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第67回グラミー賞、2025年 変革の証明となった一夜とは
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第67回グラミー賞、2025年 変革の証明となった一夜とは

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現地時間 2月2日(火)にロサンゼルスのクリプト・ドット・コム・アリーナで、第67回グラミー賞受賞式が開催された。 今年1月7日にロサンゼルスのイートンとパシフィックパリーズで発生した大規模な山火事の影響で開催が危ぶまれていたが、無事に行われ多くの衝撃と感動を与える授賞式となった。

グラミー賞の存在意義

世界で最も権威のある音楽賞としてこれまでに様々な歴史を築いてきたグラミー賞だが、21世紀以降、賞そのもの自体の存在意義が問われるようになったことも事実である。 2021年にザ・ウィークエンドは、4週連続全米1位を獲得した傑作 アルバム「After Hours」やSpotifyで最も再生された 楽曲である『Bliding Lights』を生み出したものの、その年のグラミー賞にまさかの1部門もノミネートされず、ザ・ウィークエンドはニューヨークタイムズのコメントで「私の音楽をグラミーに提出することはない」とボイコット宣言。 他にもドレイクやエミネム、デュア・リパ、アデルなど多くの大物アーティストから黒人差別や女性蔑視などの不当な評価が行われているとグラミー賞批判がされてきた。 そんな存在価値が揺らぎはじめていたグラミー賞に今年は多くの注目を集めることとなった。

ビヨンセの悲願

今年のグラミー賞で一番の話題を呼んだのは、間違いなくビヨンセの年間最優秀アルバム賞の受賞だ。 グラミー賞の歴代最多受賞者であるビヨンセだが、年間最優秀アルバム賞は4回ノミネートされるも受賞を逃してきた。 しかし、ついにカントリーアルバム『COWBOY CARTER』で長年の悲願であった年間最優秀アルバム賞の受賞を果たし、ビヨンセは21世紀以降にこの賞を受賞した初の黒人女性アーティストとなった。また、自身の持つ受賞最多記録も35に更新した。 2017年のグラミー賞で、ビヨンセと揃ってノミネートされたアデルが年間最優秀 アルバム賞を受賞した際のスピーチで、アデルが涙ながらに「今年の年間最優秀アルバム賞は絶対に『Lemonade』が取るべきだった」とグラミー賞のビヨンセに対する評価を批判するなど、受賞までの間にある意味での不遇を感じてきたはずであるビヨンセにとって、そして、そんな彼女を見続けたファンにとって、今回の受賞は様々な思いが込み上げる重要な位置づけとなったはずだ。

ケンドリック・ラマー 初の主要部門を受賞

2024年ドレイクとのビーフで世界中で大きな話題を呼んだケンドリック・ラマーの 楽曲『Not Like Us』が年間最優秀楽曲賞、最優秀ラップ賞、最優秀レコード賞、最優秀ミュージック賞、最優秀パフォーマンス賞の5部門で受賞を果たした。 今回で21回目のグラミー賞受賞となるケンドリック・ラマーが、主要部門を受賞するのは今回が初めてというあまりにも意外すぎる話ではあるが、現代のヒップホップ界のキングと表されるケンドリック・ラマーがその地位を確立することになったのは間違いないだろう。 また、受賞した際のスピーチでは、「この賞を俺の街に捧げる」と故郷と彼を支え続けた人々への感謝の思いを表し、続けて「ラップミュージックほどパワフルな音楽を俺は知らない。若いアーティストたちもラップという芸術に誇りを持ってほしい」と、自身のルーツと文化に対する謙虚な姿勢を示した。

ドーチー 史上3人目の快挙

ケンドリック・ラマーの次を担う次世代ラッパーとして2024年大きな快進撃を見せたドーチーの3rd アルバム『Alligator Bites Never Heal』が最優秀ラップアルバム賞を受賞した。 これはローリン・ヒル、カーディー・Bに続く史上3人目となる女性アーティストの受賞である。 ドーチーがトロフィーを手に取ると「この賞は3人の女性が受賞しています。ローリン・ヒルとカーディ・B、そしてドーチーです。」と涙ながらに伝えた。そして彼女と同じアフリカ系の女性たちに向けて「今、私を見てくれている黒人女性へ、あなたなら何だってできることを伝えたい。ステレオタイプを許してはいけない。あなたがいる場所が、あなたを必要としている場所であり、そして私がその証明です。」と熱い思いを語った。 そして、授賞式ではアルバム収録 曲である『CATFISH』と『DANIAL IS A RIVER』を披露。ドーチーの圧巻的なパフォーマンスで会場を熱狂の渦に叩き込み、彼女が次世代ではなく現代の怪物ラッパーであることを証明してみせた。

セイント・ヴィンセントの告白

今年1月4日に行われた「rock’in on sonic」に出演し、圧巻のステージで日本のオーディエンスを沸かせたセイント・ヴィンセントが、最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞、最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス賞、最優秀ロック・ソング賞の3部門を受賞した。 セイント・ヴィンセントは最優秀ロック・ソング賞のスピーチで「最初に美しい家族であり、美しい妻であるリア、そして美しい娘に感謝したい」と妻と娘の存在を明かした。 そして、LGBTQであるアーティストのノミネートに関して「昔からクィアのアーティストがいたわけではないが、特に今年は多くのクィアのアーティストが受賞したと思う。これはとても素晴らしいことであり、これからも共感しあい道徳的に歩んでいきたい」と喜びと決意のコメントを残した。

予期せぬサプライズ

今年のグラミー賞授賞式でもう一つ大きな話題を呼んだ出来事がある。冒頭に述べた2021年からグラミー賞をボイコットしていた ザ・ウィークエンド がシークレットゲストとして出演したのだ。 ザ・ウィークエンドが登場する際に、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーのCEOを務めるハーヴィー・メイソン・ジュニアが姿を現し、ザ・ウィークエンドからの批判を重く受け止め、組織やシステムの改革を行っていることを具体的に説明した。 そして、CEOの紹介でザ・ウィークエンドがステージに現れた瞬間、会場全体が騒然となり、双方の和解とグラミー賞の改革が約束されたことをイメージさせる圧巻のサプライズパフォーマンスが披露された。

さるべき評価

今年のグラミー賞は、ビヨンセやケンドリックラマー、ドーチーらの受賞のように、評価されるべきアーティストが評価された授賞式となった。 そして、グラミー賞が音楽を通して変わりゆく時代にフィットし、世界で最も権威のある特別な音楽賞であり続けることをアーティスト、そしてリスナーたちが前向きに願える重要な一夜になったはずだ。 -- EVENINGサイト:https://evening-mashup.com/ Web3 音楽ストリーミング:https://w3.evening-mashup.com/
タイラー・ザ・クリエイター、グラミー最優秀ラップアルバムを受賞!HIPHOPの王者へ
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タイラー・ザ・クリエイター、グラミー最優秀ラップアルバムを受賞!HIPHOPの王者へ

◆タイラー・ザ・クリエイター、グラミー最優秀ラップアルバムを受賞!HIPHOPの王者へ 先日行われた第62回グラミー賞において、タイラー・ザ・クリエイターのアルバム「IGOR」が最優秀ラップ・アルバムを受賞した。 同賞のノミネートにはミーク・ミルの「Championships」、YBN Cordgeの「The Lost Boy」、21 Savageの「i am >i was」、Dreamvilleの「Revenge Of The Dreamers III」などがノミネートされており、その中での堂々の受賞となった。 ヒップホップという長い歴史を持つ音楽ジャンルであるが、発展の経緯などから考えても一般的にはアンダーグラウンドな印象のあるジャンルである。そういったジャンルにもグラミーは焦点を当てて、こういった賞を用意している。改めてグラミー賞が威厳のある賞であることを理解できる。アーティストにとっても大事な存在なのだ。 ◆タイラー・ザ・クリエイター本人による、授賞式でのコメントが印象的。 最優秀ラップ・アルバムを受賞したタイラー・ザ・クリエイターは受賞した時のスピーチを行なっている。そのスピーチがまた印象的である。 彼は母親、友人、家族、スタッフ、レーベル、ファンといったあらゆる人物、これまで自分と関わってきた全ての人に感謝を述べている。それぞれに感謝を述べるにあたって「俺のクレイジーなアイデアを信じてくれてありがとう。」といった言葉を添えている。改めて考えさせられる言葉である。 ヒップホップというアングラな世界に飛び込み、自身の音楽性を披露するというのはとても勇気がいることであり、ある意味変わり者であるとも言える。そんな自分を信じて、ついてきてくれた人がいることに彼は心から感謝しているのだ。彼ほどビッグなアーティストになると、その本質のありがたさを忘れてしまう人も多くいるのではないか、そういった忘れた心を想起する、そういったきっかけに彼の言葉はなり得ると思う。 スピーチには「俺らラップの世界で完全に「受け入れられた、認められた」と感じたことがなかったんだ。だからみんなが俺のそばにいてくれて、ここまで連れて来てくれたと思ってる。本当にありがとう。」という言葉も添えられている。 --- 運営:Evening Music Records株式会社