第67回グラミー賞、2025年 変革の証明となった一夜とは
現地時間 2月2日(火)にロサンゼルスのクリプト・ドット・コム・アリーナで、第67回グラミー賞受賞式が開催された。
今年1月7日にロサンゼルスのイートンとパシフィックパリーズで発生した大規模な山火事の影響で開催が危ぶまれていたが、無事に行われ多くの衝撃と感動を与える授賞式となった。
今年のグラミー賞で一番の話題を呼んだのは、間違いなくビヨンセの年間最優秀アルバム賞の受賞だ。
グラミー賞の歴代最多受賞者であるビヨンセだが、年間最優秀アルバム賞は4回ノミネートされるも受賞を逃してきた。
しかし、ついにカントリーアルバム『COWBOY CARTER』で長年の悲願であった年間最優秀アルバム賞の受賞を果たし、ビヨンセは21世紀以降にこの賞を受賞した初の黒人女性アーティストとなった。また、自身の持つ受賞最多記録も35に更新した。
2017年のグラミー賞で、ビヨンセと揃ってノミネートされたアデルが年間最優秀 アルバム賞を受賞した際のスピーチで、アデルが涙ながらに「今年の年間最優秀アルバム賞は絶対に『Lemonade』が取るべきだった」とグラミー賞のビヨンセに対する評価を批判するなど、受賞までの間にある意味での不遇を感じてきたはずであるビヨンセにとって、そして、そんな彼女を見続けたファンにとって、今回の受賞は様々な思いが込み上げる重要な位置づけとなったはずだ。
2024年ドレイクとのビーフで世界中で大きな話題を呼んだケンドリック・ラマーの 楽曲『Not Like Us』が年間最優秀楽曲賞、最優秀ラップ賞、最優秀レコード賞、最優秀ミュージック賞、最優秀パフォーマンス賞の5部門で受賞を果たした。
今回で21回目のグラミー賞受賞となるケンドリック・ラマーが、主要部門を受賞するのは今回が初めてというあまりにも意外すぎる話ではあるが、現代のヒップホップ界のキングと表されるケンドリック・ラマーがその地位を確立することになったのは間違いないだろう。
また、受賞した際のスピーチでは、「この賞を俺の街に捧げる」と故郷と彼を支え続けた人々への感謝の思いを表し、続けて「ラップミュージックほどパワフルな音楽を俺は知らない。若いアーティストたちもラップという芸術に誇りを持ってほしい」と、自身のルーツと文化に対する謙虚な姿勢を示した。
ケンドリック・ラマーの次を担う次世代ラッパーとして2024年大きな快進撃を見せたドーチーの3rd アルバム『Alligator Bites Never Heal』が最優秀ラップアルバム賞を受賞した。
これはローリン・ヒル、カーディー・Bに続く史上3人目となる女性アーティストの受賞である。
ドーチーがトロフィーを手に取ると「この賞は3人の女性が受賞しています。ローリン・ヒルとカーディ・B、そしてドーチーです。」と涙ながらに伝えた。そして彼女と同じアフリカ系の女性たちに向けて「今、私を見てくれている黒人女性へ、あなたなら何だってできることを伝えたい。ステレオタイプを許してはいけない。あなたがいる場所が、あなたを必要としている場所であり、そして私がその証明です。」と熱い思いを語った。
そして、授賞式ではアルバム収録 曲である『CATFISH』と『DANIAL IS A RIVER』を披露。ドーチーの圧巻的なパフォーマンスで会場を熱狂の渦に叩き込み、彼女が次世代ではなく現代の怪物ラッパーであることを証明してみせた。
今年1月4日に行われた「rock’in on sonic」に出演し、圧巻のステージで日本のオーディエンスを沸かせたセイント・ヴィンセントが、最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞、最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス賞、最優秀ロック・ソング賞の3部門を受賞した。
セイント・ヴィンセントは最優秀ロック・ソング賞のスピーチで「最初に美しい家族であり、美しい妻であるリア、そして美しい娘に感謝したい」と妻と娘の存在を明かした。
そして、LGBTQであるアーティストのノミネートに関して「昔からクィアのアーティストがいたわけではないが、特に今年は多くのクィアのアーティストが受賞したと思う。これはとても素晴らしいことであり、これからも共感しあい道徳的に歩んでいきたい」と喜びと決意のコメントを残した。
今年のグラミー賞授賞式でもう一つ大きな話題を呼んだ出来事がある。冒頭に述べた2021年からグラミー賞をボイコットしていた ザ・ウィークエンド がシークレットゲストとして出演したのだ。
ザ・ウィークエンドが登場する際に、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーのCEOを務めるハーヴィー・メイソン・ジュニアが姿を現し、ザ・ウィークエンドからの批判を重く受け止め、組織やシステムの改革を行っていることを具体的に説明した。
そして、CEOの紹介でザ・ウィークエンドがステージに現れた瞬間、会場全体が騒然となり、双方の和解とグラミー賞の改革が約束されたことをイメージさせる圧巻のサプライズパフォーマンスが披露された。
グラミー賞の存在意義
世界で最も権威のある音楽賞としてこれまでに様々な歴史を築いてきたグラミー賞だが、21世紀以降、賞そのもの自体の存在意義が問われるようになったことも事実である。 2021年にザ・ウィークエンドは、4週連続全米1位を獲得した傑作 アルバム「After Hours」やSpotifyで最も再生された 楽曲である『Bliding Lights』を生み出したものの、その年のグラミー賞にまさかの1部門もノミネートされず、ザ・ウィークエンドはニューヨークタイムズのコメントで「私の音楽をグラミーに提出することはない」とボイコット宣言。 他にもドレイクやエミネム、デュア・リパ、アデルなど多くの大物アーティストから黒人差別や女性蔑視などの不当な評価が行われているとグラミー賞批判がされてきた。 そんな存在価値が揺らぎはじめていたグラミー賞に今年は多くの注目を集めることとなった。ビヨンセの悲願

ケンドリック・ラマー 初の主要部門を受賞

ドーチー 史上3人目の快挙

セイント・ヴィンセントの告白

予期せぬサプライズ

さるべき評価
今年のグラミー賞は、ビヨンセやケンドリックラマー、ドーチーらの受賞のように、評価されるべきアーティストが評価された授賞式となった。 そして、グラミー賞が音楽を通して変わりゆく時代にフィットし、世界で最も権威のある特別な音楽賞であり続けることをアーティスト、そしてリスナーたちが前向きに願える重要な一夜になったはずだ。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/宅見将典(Masa Takumi)、「Kashira」がグラミー賞にノミネート!
第65回グラミー賞にて「最優秀グローバル・ミュージック・アルバム」を受賞した、作・編曲家でありアーティストの宅見将典が、Masa Takumi名義で2年振りに発表した「Kashira」(8月28日リリース)で、第67回グラミー賞「グローバル・ミュージック・パフォーマンス」部門にノミネートされた。
Masa Takumi 『Kashira』
2024.8.28配信リリース *各配信サイトにて
Produced by Lonnie Park
Compose & Arrangemet : Masanori Takumi
Featuring Artist : Ron Korb, Noshir Mody, Dale Edward Chung
Engineer : Hideki Kodera / Mastering Engineer : Ryoji Hata
Label : Utanashi Records (Fujipacific Music)
父と息子の絆を美しく壮大に彩る映画『氷室蓮司』の主題曲
宅見は、2023年2月のグラミー受賞により、文化庁長官表彰(国際芸術部門)の受賞や、Newsweek誌『世界に尊敬される日本人100』へも選出され、以降も、メインフィールドであるJ-popアーティストへの楽曲提供をはじめ、映画「告白 コンフェッション」(2024年5月公開)のサウンドトラックや、米国パラマウント社のライブラリー音楽の制作も手掛けるなど、国内外問わずその活動は幅広く多忙を極めているが、そんな中、かの大人気Vシネマシリーズ“日本統一”の最新映画『氷室蓮司』(2024年4月公開)の製作にあたり、当シリーズの主役でありプロデューサーでもある本宮泰風氏から熱烈なオファーを受け、映画主題曲として「Kashira」を書き下ろした。 本作でも、日本の伝統楽器と欧米のビートを見事に融合させ、メイン楽器にはアジアを代表する中国の民族楽器・二胡を据え、大陸の雄大さを感じる作品となっており、映画の中で描かれる父と息子の絆を美しく壮大に彩っている。 また、アートワークでは、“歩くパワースポット”と呼ばれる湘南乃風・SHOCK EYE氏の写真でジャケットをデザインしている。さらに、そのミュージックビデオは、(株)ニコンクリエイツの全面協力の下、ボリュメトリックビデオ技術による3D VFX映像にも挑戦し、最先端の映像作品を体感できる貴重な映像作品となっている。作品情報

Masa Takumi (宅見将典) プロフィール
第65回グラミー賞「最優秀グローバル・ミュージック・アルバム」受賞アーティスト 作編曲家/マルチ・インストゥルメンタル・アーティスト 音楽への目覚めは小学校でのブラスバンド部のトランペットにはじまる。13歳の時に出会ったXJAPANのYOSHIKIの音楽に影響をうけ、以来バンドを組みながら作曲を始め、2000年3ピース編成のロックバンド"siren"でBMG JAPANよりメジャーデビュー。バンド脱退後は、作編曲家、マルチ・インストゥルメンタル・アーティストとして活動し、数々の楽曲提供、プロデュース、映像音楽などを手掛けており、2023年には第65回グラミー賞「最優秀グローバル・ミュージック・アルバム」受賞し、日本政府からも文化庁長官表彰(国際芸術部門をも受賞。グラミー賞受賞以降、映画「告白 コンフェッション」など、映画音楽にも携わっている。他、米国パラマウント社へのライブラリー音楽提供もなど、国内外問わず幅広く精力的に活動している。 <受賞歴(抜粋)> 第53回日本レコード大賞・優秀作品賞受賞 作品:AAA「CALL」作曲 第61回日本レコード大賞・優秀作品賞受賞 作品:DA PUMP「P.A.R.T.Y. ~ユニバース・フェスティバル~」作曲、編曲 第65回グラミー賞・最優秀グローバル・ミュージック・アルバム受賞 作品:Masa Takumi「Sakura」BTS、グラミー賞 受賞ならずもファンへの感謝のコメント。「Dynamite」パフォーマンスやファンの反応とは…
第63回グラミー賞で受賞を期待されていたBTS(防弾少年団)だが、惜しくも「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」部門での受賞は逃す事になった。
これらの受賞を獲得したのは、レディー・ガガ&アリアナ・グランデの「RAIN ON ME」だったが、肉薄の結果だったと言えるだろう。
また、グラミー賞の授賞式では、BTSはノミネート楽曲「Dynamite」の歌唱パフォーマンスを披露し、受賞の結果はともあれファンからの熱い視線を集めていた。彼らが実際にパフォーマンスを披露した会場は、韓国のライトアップされた高層ビルの屋上等から配信されていたとの事で、新型コロナウイルス感染症の流行で、音楽ライブのパフォーマンスが難しい中でもファンの期待に応える形となった。
そして、グラミー賞の発表の際に、BTSメンバーやファンからは様々な反応がTwitterに寄せられていた...
※ Twitter投稿動画1: https://twitter.com/BTS_twt/status/1371324800157712384
※ Twitter投稿動画2: https://twitter.com/shookynuna/status/1371414994537959427
▼ 悲願のグラミー賞受賞ならずも...
Twitter上では、BTSメンバーの反応に加え、ファンから「(受賞は逃したけど)とても誇りに思うわ」という様な投稿も寄せられており、実際のところ世界的にもBTS(防弾少年団)のグラミー賞 受賞がどれ程期待されていた事かが想像できる様な反応が垣間見えた。
また、受賞結果を受けて、BTSメンバーのジミンはコメントを残しており、「貴重な経験ができました。心からありがとう。幸せです。ARMY(BTSファンの呼称)」とTwitter上でも発信する等、感謝の気持ちを忘れていない様子であった。悲願のグラミー賞受賞を逃した事は残念だが、この様な謙虚な姿勢を見る事ができただけでも、世界中のファンにとっては喜ばしい事であったのかも知れない。
今後も、グラミー賞だけでなく世界的な音楽活動を展開していくBTSだが、ますます注目だ。
--
メディア運営:Evening Music Records Inc.
Tool、グラミー最優秀メタル・パフォーマンス受賞!グラミーは面白い!
◆Tool、グラミー最優秀メタル・パフォーマンス受賞!グラミーは面白い!
Toolが第62回グラミー賞において最優秀・メタルパフォーマン賞を受賞した。
彼らはこれまで2回同じ賞を受賞しており、今回で3回目となる。今年のグラミー賞といえばビリー・アイリッシュが4部門を受賞したというニュースで持ちきりになっていたが、グラミー賞はポップソングにとどまらない、ロックにも焦点を当てているのだ。近年ではToolはDownload Festivalなど大型音楽フェスでのヘッドライナーを務めるなど、ロック界での大御所である。
◆グラミー賞から見る、ロックの衰退とポップの躍進
近年の最優秀レコード賞受賞者は、ポップス、ヒップホップ、ファンク、R&Bといったジャンルのアーティストが並ぶ。
もともとグラミー賞というものはロック・ミュージックとは少し縁遠いものが歴史的にあり、その遠い距離を近づけるべく1989年に最優秀ハード・ロック・ヘヴィ・メタルといったカテゴリーを加えている経緯がある。近年の最優秀グラミー賞にロックバンドが現れないからといって、ロックの衰退を意味付けることは到底浅はかであるが、少し寂しいのも事実だ。
今のグラミー賞において、最優秀グラミー賞にふさわしいアーティストはどれほどいるのだろうか。また、これから現れるのであろうか。そういった意味で、グラミー賞は一つの指標であるとも考える。その年の素晴らしい楽曲が権威あるグラミー賞というものによって、世界中に知らしめられるのだ。
最も、今年のグラミー賞において最優秀ラップ・アルバムを受賞したタイラー・ザ・クリエイターは権威じみたグラミー賞の意義について懐疑の言葉を残したという事実もある。権威のあることは事実だが、絶対的ではないというのがグラミー賞の実情でもある。
---
運営:Evening Music Records株式会社
タイラー・ザ・クリエイター、グラミー最優秀ラップアルバムを受賞!HIPHOPの王者へ
◆タイラー・ザ・クリエイター、グラミー最優秀ラップアルバムを受賞!HIPHOPの王者へ
先日行われた第62回グラミー賞において、タイラー・ザ・クリエイターのアルバム「IGOR」が最優秀ラップ・アルバムを受賞した。
同賞のノミネートにはミーク・ミルの「Championships」、YBN Cordgeの「The Lost Boy」、21 Savageの「i am >i was」、Dreamvilleの「Revenge Of The Dreamers III」などがノミネートされており、その中での堂々の受賞となった。
ヒップホップという長い歴史を持つ音楽ジャンルであるが、発展の経緯などから考えても一般的にはアンダーグラウンドな印象のあるジャンルである。そういったジャンルにもグラミーは焦点を当てて、こういった賞を用意している。改めてグラミー賞が威厳のある賞であることを理解できる。アーティストにとっても大事な存在なのだ。
◆タイラー・ザ・クリエイター本人による、授賞式でのコメントが印象的。
最優秀ラップ・アルバムを受賞したタイラー・ザ・クリエイターは受賞した時のスピーチを行なっている。そのスピーチがまた印象的である。
彼は母親、友人、家族、スタッフ、レーベル、ファンといったあらゆる人物、これまで自分と関わってきた全ての人に感謝を述べている。それぞれに感謝を述べるにあたって「俺のクレイジーなアイデアを信じてくれてありがとう。」といった言葉を添えている。改めて考えさせられる言葉である。
ヒップホップというアングラな世界に飛び込み、自身の音楽性を披露するというのはとても勇気がいることであり、ある意味変わり者であるとも言える。そんな自分を信じて、ついてきてくれた人がいることに彼は心から感謝しているのだ。彼ほどビッグなアーティストになると、その本質のありがたさを忘れてしまう人も多くいるのではないか、そういった忘れた心を想起する、そういったきっかけに彼の言葉はなり得ると思う。
スピーチには「俺らラップの世界で完全に「受け入れられた、認められた」と感じたことがなかったんだ。だからみんなが俺のそばにいてくれて、ここまで連れて来てくれたと思ってる。本当にありがとう。」という言葉も添えられている。
---
運営:Evening Music Records株式会社