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岐路に立つTikTok。音楽レコードレーベルが動向を見守る理由とは
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岐路に立つTikTok。音楽レコードレーベルが動向を見守る理由とは

現在、世界的にTikTok(ティックトック)を巡り、アプリ内で収集された個人情報が中国政府に流出する懸念が出ている。 米国のトランプ大統領が同アプリの運営会社であるByteDance社に対し、中国政府への個人情報流出リスクを指摘し、2020年9月15日までにその米国事業を米企業に売却しなければ米国内の事業展開を禁止すると表明している。現在、その事業売却先の筆頭にあるのは、Microsoftであり、米国内でのビジネス上の取引停止を阻止するために、ByteDace社も交渉を継続中である。 TikTok(ティックトック)は、元々米国内のベンチャー企業として事業展開していたMusical.lyを、ByteDance社が2017年11月9日に買収した事を起点に、アメリカ国内のユーザー拡大はもちろん、グローバル規模でのユーザー獲得に成功してきた。また、元々Musical.lyのアプリサービスを展開していた2016年6月の段階においても、そのユーザー数は9,000万人を記録しており、2017年5月には2億人を超え、その影響力の大きさを示していた。 その背景もあってか米国としては事業の主導権を取り戻したいのであろうか、まさに世界規模での圧力をかけている構成となっている。 ただし、米国トランプ大統領が指摘したTikTokにおけるリスクの根拠は、同アプリが「プライバシーを侵害し、安全保障上の脅威となっている」というものだ。TikTokアプリは、AI技術を用いたエンターテインメントとしての楽しさを、ユーザー目線では享受することができるが、その裏側には膨大な個人情報データが蓄積されており、国家保安場のリスクにも繋がり得る点は納得がいくところだ。 また、その個人情報データが中国政府の手に渡っている点も指摘が入っているが、その具体的な証拠は見つかっていないのが実情だ。勿論、TikTok(ティックトック)を運営するByteDance社は、このビジネス上の圧力に対して米政府へその不当性について反論を唱えている。 ◆ 米国の巨大テクノロジー企業からの標的に TikTok(ティックトック)が岐路に立たされている理由はいくつかある。 1つは、本年秋に大統領選挙を控えているトランプ大統領が、米国の有権者に対して「強いアメリカ」「対中強硬姿勢」をアピールするためであることが考えられる。つまり、中国企業が運営しているTikTok(ティックトック)を意図的に締め出すことによりその姿勢をアピールしているのだ。 また、もう1つの理由としては、アメリカの巨大テクノロジー企業が中国テクノロジー企業を標的としている事が考えられる。近年、アメリカ国内では巨大化しすぎたテクノロジー企業への風当たりが強まっており、2020年7月29日に開催された反トラスト法に関する公聴会では、Google、Facebook、Amazon、Appleの経営トップメンバーが参加し、議員らの厳しい質問に回答する場面があった。その場では、各企業とも業界内の独占的な地位を利用して反競争的な行為をしていないかと厳しい目線を向けられていた。 その様な状況下において、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOが「中国企業のインターネット業界における脅威」を強調し、TikTokの名前を挙げたため、台頭する中国のテクノロジー企業への対抗措置として、その矛先がTikTokを運営するByteDance社に向かっている節もあるのだ。 ただ、真実としての安全保障リスクがあるのであれば、米国事業の停止措置も事実上必要となってくるため、その確かな検証が必要だ。 この中において、この様子を戦々恐々としながら見守っているのが、音楽業界関係者だ。 ◆ 音楽業界におけるTikTokの影響力 なぜ音楽業界関係者は、この一連のTikTok(ティックトック)騒動の行方を見守っているのだろうか。 それは直近の音楽トレンドを形成してきたのが、TikTok(ティックトック)だからだ。日本国内でもその兆候はみて取れており、無名の男性シンガーソングライターである瑛人の楽曲「香水」がヒットチャートを席巻している事実や、2019年1月にリリースされた楽曲「HACK」が突然のヒットを記録したShuta Sueyoshiの事例など、旧態然とした音楽業界の売れ方ではないヒットが頻出してきている。 従来では、音楽レーベルのプロデューサーが一定度のトレンドを予測し、むしろ流行を創り出すという感覚が近かったが、TikTok(ティックトック)における音楽的ヒットは、そのアプリ内の文化において突発的に発生している。いわばレコードレーベル側でもコントロールができていないのだ。 この為、音楽作品としての商業的な成功が1つあれば、そのIP(知的財産)を基に360度的に収益ポイントを見出し、ビジネスとして成立させてきた音楽レーベルとしては、今後TikTok(ティックトック)という存在は非常に重要なアプリとなっていたのだが、現状、その存在自体が危ぶまれる様な状況となっている。次のヒットを創出するプラットフォームとして、TikTok(ティックトック)を見据えていた事もあり、この動向次第では音楽レーベルも大きく舵を切らなくてはならない可能性が高いのだ。 勿論、音楽業界としてヒットを創出するプロデュースワークは、依然として重要なスキルやノウハウとなってくるが、TikTok(ティックトック)の様な巨大なプラットフォームとの協力体制を築いた方がより効果的にヒットの創出する事が可能であるのは、誰しも容易に想像がつくだろう。 現状、その去就が見守られているが、間違いなくこのTikTok(ティックトック)騒動の行方は、音楽業界に与える影響が大きいだろう。 -- メディア運営:Evening Music Records株式会社