甲田まひる、23歳バースデーにバンド編成の初ワンマンライブを開催
甲田まひるが5月24日、東京・渋谷Star loungeにて、自身初となるワンマンライブ「HAPPY MAPPY DAPPY -23yo-」を開催した。以下、当日の様子をレポートする。
16歳の終わりにジャズピアニストとしてデビューし、20歳でシングル「California」でシンガーソングライターとしてデビューした甲田まひる。ちょうどコロナ禍とメジャーデビューが重なったこともあり、これまではあまりライブの機会に恵まれてこなかった。
本格的なお披露目は昨年8月に1stアルバム『22』のリリースに合わせて東京・ADRIFTで行われたショーケースライブイベント「甲田まひる 1st FULL ALBUM “22” SHOWCASE Supported by InterFM」が挙げられるが、それ以外は、購入者限定のリリースイベントや他アーティストの対バン出演などが主であり、自身を100%プレゼンできる機会は限られていた。
本人も「ライブをやりたい」と様々なインタビューで述べていたように、このライブを長いこと待ち望んでいただろう。
その思いはファンも同じだ。モデルや役者などいくつもの顔を持つ甲田まひるには、各分野にファンがいるが、会場である渋谷Star loungeには入りきらないほどのオーディエンスが押しかけ、開演前からフロアは熱気でいっぱいだった。
新曲「れんあいパン」も初披露
ライブは「点火」を意味する自己紹介的な楽曲「Ignition」のしっとりとした弾き語りからスタート。途中からドラム、ベース、キーボードのバンドセットが入り、生楽器が気持ち良く響く。彼女にとって初めてのバンドセットだが、ずっと前からこのスタイルでライブをしてきたかのような自然な始まりだ。 続けて、ポップなメロディと甲田ならではの展開の面白さが光る「CHERRY PIE」を早くも投下してライブ冒頭からフロアを盛り上げる。TVドラマ『今夜すきやきだよ』OP主題歌として書き下ろされた楽曲がバンドセットで歌われると、メロディの良さやラップの面白さが引き立てられ、より存在感を持って聴き手の身体に迫ってくる。オーディエンスは拍手と歓声で応え、フロアはさらなる熱気に包まれる。 「『HAPPY MAPPY DAPPY -23yo-』へようこそ。今日で私、23歳になるんですけど、今日を終えないと実感が湧かないので、みなさんとライブを楽しんで、最後の曲を歌い終わった後に23歳になりたいと思います。最後までジェットコースターみたいにあっという間に過ぎちゃうと思うけど、ついてくる準備できてますか?できてんのかー!?聞こえないぞー!?」 こんな煽りも、初ワンマンとは思えないほど様になっている。「マジで外野がうるさいと思うことがあるかもしれないけど、今日はそのストレス全部ここに置いて帰ってください」という呼び込みで始まった「Ame Ame Za Za」から「ごめんなさい」、自身のスタイルをドープなサウンドに乗せてラップする「SECM」など、Bopな(「めっちゃ踊れる」を意味するスラング)楽曲を続けることでオーディエンスの身体を揺らす。このあたりの楽曲をバンドセットで聴くと、ステージにいるのは勢いのあるミクスチャーロックバンドなのではないか、という気がしてくる。 1週間前にリリースされたばかりのキュートな新曲「れんあいパン」もこの場で初披露。オーディエンスにコール&レスポンスのやり方をレクチャーした上で、甲田が小学生の頃から世話になっているというオカモトコウキ(OKAMOTO’S)をゲストとして呼び込み、大きな拍手の中で演奏が始まる。コール&レスポンスはばっちり決まり、オカモトコウキのギターが小気味良いグルーヴを与える。このキュートな新曲はこの日の中盤の山場になった。 「Sugar=High」を挟んでオカモトコウキが退出すると、続いて甲田が「最高のラッパー」と評価するSANTAWORLDVIEWが登場し、アルバム『22』Deluxe Editionに収録された「M feat.SANTAWORLDVIEW」を披露。SANTAWORLDVIEWの硬いラップとふたりの見事な掛け合いに、フロアのヴァイブスはさらに上がっていく。本編ラストは「らぶじゅてーむ」
SANTAWORLDVIEWが退出し、レゲトンのビートに透明なボーカルを乗せる「Take my hands 〜君となら〜」を挟んだ後、「次の曲は、ちょっと人数足りないかも? ギター弾ける人いる?」と再びオカモトコウキを呼び込み、KREVAの「音色」を披露。情緒豊かなギターが楽曲に彩りを与えたこともさることながら、堂々たる甲田のライミングも光っており、Dr.Kにならって「Dr.C」と呼んでみたい衝動に駆られる。 今から20年前にリリースされたKREVAのソロとしてのメジャーデビューシングルを自身の初ワンマンライブでカバーするのは、単に甲田がKREVAのファンだからかもしれないが、他にも何らかの理由がある気がする。これまで甲田は、A Tribe Called QuestをはじめUSヒップホップからの影響を公言してきたが、もちろんジャパニーズ・ヒップホップからも多大な影響を受けており、特にKREVAからの影響は、そのリリックを自身の楽曲に引用する姿勢からも見て取れる(たとえば「One More Time」の「アーユルヴェーダシロダーラ」)。 自身にとっての節目の舞台にて、日本のヒップホップを牽引してきたアーティストへのリスペクトをカバーという形で示すことで、もしかしたら甲田は、日本のヒップホップという大きな流れの末席に自分を位置付けようとしたのかもしれない。過去の楽曲をディグりまくり、歴史の重要性を理解している彼女ならばありえることだ。つまりこれは彼女なりのアーティスト宣言のようなものだと捉えることもできるかもしれない。 本編ラストは「らぶじゅてーむ」。TVアニメ『ぶっちぎり?!』EDテーマとして書き下ろされたこの曲は、ポップなサウンドとパワーパフボーイズの振り付けによる特徴的なダンスが魅力だが、この日の演奏は甲田による約1分半のピアノソロから始まった。ジャジーでエモーショナルなエレピの音色は一瞬でフロアの空気を変え、そこからバンドサウンドが入ってポップになることで一気に会場の熱が上がる。この落差、このギャップ、この振れ幅。現在の甲田まひるの見どころはここにある。人生初のアンコール
人生初のアンコールは「22」から。22歳の真面目さと不真面目さを歌った楽曲の最後の歌詞を「結局真面目なI’m 22……23」と変えて歌うと、フロアから大きな拍手が起きる。そして甲田が「今日はみんな、仕事などがある中、来てくださってありがとうございます。とても幸せな誕生日になりました」と話し始めると、その言葉に被せるように、バンドメンバーがハッピーバースデーを演奏し始め、オカモトコウキがバースデーケーキを持ってステージに登場。 満員のフロアからバースデーソングが歌われ、オーディエンスに祝福されながらろうそくを吹き消す甲田の目からは涙がこぼれている。しばし感動で言葉を失うが、「23歳になりました! ありがとうございます!」と感謝を述べ、「ライブ当日だから余裕がなくて誕生日だと実感できなかったけど、みんなのおかげでやっと実感できました! ありがとうー! だいすきー!」と喜びを爆発させる。 ラストはデビューシングルの「California」。ロックとヒップホップを融合させたダークな雰囲気のある曲を最後に置き、最後にフロアをもう一度大きく湧かせる。そうして「みんなのおかげで楽しくライブできました。本当に来てくださってありがとうございました! また来てくれますか〜!? それまで元気でいてください。また会いましょう!」と告げ、大きな拍手に包まれ、ハッピーなムードで甲田まひるの初ワンマンライブは終わった。 「HAPPY MAPPY DAPPY -23yo-」と名付けられた初ワンマンライブは、「新しい自分に生まれ変わる=脱皮」をテーマにしていたという。彼女はどう生まれ変わったのだろうか? その答えは今後の活動次第だろうが、ひとつ言えることは、初めてのワンマンライブを終えたことで、ようやくシンガーとしての道を本格的に歩み始めたということだ。 もちろん、これまでも楽曲を作り、歌い、リリースもしていたのだからミュージシャンではあったわけだが、どちらかと言えば「楽曲を作る人」として活動していたと言えるだろう。それがこの日、会場をパンパンに埋める満員以上の人々の前でパフォーマンスしたことで、「人前で歌う人」になった。ローリン・ヒルやリアーナ、アリアナ・グランデなど、16歳の頃から憧れた「歌う人」の系譜に連なる第一歩を踏み出したわけだ。 その意味で、この日は、23歳の誕生日であるとともに、「シンガー・甲田まひる」が真にこの世に生み落とされた日だと言うこともできるかもしれない。 いつの日か、ジャズ、ファッション、芝居などを通して彼女が培ってきた才能がひとつの線で結ばれ、大きな何かを成し遂げた時、その始まりの点として参照されるのはこの日のライブなのかもしれない。そう思わせるような重要なライブだった。小柳ルミ子、バースデーライブで今後の更なる活動の抱負を語る!
7月6日(木)、JZ Brat Sound of Tokyo(ジェイジーブラット サウンドオブトウキョウ)にて7月2日に71歳の誕生日を迎えた小柳ルミ子がBirthday Liveを行った。
会場には平日の夕方にも関わらず長くからのファンや関係者が多数集まり、赤の派手な衣装で登場。最初の一声は「コロナも5類になり声出し解禁のライブなので皆さんには思いっきり楽しんでいただきたい」と挨拶した。