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アジカンの歌詞は、世界の全員を幸せにできるかもしれない
石原 史彌( Evening Music Records )
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「ベテランち」というユーチューバーがいる。
1浪.2留の理科三類。現役東大医学部生にしてチャンネル登録者数11万人を有しており、受験当日にウンコを漏らした話や、浪人中に磯丸水産でバイトし続けていた友達のエピソードなどを披露している。
彼が最近「勉強のコツ」というタイトルの動画を上げた。
東大医学部に合格するほどの頭脳が語る勉強のコツとあれば、巷のビジネス書ファッションに辟易してる意識ちょい高い系でも俄然興味が湧く。
彼は思考を ”広さ” ”深さ” ”速さ” ”高さ” 、の4種類に分類し、最も重要なのは ”高さ” だと主張する。
思考の高さとは何か。
それは要するに広く応用の効く思考のOSのことである。
受験に例えるなら、理系科目は得意だが文系科目になるとまるでダメなようなタイプは彼に言わせれば思考の高さが足りないという事になる。
突き詰めると美意識やかっこよさへと行き着く、生き方の話に近い。
アジカンのかっこよさ
そしてベテランちが思考の高い人物の例として挙げていた人物がアジアンカンフージェネレーションのフロントマン...
後藤正文である。
中学生の運動会で「ソラニン」のサビに合わせて空手の型を学年全員で披露するという、斜め上な出し物があったのが私とアジカンの出会いだった。
ソラニンはアジカンの代表曲の一つである。
浅野いにおによるバンドを通じて人間模様を描いた漫画「ソラニン」の映画化で同タイトルの主題歌を担当し、広く知られる楽曲となった。
ソラニンの歌詞はアジカンの中で唯一後藤正文以外の作詞なのだが、歌詞のどこか遠い思い出や過去の別れ気分を反芻するような世界観に曲調がマッチした名曲。
話を戻そう。
後藤正文の思考の高さとは何か。
それはベテランち曰く、フェアネスらしい。
アジカンは活動として音楽の布教や後輩の育成などに精力的に活動している。
自主レーベル内で若手に機会を与え、より広く認められるチャンスを用意したりするために自分達の知名度をフェアに活用したりする姿勢が思考の高さがあり、かっこいいと言う。
ここまで彼の話を聞いて、なるほどロックで芯のある男なのだなと後藤正文について調べてみた。
そして分かったことがある。
この男、とんでもなく想像力が豊である。
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想像力のあるアーティスト
コロナ禍でのアーティスト活動のあり方について彼の考えたnoteではライブを行うべきかについて右に左にグワグワと、痛々しいほどに揺れ迷う様が綴られている。特にフェスについては、そのフェスを行わなかった場合のスタッフたちの顔が頭に浮かび、心身のほとんどをグワグワが占めているという。
音楽産業にとってコロナは大打撃だったろうが、スタッフやその他の関係者に向けて、ここまで深く想像力を働かせるは簡単じゃない。
例えば次の動画をみてほしい。
我が子を可愛がれないシングルマザー”こどもが気持ち悪い” 説教する芸能人と壮絶バトル Single mother who can't love her child
これを見て「なんて母親なんだ。最低だ」としか思えないのはもったいない。母親のダメっぷりに憤り、子供の未来を憂う以外の発想を持つのが想像力の一つかもしれない。
人は自分と、その周囲の当たり前しか受け入れられない。自分が子供時代、親に愛された育ったから、子供が生まれたらそうするのが当たり前となる。そしてその当たり前をしない人間に対してアレルギー反応が出る。
LGBT関連だと分かりやすいかもしれない。自分は当たり前に異性を好きになる。周りもみんな当たり前に異性を好きになる。だから同性を好きになる人間を簡単には理解できず、一昔前だと嫌悪の対象になることも多かった。(私は理解できると主張する人がいるかもしれないが、それはあなたの理解が進んだのではなく社会の理解が進んだだけで、単なる集団心理かもしれない。)
自分は子供ができたら当たり前に愛する。周りの親もみんなそうしてる。だから子供ができたら愛するのが当たり前。それができない人はひどい親で人間的に問題がある。
ここで想像してみる。
愛されたことのない人はどうやって愛せばいいのか。
では子供を産んではいけないのか。
だとしたら、その家の子供たちは生まれてこない方が幸せだったのか。
答えのぼやけた問題が山積みになるため、ほとんどの人はそんな自分以外の他人や、関わりの薄い社会に対して想像力を働かせることは難しい。
それでも悩みながら答えを表現しようとする想像力を持ったアジカンのようなバンドが紡ぐ音楽なら、全員の胸の内を代弁し互いに向き合うきっかけを与えてくれるかもしれない。
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