ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024オープニングアクトに登場した“HINONABE”の音楽とその世界観に迫る
2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14日から16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。
その出演者の中で、筆者が特に注目している次世代学生バンドが「HINONABE」である。
彼らは、2024年8月10日のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 にオープニングアクトとして出演し、さらに独特の世界観と迫力ある映像で注目を集めた「裸体」のミュージックビデオは、YouTube再生回数が3万回を超えるなど大きな反響を呼んでいる。
そんな彼らの楽曲に込められた想いや楽曲制作、ライブの背景に迫るべく、メンバー4人のうち、磯 敢太さん(Vo/Gt)、菊地 楓さん(Gt/Cho)、佐藤 ケンゾウさん(Dr/Cho)にお話を伺うことができた。
新たな目標が見えたフェス出演
__TOKYO CALLINGやSOUND SHOCKを振り返り、現在の心境を教えてください。 磯(Vo/Gt):サーキットイベントということで新しいお客さんもたくさん来るので、今までやってないようなライブをしたり、少ない曲の中でも少し変化をつけたりして、楽しく激しいライブができたので、すごくいい夏の思い出になりました。 菊地(Gt/Cho):今まで出たことのない規模の大きなフェスやサーキットに色々と出ることができて、嬉しかったです。 佐藤(Dr/Cho):第一に、出たことがなかったサーキットに出られたことが嬉しかったのと、自分たちのやっている音楽をいろんな人に見てもらえる場っていう意味でも、そういう機会が嬉しかったし、もっと知ってもらいたいなという思いが、嬉しい気持ちの中にも強くありました。 __今年8月のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 に出演した時の心境はどうでしたか。 佐藤(Dr/Cho):ロッキンは誰もが知ってるぐらい大きいフェス、夏の1番のフェスっていう認識なんですけど、そのようなフェスにオープニングアクトとして出演できたことがまず光栄でした。嬉しい気持ちはもちろんのこと、自分たちの年齢で簡単に立てるようなステージではないと思うので、貴重な経験ができて、これからも頑張っていこうっていうモチベーションにも繋がった気がします。 菊地(Gt/Cho):今回はロッキンのオーディションで勝ち上がって出演できた形になるんですけど、今後の目標にも繋がる良い経験になったと思っています。 あと、ちょうど自分の20歳の誕生日とロッキンの日が重なってて。お客さんにも「おめでとう」と言ってもらえたことはすごく嬉しかったですね。 磯(Vo/Gt):ロッキン、初めての規模感のキャパ、初めての野外ライブで。そんな大きいフェスに初めて出られるということで、不安もめちゃくちゃあって、もう本番直前まですごい緊張もあったんですけど、いざステージに立つと、すごく気持ちよかったですね。あとはオープニングアクトとして気合いももちろん入ってましたが、これがまたオープニングアクトじゃない形として出られた時、もう楽しみだなっていうのが思い浮かぶステージでしたね。メンバーとの出会いや影響を受けた音楽
__バンドを結成されたきっかけやメンバーとの出会いを教えてください。 磯(Vo/Gt):僕とギターの楓(菊地)は元々音楽に一切触れてなかった人間で、全然違う部活をやってたんですけど。僕がオリジナル曲を作りたいと思って楓を誘って、その後ベースの優之介が入ってきて。活動していく過程で、高校卒業した時に前のドラムが脱退して、そこで募集をした時にケンゾウが来てくれて、今のメンバーで活動をしている状態です。 __皆さん元々お知り合いだったのですか。 磯(Vo/Gt):ギターともベースとも高校で初めて会いました。僕が高校に入る前からカバー曲よりオリジナル曲を作りたいなと考えていたので、それがきっかけになって、オリジナル曲を多く作る高校生バンドとして活動するようになったんだと思います。 __結成されたのはいつ頃ですか。 磯(Vo/Gt):今のHINONABEという名前になる前のバンドでは2020年〜2021年頃から活動していて、今のメンバーで本格的に始めたのは2024年、今年からです。 __佐藤さんはどのようなきっかけで参加することになったのですか。 佐藤(Dr/Cho):元々高校時代の彼らを見たことがあったんですけど、ちょっと興味があって。それでずっと見ていたら、ドラムが脱退しちゃうって話で、メンバーを探してるって聞いて。自分の感性的に、高校生でこういう音楽をしてるのは本当にすごいなと思っていたので、そこから、入らせてもらおうかなっていう経緯で自ら連絡しました。インスピレーションを受けているアーティスト
__影響を受けてるアーティストや尊敬しているアーティストはいますか。 菊地(Gt/Cho):高校に入るまでは全く音楽に触れてなかったのですが、音楽を始めてからヨルシカさんにハマって、高校の時ずっと好きでした。今はリーガルリリーさんや羊文学さんが好きです。 __高校入学してからギターも始めたのですか。 菊地(Gt/Cho):そうですね。 磯(Vo/Gt):僕はボカロを中学の時から聴いていて。高校に入ってからは、カラオケトップランキングとかに入ってるような曲ばかりを聞いたんですけど、NEEさんっていうバンドがきっかけで、アンダーグラウンドな曲を聴くようになりました。そこからより一層音楽の面白さを知った気がしています。僕にとってはNEEさんがでかいですね。 1人で楽曲を作ってる時には、できる限りその期間は1つのアーティストだけを聴かないようにしてるんですけど、サカナクションさんとかカネコアヤノさんとかは、影響というか、何回も戻ってきます。苦戦した時に、どうしたらこういう雰囲気を出せるんだろうかっていう時には、助けてもらったり、ある意味ちょっと気持ちを戻してもらったりしてますね。 __磯さんも高校に入ったタイミングで楽器を始めたのですか。 磯(Vo/Gt):そうです。高校に入る前は全然楽器とかは一切やってなくて。鼻歌はやってました(笑)。 佐藤(Dr/Cho):逆に僕は3歳ぐらいからピアノを習わせてもらってたので、割と物心ついた頃には音楽に触れてたので、明確に影響を受けたアーティストが誰かと聞かれると、覚えていないっていうのが答えです。ずっと音楽には触れていたけど、バンド系の音楽には触れてなくて。でも、いま僕のドラムに影響を与えているアーティストでいうと、絶対にルサンチマンっていうバンドを答えますね。 __ドラムはいつ頃始めたのですか。 佐藤(Dr/Cho):中学校から高校まで吹奏楽をやってたんですけど、ドラムはそこでちょっと触るぐらいで、ちゃんとやり始めたのは18歳の時で、2、3年前ぐらいですね。独自の世界観を生み出す楽曲制作
HINONABEの楽曲には一貫したテーマがあるのか、作詞作曲を担当する磯さんに尋ねると、彼は「愛」を大きな題材にすることが多いと語ってくれた。彼らは「愛」のさまざまな側面を追求し、その要素を楽曲の独特な世界観に取り込んでいる。そんな彼らの楽曲制作の過程に迫ってみた。 __楽曲制作はどのように行われていますか。 磯(Vo/Gt):楽曲制作は、僕がパソコンで全楽器を軽く入れたデモをメンバーに提出して、そこからはメンバーとアレンジを長時間かけてやってきたのが今までの作り方ですね。 __楽曲の世界観に衝撃を受けたのですが、どこからインスピレーションを得ていますか。 磯(Vo/Gt):抽象的になるんですけど、景色や匂い、温度とか、空間的な要素で曲作りが変わると思っています。また、ギターの種類とか出すアンプの音とかで、曲作りの雰囲気、モチベーションも変わりますね。逆に「生で音を出すからこういう曲ができる」という時もあったり、その時々で変わるのを高校生の頃くらいに気づいてから、1つの楽器でずっと作ったり、初めからパソコンでやったりというようなずっと同じ方法では作ってない気がします。 __歌詞も印象的ですが、どのように考えているのですか。 磯(Vo/Gt):文学に精通してるわけではないんですけど、小さい頃から本を読むのが好きだったり、漫画とかアニメとか映画が好きで。歌詞を書く時でも、気持ちを主体に出したい曲の時は気持ち主体で出して、言葉にできない雰囲気や世界観がある時は、変にその世界観を括らないように、その世界観が浮かんだ時にそばにあるものを風景として歌詞に織り込んだり。それプラス自分の感情とか、曲を作ってる時の温度感とかを一緒に歌詞に込めてますね。 __アレンジ面で意識していることはありますか。 菊地(Gt/Cho):アレンジでは、ボーカルメロディー、他のバンドメンバーのリズム感、自分の音の並び方を意識してて、自分のリードフレーズに関しては音の繋がりをよく意識してアレンジしてます。いつも楽譜ソフトでアレンジするんですけど、全体をまとめて聴いた時に聴きやすく感じるかどうかを大切にしています。 佐藤(Dr/Cho):僕が1番考えてるのは、ボーカルを立たせるのはもちろんのこと、リズムを刻みつつも、リードギターが出してるフレーズに寄り添うようなドラムをしたり、ベースが動いた時にはそれについてくじゃないですけど、それに沿ったり、バンドとしての一体感を大事にしてます。 磯(Vo/Gt):アレンジは技量を詰め込みすぎても、それが楽曲と合ってない時に、その世界観を崩してしまうこともあると思っているので、そこは変に喧嘩しないようにしたいなと思っています。また、曲作りでも一緒になるんですけど、すごく綺麗な音ばかりを使いたいとは思ってなくて、汚くてもいい音があると思ってるので、使用する音も意識しています。その中でも、全部の音やアレンジ、構成、全てに、後から聞かれた時に意味を伝えられたり、そういうのを具現化できるような範囲内でアレンジをしようとは思っています。ここでため(間)を作ったり、息を止めたりという部分には、こういう意味があるんだという風に、誰にでもわかりやすく伝えられるぐらい、堂々としたアレンジや音作りにしようって思っています。愛の二面性を表現した「裸体」
__「裸体」という楽曲が注目されたと思いますが、こだわったポイントはありますか。 磯(Vo/Gt):この楽曲は高校生の時に作ったものなんですけど、自分たちの曲の中でも、特にメロディーやギターの音が聴きやすく、かっこよくできたとは思っていますね。この「裸体」は元々「人間失格」っていう違う楽曲名だったんですけど、それだと聴く人がそのタイトルに引っ張られてしまうのもどこか違うなということで「裸体」という名前にして。この楽曲もテーマは「愛」なんですが、愛にも気持ち悪い部分と、綺麗だと思う部分があると思っていて。そこで裸も、愛し合う時は裸になるし、かといって普通に裸で街を歩いてたら気持ち悪がられるし、みたいな。そういう二面性がある部分を表現したいなと思ったときに、1番自分がその時に身近にあったのが、「裸」っていう題材だったのかなということで、「裸体」という楽曲名にしました。 __ミュージックビデオの制作においてこだわった点はありますか。 磯(Vo/Gt):ミュージックビデオの制作では、監督さんと色々お話をしたり、撮影中もモニターで確認させてもらいながら進めました。汚い、気持ち悪いような、「いびつさ」っていうのを、綺麗に撮りたいというところに関して苦戦しつつ、結果かっこよく仕上げてもらったので、それはすごい感謝ですね。途中で映像が激しく変わる部分では、自分のボーカルとしての動きもそうですけど、あんまり日常では見ない、いびつな動きを取り入れました。日常ではしない動きを、楽器を持っていたり、ライブ中だとできちゃうので、そういう動き方は意識しましたね。 楽曲「裸体」で表現された「愛」の二面性を示す世界観は、楽曲の隅々にまで緻密に作り上げられており、彼が語る「いびつさ」を美しく映し出したミュージックビデオも非常に印象的だ。ぜひ、楽曲に込められた深い思いを感じながら、一度聴いてみてほしい。 YouTube - 裸体 / HINONABE (Music Video) : https://youtu.be/nM17h2AQdpsライブで作り上げる一体感のある空間
__ライブパフォーマンスにおいて大事にしていることはありますか。 磯(Vo/Gt):少し前まではどちらかというと独りよがりというか、自分たちが気持ちよければいいや、そこに楽曲が持ってるパワーをお客さんにぶつけようっていうライブの仕方をしてたんですけど、最近になってお客さんもお金を払って見に来てくれてるし、いつでもできるライブをしちゃダメだなっていう気持ちがメンバー内でも強くなって。コンディションとかそういうの関係なしに、その時、その空間だから出せるライブ。仮に喉が枯れてたら枯れてるから出せるっていうような、ライブを全部プラスに持っていって、お客さん自体も生活の中でプラス要素になってくれるように、っていうことを心がけてやってますね。 菊地(Gt/Cho):ライブだとお客さんの表情を見て確認するっていうのを最近は意識してるようにしていますね。こだわっている部分だと、ギターの音作りではお客さんが聴きやすい音量感を気を付けたりしてます。 佐藤(Dr/Cho):磯の話に通ずるんですけど、ライブ感を大事にしてるつもりでいて。やっぱりドラムは、自分が出すテンポで曲の速さが決まったりとか、自分のテンション感でお客さんのノリが変わったりするので、自分が最初にテンション感を出さないとっていう気持ちもあって。動きだったりとか、それこそボーカルを見たりとか、お客さんの反応を一緒に楽しんだりとか。楽曲を聴くだけじゃなくて、ライブを楽しませるような考え方はいつも持っています。 ライブではお客さんの反応や一体感を何より大切にしているという。その瞬間、その場所でしか味わえない熱気や空気感、テンションがダイレクトに伝わってくるはずだ。ぜひ、実際に足を運び、その瞬間を体感してほしい。聴いてくれる方々が誇れるバンドに
__今後の展望、ファンの方やこれから聴いてくれる方に向けてのメッセージをお願いします。 磯(Vo/Gt):もちろん変わらず曲はいっぱい作っていきたいし、今しか作れないものを作っていきたいし、そこに意味があると思っています。常に楽曲を作って、今応援してくれてるファンの方たちが自分たちのバンドの名前を言うのが恥ずかしくないような、誇れるバンドになりたいですね。ファンの方たちに向けては、曲をリリースするにしろ、ライブをするにしろ、そうやって聴いてくれてる方のためにやってるというか。そのファンの方たちの時間を絶対に無駄にしないように、悪影響を及ぼさない、良い影響を及すバンドになるので、楽曲からも色々なことを汲み取って、日々のプラスになってくれていれば嬉しいです。 菊地(Gt/Cho):もっとみんなに知ってもらいたいし、応援してもらえるバンドになりたいですね。ファンの方には今、古参でいられることが嬉しいと思ってもらえる、最近知ってくれた方には自慢にできるようなバンドになります。 佐藤(Dr/Cho):具体的にどこのステージに立ちたいとかっていう明確な目標はないんですけど、 磯も楓も言ってるように、名前を出したら知ってるって言ってもらえるような、そんな規模感のバンドになりたいなって思ってますね。ファンの方々に対しては聴いてくださったり、見てくださったりしてる方々がいるから、僕らもライブができてたり、楽曲を作れていたり、それをモチベーションにしていたりするので、今使ってくれてる時間だったり、聴いてくれてる方の心を無駄にしないように、これからその恩じゃないけど、楽曲やライブで返していけるようなバンドになりたいので、応援していてほしいです。JAPAN JAM 2024オープニングアクト出演を果たした「ポルトギース」の魅力に迫る
2024年8月27日に開催された、学生バンドが中心に出演する「SOUND SHOCK」や、9月14~16日にかけて新宿・下北沢・渋谷の3地域で行われた大規模サーキットフェス「TOKYO CALLING」など、多くのアーティストが集まるイベントが続々と開催された。
その出演者の中で、筆者が特に注目する次世代学生バンドが「ポルトギース」だ。
2024年5月に「JAPAN JAM」のオープニングアクトとして出演したことでも注目を集め、彼らの楽曲は、聴く人に情景を浮かばせるリアリティのある歌詞、思わず口ずさみたくなる耳に残るメロディ、そして心地よいリズム感が特徴だ。
今回は、その魅力に迫るべく、メンバーの中から中村隆太郎さん(Vo/Gt)と竹澤地洋さん(Ba)にインタビューを行い、楽曲制作へのこだわりやライブにかける熱意についてお話を伺うことができた。