2025年12月12日、東京ガーデンシアターにて「Spotify On Stage Tokyo 2025 -Year-End Special-」が開催された。 Spotifyが今年の音楽シーンを総括する目的で初めて実施した年末スペシャルライブには、ジャンルや世代を横断する6組のアーティストが出演。 ストリーミング時代を象徴する存在から、新たなフェーズへと進むアーティストまでが一堂に会し、2025年という一年の輪郭を立体的に描き出すイベントとなった。

羊文学

イベントの幕開けを担ったのは羊文学だった。 照明が落ち、静かな緊張感が会場を包む中で鳴らされた一音一音は、観客の意識をゆっくりとステージへ引き寄せた。「声」や「more than words」といった代表曲では、繊細さと芯の強さを併せ持つサウンドが会場に広がり、東京ガーデンシアターは次第に音楽へと没入していった。 派手な演出に頼らず、楽曲そのものの力で空気を支配していく姿は、年末総括イベントの“入り口”として極めて象徴的だった。静かながらも確かな熱を内包したパフォーマンスは、この夜が単なる対バンライブではないことを観客に印象づけた。

m-flo

続いて登場したm-floは、会場の空気を一気に解放した。イントロが鳴った瞬間に歓声が上がった「come again」を皮切りに、Crystal Kay、YOSHIKAらを迎えた“loves”シリーズの楽曲が次々と披露される。 m-floのステージは、ノスタルジーに留まらず、過去のヒットをなぞるのではなく、現在進行形のライブとして再構築されたパフォーマンスは、世代を超えて共有される音楽体験として成立していた。 観客の身体が自然と揺れ、フロア全体に高揚感が広がっていく様子は、このイベントが持つ“祝祭性”を浮かび上がらせるようだった。

HANA

イベント中盤に登場したHANAは、会場の空気を再び塗り替えてみせた。 「Tiger」や「ROSE」といった楽曲を中心に構成されたステージは、フレッシュなエネルギーと高い完成度を併せ持つものだった。フォーメーションの精度や個々の表現力からは、デビュー間もないグループでありながらも確かな準備と積み重ねが感じられる素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。 年末の総括イベントという文脈の中で、HANAの存在は“次の時代”を示す役割を担っているようで、観客からの声援も人一倍強く、今回のステージでも強烈な印象を残してくれた。

Creepy Nuts

次に登場したCreepy Nutsは、登場と同時に会場の熱量を一段階引き上げた。 「Bling-Bang-Bang-Born」や「オトノケ」といったヒット曲が立て続けに披露されると、フロアには自然と一体感が生まれ、R-指定のラップとDJ松永のプレイが生み出すグルーヴは、ストリーミング時代のライブの在り方を体現しているかのようだった。 楽曲の知名度だけでなく、ライブとしての説得力が伴っているからこそ、会場の熱狂は一過性のものに終わらない。2025年という年を象徴する存在を示してくれた様なパフォーマンスだった。

ちゃんみな

ちゃんみなのステージは、エネルギーの密度という点でこの日の中で際立っていた。 「ハレンチ」や「WORK HARD」など、強いメッセージ性を持つ楽曲が連なる中で、観る側の感情を直接揺さぶるパフォーマンスが展開される。 ステージングや演出を含め、表現の振り切り方には一切の迷いがない。HANAへとつながる文脈を含め、アーティストでありプロデューサーでもある ちゃんみな の"今"が、短い時間の中でも鮮明に伝わるようだった。

サカナクション

トリを務めたサカナクションは、このイベント全体を一つの作品として締めくくる存在だった。 「新宝島」「怪獣」といった楽曲を中心に構成されたステージは、音楽・映像・照明が緻密に組み上げられた非常に完成度の高いものだった。 ヒット曲の披露だけではなく、空間全体を使った没入感のある演出は、Spotify主催イベントという枠組みとも強く呼応しており、年末総括というテーマに対し、“答え”を提示してくれたようなステージだった。

6組が描いた、2025年の音楽シーン

「Spotify On Stage Tokyo 2025 -Year-End Special-」は、6組それぞれの現在地を並べることで、2025年の音楽シーンの輪郭を浮かび上がらせたイベントだった。 ジャンルや世代を横断しながらも、すべてが“今”につながっていることを示した点に、このライブの意義があったように思う。 ショーケース形式だからこそ、各アーティストの立ち位置がより鮮明に見えた一夜。Spotifyが提示したこの年末ライブは、年の締めくくりにとどまらず、次の音楽シーンへと視線を向けさせる場でもあった。