる。 新しい学年で一緒のクラスになってるとなんとなく嬉しくなるけど、一回も会話しないまま学年終わる感じ。 知らない間に学年のマドンナと付き合ってたりする。 TikTok見てて、「Have a nice day」のキャッチーなサビの歌唱動画が回ってきた時は2秒でいいねを押した。 シンプルなコード信仰の繰り返しだけど、曲としての展開は早く、開始からピッタリ30秒でサビに入る(狙ってるのかも)。 サンプラー(パソコンの横でペコペコ叩いてるあれ)で弾き語りってのも差別化になってるのかも知れない。
@imase119 「Have a nice day」コロナ禍で感じたことを歌いました! #ドリーマーZ #弾き語り #オリジナル曲 #カバーしてね ♬ Have a nice day 弾き語りver. - imase

asmi - 代表曲「ヨワネハキ」

大阪出身の20歳。MAISONdesというユニットで発表した「ヨワネハキ」は2021年にSNSで最も使用された楽曲となり、他のアーティストとのコラボなどでも話題になっている。 友人がasmiのことを「ピンクが似合う声をしてる」と表現していた。 言わんとしてることはなんとなくわかる気がする。 主張が強めじゃない、白っぽいピンク。 宇多田ヒカルとaikoを足して2で割ったような、白っぽいピンク。 クラスの男子全員と仲良くなるタイプ。 一度は好きになるけど、「あ、あいつとも仲良いんだ」って思って脈アリじゃないことを自覚する。 若い女性アーティストは変に気取らずに気持ちよく歌ってると、それだけでコンテンツとして成立するってのを体現してるように思える。 電子回路のテスト勉強してる時にムズすぎて、息抜きに「森七菜がこっそりやってたらショックなこと」っていう謎の大喜利を友達がやり出したことがあって、「鏡の前で笑顔の練習4時間」っていう回答が1本になった。 みんな疲れてたんだと思う。 この主語が森七菜からasmiに変わっても同じ回答で攻めたい。 asmiさん。あなたは取り繕わない、純粋な笑顔で歌ってください。
@the_first_take #THEFIRSTTAKE #MAISONdes #ヨワネハキ feat. #和ぬか,#asmi #一発撮り ♬ Yowanehaki - MAISONdes

きゃない - 代表曲「コインランドリー」

TikTokネイティブのリスナーにはまだ認知が浅いかもしれないが、毎回の路上ライブで100人以上を集める集客力を発揮している「きゃない」。 「コインランドリー」というタイトルと “1日1日を大事にする” というメッセージ性から話題を呼び、私のタイムラインにも流れ着いた。 恵比寿のLIQUIDROOで行われたワンマンライブでその抜群の歌唱力を体感してきたのだが、SNSでの大きなバズりに余力を残しながらここまで人を集めるその魅力は確かなものだった。 あとMCのトークが普通に面白かった。 お世辞抜きで絶対いい人だと思う。 ライブで見せる言葉の重さや、メッセージの真っ直ぐさから見える人間性が、TikTokなどでのファンからの反応率の高さに繋がってることは間違いない。
@pinku_kinoko 悲しいことより嬉しいことに涙を流したいな。#きゃない#コインランドリー @kyanai_music#路上ライブ #オリジナル曲 #赤髪マッシュ ♬ オリジナル楽曲 - natyyyy
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アジカンの歌詞は、世界の全員を幸せにできるかもしれない
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アジカンの歌詞は、世界の全員を幸せにできるかもしれない

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「ベテランち」というユーチューバーがいる。 1浪.2留の理科三類。現役東大医学部生にしてチャンネル登録者数11万人を有しており、受験当日にウンコを漏らした話や、浪人中に磯丸水産でバイトし続けていた友達のエピソードなどを披露している。 彼が最近「勉強のコツ」というタイトルの動画を上げた。 東大医学部に合格するほどの頭脳が語る勉強のコツとあれば、巷のビジネス書ファッションに辟易してる意識ちょい高い系でも俄然興味が湧く。 彼は思考を ”広さ” ”深さ” ”速さ” ”高さ” 、の4種類に分類し、最も重要なのは ”高さ” だと主張する。 思考の高さとは何か。 それは要するに広く応用の効く思考のOSのことである。 受験に例えるなら、理系科目は得意だが文系科目になるとまるでダメなようなタイプは彼に言わせれば思考の高さが足りないという事になる。 突き詰めると美意識やかっこよさへと行き着く、生き方の話に近い。

アジカンのかっこよさとは

そしてベテランちが思考の高い人物の例として挙げていた人物がアジアンカンフージェネレーションのフロントマン... 後藤正文である。 中学生の運動会で「ソラニン」のサビに合わせて空手の型を学年全員で披露するという、斜め上な出し物があったのが私とアジカンの出会いだった。 ソラニンはアジカンの代表曲の一つである。 浅野いにおによるバンドを通じて人間模様を描いた漫画「ソラニン」の映画化で同タイトルの主題歌を担当し、広く知られる楽曲となった。 ソラニンの歌詞はアジカンの中で唯一後藤正文以外の作詞なのだが、歌詞のどこか遠い思い出や過去の別れ気分を反芻するような世界観に曲調がマッチした名曲だ。 話を戻そう。 後藤正文の思考の高さとは何か。 それはベテランち曰く、フェアネスらしい。 アジカンは活動として音楽の布教や後輩の育成などに精力的に活動している。 自主レーベル内で若手に機会を与え、より広く認められるチャンスを用意したりするために自分達の知名度をフェアに活用したりする姿勢が思考の高さがあり、かっこいいと言う。 ここまで彼の話を聞いて、なるほどロックで芯のある男なのだなと後藤正文について調べてみた。 そして分かったことがある。 この男、とんでもなく想像力が豊である。

想像力のあるアーティスト

コロナ禍でのアーティスト活動のあり方について彼の考えたnoteではライブを行うべきかについて右に左にグワグワと、痛々しいほどに揺れ迷う様が綴られている。特にフェスについては、そのフェスを行わなかった場合のスタッフたちの顔が頭に浮かび、心身のほとんどをグワグワが占めているという。 音楽産業にとってコロナは大打撃だったろうが、スタッフやその他の関係者に向けて、ここまで深く想像力を働かせるは簡単じゃない。 例えば次の動画をみてほしい。 我が子を可愛がれないシングルマザー”こどもが気持ち悪い” 説教する芸能人と壮絶バトル Single mother who can't love her child これを見て「なんて母親なんだ。最低だ」としか思えないのはもったいない。母親のダメっぷりに憤り、子供の未来を憂う以外の発想を持つのが想像力の一つかもしれない。 人は自分と、その周囲の当たり前しか受け入れられない。自分が子供時代、親に愛された育ったから、子供が生まれたらそうするのが当たり前となる。そしてその当たり前をしない人間に対してアレルギー反応が出る。 LGBT関連だと分かりやすいかもしれない。自分は当たり前に異性を好きになる。周りもみんな当たり前に異性を好きになる。だから同性を好きになる人間を簡単には理解できず、一昔前だと嫌悪の対象になることも多かった。(私は理解できると主張する人がいるかもしれないが、それはあなたの理解が進んだのではなく社会の理解が進んだだけで、単なる集団心理かもしれない。) 自分は子供ができたら当たり前に愛する。周りの親もみんなそうしてる。だから子供ができたら愛するのが当たり前。それができない人はひどい親で人間的に問題がある。 ここで想像してみる。 愛されたことのない人はどうやって愛せばいいのか。 では子供を産んではいけないのか。 だとしたら、その家の子供たちは生まれてこない方が幸せだったのか。 答えのぼやけた問題が山積みになるため、ほとんどの人はそんな自分以外の他人や、関わりの薄い社会に対して想像力を働かせることは難しい。 それでも悩みながら答えを表現しようとする想像力を持ったアジカンのようなバンドが紡ぐ音楽なら、全員の胸の内を代弁し互いに向き合うきっかけを与えてくれるかもしれない。 -- メディア運営:Evening Music Records Inc.
「ぼくりり」は天才ではない、「AmPm」に比べれば
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「ぼくりり」は天才ではない、「AmPm」に比べれば

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本題の前に長めの前置きを。 中学生の頃、近所に古ぼけたブックオフらしき本屋があった。記憶が曖昧なのだが自動ドアが10秒くらいかけて開くのでみんな手動で開けていたのを憶えている。 基本的に人気がなく、2階の照明が点滅しがちでBGMの音量が異常に小さいのに店長のあいさつは二子玉川のスターバックスくらい明るかった。閑散とした入り口には文字がカスれた立ち読み禁止の看板がかかっており、その真横でバイトの店員がスラムダンクを立ち読みしてるのを見た私はさらにその真横で1巻から読んでバイトを追いかけていた。誰かが読んでいるものを読む、というのが当時の私の選書基準だったように思える。 1週間かそこらでバイトを追い越し、2週間程度で読破した記憶がある。 山王戦のラストでは足が震え鳥肌が止まらず、おそらく目も潤んでいたのだろう、まだ豊玉戦で足踏みをしていたバイトが一歩寄ってきて卒アルでもめくるみたいに呟いた。 「続き、見たいよな。」 スラムダンクは少年ジャンプで連載され、全276話で完結した。その後の延命処置はいっさい行われていない。 それから時は流れ2019年1月。オリンピック辞任祭りにカルロスゴーンのgone to Lebanon計画、嵐の活動休止とてんやわんやで世間が沸く中、1人の音楽家が死んだ。 「ぼくのりりっくのぼうよみ」改め、田中。 ぼくのりりっくのぼうよみ(以下:ぼくりり)。 10代向けオーディション、閃光ライオットで1万組の中からファイナル10組まで残り現役高校生シンガーとしてデビュー。作詞作曲を自ら手掛け、達観した抽象的リリックが話題に。文芸界からも注目されエッセイの寄稿もこなす天才として時代から脚光を浴びる。その彼が音楽キャリア3年目にして突然引退を発表した。 NEWS ZEROの密着取材でこう語っていた。 「僕は自由になりたいです、すごく。文学的だとか天才だとか哲学的な歌詞がステキだみたいなことを言っていただいて、できあがった他の人たちの中にある偶像に自分が支配されちゃうことにすごく耐えられない」 その後はぼくりりを葬ると宣言し、東京でのラストライブ「葬式」を持って正式に「ぼくのりりくのぼうよみ」を辞職した。
▼ エンタメならではの苦しみとは... 納得の理由だな、と個人的には思う。 アイドルではないにしろ、アーティストも人気商売としての側面は強い。 作品を作れば読み手聞き手は意味を探し、それは作り手のクリエイティビティに大なり小なり影響を与えていく。そういう意味で作ったんじゃない、と思えば思うほど次回作は既存のファンには刺さらなくなり、かといって数字を取りに行こうとすれば世間がイメージする虚像は侵食を続ける一方、アーティストの自殺が世界でも問題になっている理由は容易に想像できる。 それでも、スラムダンクに限らず鬼滅の刃や短期アニメ、惜しまれつつ解散.引退したアーティストなど、人気絶頂のなか見事に完結する作品を見終わった後には、まぶたの裏で刹那的な打ち上げ花火の残像を味わうかのような圧倒的な高揚感が残り、そして我々は口々にこう呟く。 「続き、見たいよな。」 (ここまで前書きです。長いっすね...) そんなエンタメの世界が抱える矛盾に対して、全く新しい方向からアプローチしてるアーティストがいる。(正確ではないが便宜上アーティストと呼ばせていただく) 「AmPm(アムパム)」という名前を聞いた事があるだろうか。
▼ 仮面のアーティストAmPm 覆面を被った二人組のアーティストでリスナーの7割が海外という信じがたい状態なため、邦楽好きにはまだ馴染みが薄いかもしれない。デビューシングルの「Best Part of Us」はSpotifyの注目チャートにいきなりランクインし、2017年の世界で最も聞かれた日本人アーティストとなった。驚くことにここまでの功績はよくある事務所のプッシュではなく、自分達のセルフプロデュースのみで行われている。 そして最も重要なのはAmPmがアーティストではなく、そして作詞作曲もしていないという点である。 混乱するだろうと思うのでじっくり説明させていただきたい。伝わりやすい例えとして漫画の編集者を思い浮かべてほしい。 自分で漫画を書くわけではないが、「面白い漫画とは何か」という物語の知識と、「誰向けにどんな漫画が売れるか」などのプロデュース能力を持っているとする。そこで、「こんな漫画が世に求められているのではないか」というアイデアを文才のある原作者に物語として形にしてもらい、それを才能ある絵描きに描いてもらう。 自分は0→1のアイデアとプロデュースを手伝い、原作者も絵描きも作品を世に売り出せて三方良しとなる。 この形式で才能ある漫画家を紹介するための雑誌に”少年ジャンプ”と名前をつければ、”少年ジャンプ”=(いい漫画との出会い)という図式が出来上がる。 これの音楽バージョンをやっているのがAmPmと思っていただいて差し支えないだろう。 作詞作曲家にアイデアを投げ、才能あるボーカルを紹介する。そのメディアにAmPmという名前をつけて本人はプロデュース面をサポートする。AmPmプロジェクト誕生の経緯は次の通りだ。様々なアーティストを紹介したいが、認知の獲得には最初の認知が必要。そこでとりあえず曲を作り、それが1発目としてヒットするように市場を分析した。 ...とここまで読んで「いうのは簡単だが実際はもっとむずいだろ」と思った人も多いはず。しかしその難しさを乗り越える、恐ろしいほどに強いマインドがAmPmにはあった。 話が行ったり来たりして読みづらいだろうが、ようやくここからが本題なのでついてきて欲しい。 AmPmの1人がYahooニュースのインタビューでこう語っていた。 「どれだけ欲や感情やエゴを殺せるかを、かなり意識しています」 音楽という人間の感情を表現する世界の中で、その感情自体に飲み込まれ時にはその深淵から帰って来られない者もいる中で、自ら徹底してそれを殺しているのである。 ”意識しています”って、いやそりゃみんな意識してるでしょうよ。 どんな曲が売れるのかなんてみんな考えてるし、知りたいし、努力してるけどそれができないから困ってるんだろうに、実際にそれをできてしまうのか。実際にそれでバズらせてしまうのか。TikTokでスクロールした画面にたまたま現れる投稿初期の音楽を「これはバズる」と見抜くことと、実際にそれを作ることは全く話が別。 しかし、自分を殺して作品を売り出すことに全エネルギーを使えればその確率は上がり、メディアとしての寿命もずっと長くなる。 YouTuberのラファエルは「100年後も誰かが仮面を被ればラファエルは生き続ける」と断言してるが、AmPmというメディアもその名前と仮面を受け継ぐ者がいれば原理的には生き続ける。続きを望んだファンの声に応え続けることができる。 アーティスト虚像にむしばまれることなく、その鮮度を更新し続けていける。 なぜなら、最初からAmPmというアーティストは存在しないのだから。 文: 石原 -- メディア運営:Evening Music Records Inc.
アイナ・ジ・エンドは、椎名林檎の下位互換なのか?
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アイナ・ジ・エンドは、椎名林檎の下位互換なのか?

いきなりだが日本中の妹の皆さんに紹介したいミルクボーイのネタがある。「いや俺の妹がな、尊敬してる人がいるらしいねんけどな、その人の名前を忘れてしまったらしいんよ〜」「そら椎名林檎かあいみょんやろ。妹が尊敬してるって言うたら椎名林檎かあいみょんと相場がきまっとんのよ...
『要はバズればいいんだろ?』と思ってるアーティスト、たぶん売れない。ビッケブランカから考察。
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『要はバズればいいんだろ?』と思ってるアーティスト、たぶん売れない。ビッケブランカから考察。

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水曜日のダウンタウンで武井壮がとある説を検証してました。 「ハンマー投げ 日本2位 だれも知らない説」 いや知らねーよ。 知ってるわけがないでしょうよ。だって1位があの室伏広治ですよ。ハンマー関係ないもんあの人。ハンマー練習の合間に砂場でテキトーに飛んでたら立ち幅跳びの世界記録更新したらしいです。本当かよ。(武井壮いわく本当らしいです) 体育の世界で覇者やん。 ちなみに日本2位は 土井宏昭さんです。 話は変わりますが、 今日本で最も聞かれてるアーティストが誰かご存知ですか? ずばりSpotifyの月間リスナー数だとヒゲダンです。(たぶん) こないだ見たら410万人でした。いやガチで日本1だと思う。 Pretenderのヒットで国民的アーティストになったのはいいとして、ヒット曲を生み出し続ける引き出しとか幅の広さは本当にすごいと思ってて、すげーなすげーなと思ってるうちに東京リベンジャーズとのタイアップ「Cry Baby」が出てきて、一気にリスナーの層が広がってます。特に海外に。 こっからが本題です。日本が世界に誇る文化としてアニメは最強といえるでしょう。 そのアニメが海外でバズってれば、タイアップの曲も海外の人からめちゃめちゃ聞かれます。Cry BabyのMVのコメント欄をみてください。 山のような海外勢のコメントがあり、室伏にかすむ銀メダリストのように埋もれてる日本語コメを拾い読むと4分に1回は聞きたくなる、とあります。 こうなったらもうヒゲダンの1人勝ちだろと勝手に思ってはいるんですけど、アニメ主題歌でバズってる例って他にもあるよなと思って調べてみたら、 出ました ビッケブランカ「Black Rover」 Spotify再生数:86,353,518(2021/11/05現在) ちなみに ヒゲダンのCry Baby:73,978,556 他にもアニメ主題歌で調べた他にも色々あるんですけど、今回はビッケブランカについて深堀りたいと思います。 ▼ 海外でバズり中 聞いてみました。 いいです。ピアノロックと言えばいいのだろうか、イントロは穏やかなピアノで始まるんだけどすぐ加速して疾走感のある曲。 ビッケブランカは「まっしろ」を初めて聞いたときにめっちゃいい曲だなと思って一時期アホみたいに聞いてた。「獣になれない私たち」の挿入歌でした。 サビの ”とーきーを止ーめーてよ”の ”き” の部分がめっちゃ好き。よく分からんけどめっちゃ好き。 で、この度アニメ「ブラッククローバー」とのタイアップで主題歌「Black Rover」を書き下ろし見事海外の人からわんさか聞かれてます。グッドマーケティング。 という単純な話では終わらない。
▼ バズるだけでは売れない ブラッククローバーの第3クールの主題歌を「Black Rover」で担当したあと、10クールのときにもう一度タイアップで「Black Catcher」を書き下ろし、これはストリーミングでは前作よりも再生されてる。 何が言いたいかっていうと、1発のバズで終わらず2発目3発目が結構な確率で当たってて、すごい。シンプルにすごい。 ハンマー投げ日本2位だれ?って聞かれても分からんし。 日本で2番目に高い山も、2番目に広い湖も知らんし。 あのアーティストの2番目に人気の曲分かる?って聞かれても、ほとんどの人は分かりません。そういうものです。 ようやくタイトル回収します。 「売れるにはとりあえずバズればいい」ってのは正しいんだけど、1発バズっても簡単には軌道に乗れないのがアーティストっていう仕事の難しいところで。当然。 アーティストに限らずクリエイターが一番苦しいのって1発ヒットした後に鳴かず飛ばずになる時期かもなってのは思います。現にバズったのにすぐ消える層は僕らが想像するよりずっと分厚い。 そんな中できっちりセカンドバズが成立してるヒゲダンとかビッケブランカってやっぱすごいんだなと改めて思いました。 そいえばビッケブランカの新曲「北斗七星」アホみたいにハマってます。 やっぱ俺はバラードが好きです。てゆーかビッケブランカの裏声がめっちゃ好き。 サビの(これしか言ってないな)「あしあとたど〜っていくー」の ”ど” 、良い。 よく分からんけどめっちゃ好き。そこだけでいいんで聞いてください。"ど" だけでいいんで。 以上 参考情報 ※ ビッケブランカ公式Twitter: https://twitter.com/VickeBlanka ※ ビッケブランカ「北斗七星」YouTube動画: https://youtu.be/wH5QbrEs8mY ※ ビッケブランカ「Black Rover」YouTube動画: https://youtu.be/8RSfSxkN0ek -- メディア運営:Evening Music Records Inc.
「SKY-HI」が、人生を賭けて挑む挑戦とは…?
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「SKY-HI」が、人生を賭けて挑む挑戦とは…?

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近頃、音楽のジャンルというのは細分化の一途を辿っていて唐揚げ専門店くらい量が増えつづけている。某からあげ屋で働く友人に「でも全部同じ唐揚げだよな」と言ったら... 「お前は(食の種類の数=提供する会社の数)でこれだけの食文化が育つと思ってるのか?競争相手がいるからクオリティが上がっていくんだ。それが現代の産業ってもんだ。そもそも資本主義というのは(以下略)」と跳ねた油のような勢いが止まらなくなっていた。勘弁して欲しい。分かってる。唐揚げは美味い。 自分たちのジャンルに強いアイデンティティを持っているという意味で、ラッパーというアーティストは他とは一線を画しているように思える。世間の勝手なカテゴライズにはハマってなるものかという信念が楽曲に現れている音楽性も珍しくない。 そこで最近私がまとめた、これなら問題ないだろうという太めの線引きを紹介したい。 ざっくりとラッパーを次の3つに分けて考えてみる。 1. ラップだけをやる人 2. ラップ以外もやる人 3. SKI-HI 具体的に説明します。 1. ラップだけをやる人 最も一般的でおそらく人口も最大。 2. ラップ以外もやる人 メロディも歌って作曲もやって、大衆性、商業性なども視野に入れて普通の人がイメージするアーティストとしての活動もやる人。今でいうとCreepy Nutsが分かりやすいかも 3. SKY-HI: 本名 日高光啓(ひだか みつひろ) ラップやってメロディも歌って作曲もやって、ピアノ弾いてたぶんDTMでゴリゴリの編曲までやって、AAAでメジャーデビューしてドームツアーやって、”才能を殺さないために”をスローガンとして株式会社BMSGを設立して社長やって、Avexと共同設立したレーベル「B-ME」を立ち上げて、自腹で1億投資してボーイズグループ発掘オーディション「THE FIRST」を2020年末から開催。(ちなみに早稲田出身、ちなみに国語の全国模試1位、ちなみに元ジャニーズJr.エトセトラet ceteraえとせt….) どゆこと...?

アーティストでありプロデューサー

こんなに何足ものわらじ履きこなしてんの大谷翔平くらいしか知らんぞ。 しかも、プロデュース業と現役のアーティスト活動を並行してんのがすごい。 こないだ、THE FIRST TAKEで「何様」を歌ってまして。2021/10/22の時点で400万再生に高評価8.9万。これはしっかりちゃんと人気の人の数字です。 裏方が得意なのかと思ったらしっかり音楽力も強い。セカンドキャリアというより色んな職業を同時並行でこなすパラレルキャリアの音楽界における1例として心から尊敬します。 ...と、まあここまで彼のすごさを長々並べましたが、個人的に一番すごいと思ってることを述べます。 使命感です。 ※ SKY-HI × たなか - 何様 feat. ぼくのりりっくのぼうよみ / THE FIRST TAKE

運がなくても売れる世界

音楽界を見てて日本が世界に劣ってるってのは共通認識だと思います。だって世界ですから。 ただ彼はそこで止まらず自腹で1億出してまで新しいアーティストを生み出して世界と戦おうとしてる。 1億ですよ? 素直に思いません? なんでそこまでするんだって。 彼はアーティストとしてすでに成功してる。でも若い才能が埋もれてくのを見てきて動かずにはいられなかった。俺なら素通ります。 マンガ「バクマン」の主人公が漫画家として食べていくための3条件を挙げてます。 1. うぬぼれ 2. 努力 3. 運 うぬぼれるほど自信を持って進め。 努力しろ。 そして運。 ここからは推測です。 SKY-HIはおそらくこの3つ目の条件 “運” の要素をなくそうとしてる。 アーティストとして成功するには運が必要ってのは全員わかってるけど、ただそれが納得いかないんじゃないかと。そんで誰かがやらなきゃいけないから俺がやる、と。 インタビューで「なぜ1億も?」って聞かれて 「自分の人生を賭けてもいるから」と答えてました。 すげー人がいるもんですよ。 思いついてもやるかね普通。 素直に応援したいと思いました。 本気で時代を変えようとしてるんだなと。 一般人の自分も何か貢献したいと思ったら、SKY-HIの事務所からデビューした噂の「BE:FIRST」の活動のためにクラウドファンディングをしてるそうで、一助になりたいという方は是非見た方がいいと思います。 -- メディア運営:Evening Music Records Inc.
「Da-iCE」の歌はなぜ歌いたくなるのか…?
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「Da-iCE」の歌はなぜ歌いたくなるのか…?

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確かになる。 なるし、何かに負けたような気がして煮え切らない感情になる。 人間は特定の情報を脳内で自動的にリンクさせる生き物らしく、文章を黙読するときにもその音がリンクした情報に基づいて脳内再生される。五七五の文字列見たらとりあえずあのリズムで読んじゃうみたいなやつ。 では、みなさん。次の文章からどんな音が再生されますか?  「離さないって決めたから」  「守りたいって言ったのさ」 は〜〜〜〜なっさなぁいってぇーー きぃめぇたかーらーーー まぁ〜〜〜〜もおりたーいっってー いぃいぃた⤵︎のーさーー ...以外の音が脳内再生された人にはまったく伝わらない文章が、あと1,200文字くらい続くので、まずMVを見てください。 5人組ダンスボーカルDa-iCEの「CITRUS」です。 とりあえず見てきてください。 ※ CITRUS / YouTube動画:

Da-iCEの歌は、なぜ歌いたくなるのか...?

私は、週8でカラオケにいくタイプなんですけど、初めてこの曲を聞いたときこう思いました。 「これカラオケで歌ったらぜったい気持ちいいな。(歌えないけど)」 「ここにきて伴奏は小室進行か、やっぱいいな。(弾けないけど)」 「ツインボーカルもダンスすんだ。実質ボーカル2人ダンサー5人じゃん。(踊れないけど)」 風呂場で熱唱してみて、難易度に絶望した辺りでなんとなく考えてみました。 「この曲歌いたくなるのってなんでなんだ...?」 音楽論かと思わせておいてこれはちゃんとDa-iCEの話です。 約1年前、2020/11/10に公開されたリリックビデオは2021/10/15現在で2千万再生を超えてます。ストリーミングの総再生数が1億を突破した背景には、TikTokなどでのカバー動画が量産されたことによる拡散が一旦を担ってるのは間違いないでしょう。ちなみに極主婦道の主題歌です。 極主婦道はYouTubeの広告で一時期のTikTokくらい流れてきてたんですけど、まあカバー動画による拡散力の方がストリーミングには影響しやすいと思うので今回は2次クリエイターが火付け役になった爆発の成功例と取れると思います。 しかしそう単純な話でもないかもしれません。さっき「ちゃんとDa-iCEの話です」といった訳を説明します。瑛人の「香水」しかり、和ぬかの「寄り酔い」しかり、2次クリエイターを巻き込むならカバーしやすい構成にするのがセオリーです。 では聞きますが、「CITRUS」って歌いやすいですか...? 最高音は「愛を込めて花束を」のサビと同じ高さです。ミセスの「青と夏」のサビ頭 ”なつがはじまったあいずがした” みたいな徐々に階段的に上がっていくメロディーでもないです。サビがきたら一発であの最高音を出さなきゃならない。 最後は転調までしてキーが上がります。歌ってみたら1500メートル走より疲れました。 ツインボーカルです。 無理です普通に考えて...。 ただその難しさを超えるほど、2人のボーカルに圧倒的な魅力がある。あの歌声を聞くとやっぱり口ずさんでしまう。真似したくなる。弦が無駄なく張ったような花村想太の声とどっしりと安定感があり、太さのブレない大野雄大。 2人のバランスとMVのダンスをみててもこだわり抜いたパフォーマンスに引き込まれる。 ライブパフォーマンスをみてもその安定感はさすがとしか言いようがない。

Da-iCEのこれから

Da-iCEは現在、8月から6ヶ月連続のシングルリリースを掲げており、CITRUSはその第4段です。 これまでもポテンシャルは日本でもトップレベルだったがうまく突き抜けるのに時間がかかってた印象でしたけど、この一発で自分を含め世間が虜になっていくんだろうなと思うと、もっと早く見つけとけばよかったってなる日も近い気がします。 -- メディア運営:Evening Music Records Inc.
で、10月無口な君は忘れられました? あたらよの新曲「嘘つき」も
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で、10月無口な君は忘れられました? あたらよの新曲「嘘つき」も

10月は季節の変化が感じられて好きである。8月も9月も始めから終わりまで夏だが、10月は上旬に夏の名残を感じられて下旬では冬の先走りみたいなのが見えてくる。季節は1ページのワンシーンではなく1冊の起承転結の流れを表してるということを思い出させてくれる。
BE:FIRST(ビーファースト)が、日本音楽界の未来を見せる理由とは…
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BE:FIRST(ビーファースト)が、日本音楽界の未来を見せる理由とは…

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私はテレビを見ない。 というかテレビが家にない。 連ドラを連続でみる習慣がないのと、YouTubeの利便性にあやかって動画や音楽はスマホで見るのが生活のほとんどである。 そんな中、つい先日YouTubeで「Kick Start」という楽曲が目につき、なんとなく再生してみたのだが個人的にドストライクだった。驚くほどドストライクだった。 最初のイントロから体が縦に揺れるトラック。乗ったリズムが途切れないラップ調に飽きさせない展開とラスサビの転調。私好みだと感動した。のだが正直なところなぜこんなにも人気なのかがわからなかった。 再生数やYouTubeのチャンネル登録者数の伸びはすごく、いやでも目に付くほど話題になっていたはずだがそれまでまるで聞いたことがなかった。 「Kick Start」は公開から2日後の10月8日現在で74万再生、急上昇ランク2位を記録しているのだがその答えはこのアーティストが結成されたオーディションの情報を日テレのすっきりが大々的に取り上げていることにあった。テレビレス生活も考えものである。 ▼ Sky-Hiが自腹で1億投資 元AAAのSky-Hiが自腹で1億投資し主催したオーディションから生まれたダンスボーカルユニット「BE:FIRST」(ビーファーストと読む)のメジャーデビューに先駆けて配信されたカップリング曲、それが「Kick Start」である。 1億という金額から並々ならぬ決意を感じる。正直ビビった。 調べてみると平均年齢は20歳。最年少のRYUHEIはなんと14歳という若さである。 ちなみに彼はプレデビュー曲「 Shining One」のMVでは冒頭でセンターの歌い出しを担当しており、驚くほどの安定感を見せつけている。 若さとクオリティの両立。 すごいアーティストが出てきたと心から思う。と同時にこれまでも多くいたダンスボーカルユニットとの最大の違いはなんだろうか考える上で、BE:FIRSTの圧倒的なオリジナリティについて深堀りたい。 Sky-Hi主催ではあるがAAAやDa-iCEなどの文脈を色濃く受け継いでいる訳でもない新しさを追求しており、いい意味で王道のJpopらしさが無い。そしてそのクオリティに一切の妥協もない。しかも本人たちに作詞や振り付けを担当させることでファンはパフォーマンスだけでなくその作品が作られた背景や意味にも入り込むことができる。 ラップのパートはやはり一流のそれを感じさせるし、ダンスクオリティに英語の発音、高音の発声に至るまで漏れなく全て出来上がっているという印象である。 オーディションで共に切磋琢磨してきたライバルであり仲間でもあった同志への想いなども反映している歌詞には共感できるパートが多分にある。 オーディションから掲げてきた3つの軸... ・クオリティファースト ・クリエイティブファースト ・アーティシズムファースト ...という理念が見事に反映されてる作品となっており、デビュー曲の「Gifted.」がどんな作品に仕上がるのかが非常に楽しみになっている。 ▼ 世界を見据えた挑戦 Sky-Hiは今回のオーディションにおいて、「音楽との距離が近いグループというのは、今の日本に、東アジアに、そして世界にとって必要であると強く認識していたし、危機感も感じていて、そういった志を掲げていました。」と語っている。 個人的な捉え方になるが ”危機感” とはすなわちKpopなどの台頭で世界進出に成功したアジア勢に遅れを取るまいというアグレッシブな挑戦であり、乱暴な解釈をすれば多様化し、ガラパゴス的に発展する国内音楽産業に対する前衛的な姿勢とも取れる。 大袈裟な話ではなく、BE:FIRSTというアーティストがこれまでの日本に前例の無い新しい方向性を提示してくれるのではないかという圧倒的なワクワク感が拭えないことをどうか読者の皆さんにも共有したい。 -- メディア運営:Evening Music Records Inc.