ヨルシカ、3rd Full Album「盗作」発売。シニカルで圧巻の楽曲群に迫る
7/29(水)、ヨルシカがフルアルバムとしては約1年ぶりとなる「盗作」をリリースした。
初回生産限定盤には、130ページほどのボリュームのある同名のオリジナル小説と、月光ソナタのカセットテープが封入される。
「ただ君に晴れ」「だから僕は音楽を辞めた」「言って」など数多くのヒット曲を生み出し、ネット発音楽最前線の名をほしいままにしてきたヨルシカだが、2nd AL「エルマ」の1stからの約4ヶ月という発表スパンから考えると、約1年ということで時間だけで見ればかなり温められたアルバムと言えよう。
今作もアルバムに先立ってミュージック・ビデオと共にリリースされた楽曲がいくつかあった。
いずれもYouTubeにおいて数百万〜数千万の再生回数を誇り、動画がアップロードされる度にネットシーンや熱烈なファンたちを沸かせてきた。
◆ 注目すべきは繊細で緻密な音。余すことなく堪能必至。
特筆すべき点はなんと言っても楽曲の完成度だ。アルバムはなんともミステリアスな雰囲気のショパン「月光」アレンジ『音楽泥棒の自白』から始まる。
筆者自身、ヨルシカのファンではあるが敢えて情報をあまり入れずフラットに聴き始めたが、この曲で既に奥深くまで引き込まれてしまった。
ここからの流れは特に秀逸だ。『昼鳶』で結成初期のような強烈なバンドサウンドが展開されたかと思えば、続く『春ひさぎ』では一転、退廃的なビートに古風な言い回しの歌詞が絡みつく。
そして一際目を引くのは2nd Mini Albumからの再録である『爆弾魔』だ。2年前のヴァージョンと聴き比べるとその洗練度合いに驚くことだろう。
また『レプリカント』『花人局』(はなもたせ)『逃亡』などアルバムにてお披露目された曲も、suisのクリアなボイスに一切隙のないn-bunaの作る音がマッチする傑作である。
是非とも、1つ目から余すことなく聴いて頂きたいアルバムであることは言うまでもない。
◆ 楽曲間にも変化?見落とせないアルバムの全貌!
ヨルシカのアルバムやミニアルバムには必ず、suisのボーカルの入らない幕間曲のような楽曲が含まれている。
今回のそれらは、アルバム全体のコンセプトに沿ったようにピアノの独奏が多い。
よくよく聴いてみると、アルバムの後半にある幕間の楽曲は、前半のそれと比べると少しずつ穏やかになっていくことが聴き取れるだろう。これが、アルバムの中で楽曲が音楽泥棒の成長に逆行するように配置されていることと何らかの関係があるのだろうか。
作者のみぞ知る境地ではあるが、こういったことを聴きながら考えていけるのもヨルシカの醍醐味である。
どこまで聴いても奥が深く味わい深いヨルシカの新譜。まだまだ進化は止まりそうにない。
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