facebook ザッカーバーグ氏が示すメタバース構想の未来とは? VR会議システム「Horizon Workrooms」への賛否両論とは...
EVENING編集部( Evening Music Records )
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フェイスブック社のCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、10月28日に同社名を「メタ(Meta)」に変更することを発表し、世界の注目を集めている。
この「メタ」と言うワードは、3次元の空間で人々が自由に交流できる仮想空間「メタバース」から来ているが、今後2年間で約5,000万ドル(約55億円)を投資すると発表するなど、フェイスブック社が本気で本事業に懸けている意気込みが感じられる発表となった。GAFAの一角として、ビッグテックの名を思いのままにしてきた同社は、すでに世界的な知名度を得ている "facebook" と言う社名を変えてまで、今後メタバースと言うVR仮想空間事業に未来を見据えている。
そもそもVRとは、Virtual Realityの略称で、「仮想現実」や「人口現実感」などと訳され、限りなく実体験に近い体験が得られる最先端技術で、スポーツにおけ技術習得の促進や医療での活用など、多方面で事業活用が進んでいる。また、皆さんも一度はご覧になった事があるであろう「Oqulus(オキュラス)」のワイレスVRヘッドセットでは、バイオハザードなどのゲームが実体験に近い臨場感でプレイでき、我々の生活にVR技術は少しずつ浸透してきていると言える。
また、このVR技術を活用し、仮想空間上であらゆる経済活動を実現する構想が「メターバス」だ。facebook社のザッカーバーグ氏は、今回の発表でこの仮想空間における未来に社運を賭ける意気込みを見せている。
本記事ではメタバースが秘める可能性と、本発表によるメタバース構想への賛否両論について取り上げたい。
↓ メタバース構想について話すザッカーバーグ氏
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Horizon Workroomsとは何か?
同社が2021年9月に公開した「Horizon Workrooms」に注目したい。
Horizon Workroomsとは、バーチャルリアリティ(VR)機器である「Oqulus Quest2」のビジネス会議用ソフトである。バーチャル会議と言うと仮想空間でビジネス仲間が集まり、自由に議論を交わし、ビジネスが進んでいく...と言う映画の世界のようなイメージを思い浮かべる方が多いと思うが、Horizon Workroomsはまさにその世界を実現している新サービスと言えるだろう。
このサービスの使い方としては、現実世界で使用しているパソコンのキーボードとデスクをスキャンし、Oqulus Quest2のヘッドセットを装着し、仮想空間にアクセスすることで利用可能となっている。現実世界で自分の目の前にあるPCのキーボードをVR世界に表示させる「トラッキングキーボード」と言う機能や、VR内で参加者のPC画面を共有することが出来る「リモートデスクトップ」と言う機能など、まさに映画の世界が実用化されつつあると言えるだろう。
また、コントローラーを裏返してペンのように使用すると、VR内で表示される共有用ホワイトボードに文字や絵をシームレスに書くことができ、この動作についても遅延などの違和感なく行うことが出来るようだ。さらに、実際に利用してみると驚くのは「スペシャルオーディオ」と言う機能で、複数のメンバーが会話する音が実際に話すメンバーの方から聞こえてくると言う空間の立体感が表現されており、VR空間で感じる違和感を排除し、その空間が持つ没入感を追求するための工夫が散りばめられている。
VR内で表示される自身のアバターも、話す時に口がきちんとリンクして動くなど、人間の微妙な仕草も表現されていることも没入感を高めることに繋がっているだろう。
↓ Horizon Workrooms 紹介動画
facebookが歩んできたメタバース構想とは
元々、フェイスブック社は、2014年に当時バーチャルリアリティ(VR)を開発していたスタートアップ企業 Oculusを20億ドル(約2,230億円)で買収したところから、VR事業への投資を始めており、その道のりは意外な程長いものとなっている。
Facebookといえば、2021年4月時点での世界の月間ユーザー数(MAU)が28億5,300万人に達するといった世界最大のSNSサービスであり、YouTubeの月間ユーザー数 20億人(2020年11月時点)よりも多数の利用者がいるモンスターサービスだ。知らない人を見つける方が難しいレベルと言えるが、このような大規模なSNSインフラを持つ裏で、着々とVR事業への投資を進めていたことになる。
ただ、Oculusの買収は必ずしも上手くいっていた訳ではなく、Oculus社の創業者であるパーマー・ラッキー氏が買収から3年で十分な結果を残せず2017年に同社を去るなど、なかなか事業としての成果を出すことができずにいたと言う表現が近いと言える。Facebook社が世界的な人気を誇ってきたFacebookサービスやインスタグラムなどと比較すると、その事業がもたらす売上はザッカーバーグ氏が満足するものではなかったであろう。
しかし、世界のOculus Quest2の出荷台数は、2021年第1四半期に前年同期比の約3倍となる460万台に達するなど、新型コロナウイルスの影響も後押しとなる形で、少しずつではあるがVR市場は拡大してきており、この様な背景の中で、今回のザッカーバーグ氏の「メタバース」構想が発表となった。
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メタバース構想が実現する未来とは
今回のFacebook社が発表した「メタバース」構想が、将来実現するのはどのような未来だろうか。
この問いには、ザッカーバーグ氏も100%の精度で答えることは難しいと思うが、予期されるポジティブな未来は無数にある。今回のリリースでは、あくまで会議用システムとして実用化可能なレベルでのサービスとして世界にローンチが発表された訳だが、VR技術は会議用に止まる必要はなく、リアルの空間を代替することが何かしら我々のメリットに繋がることの全てにおいて事業化の可能性があると言える。
例えば、米国ではポピュラーなスポーツであるアメリカンフットーボルでのVR技術の活用などは良い例だ。
このスポーツでは、クォーターバック(QB)と呼ばれる、攻撃をする選手にプレーを支持する攻撃時のリーダーの役割を負うポジションがあるが、大半のプレーコールで攻撃の起点となる「司令塔」的となる為、この選手の出来がチームの勝敗を大きく左右すると言われている。
実際、フィールドにおいて刻々と変化するチーム状況を瞬間的に把握し、事前にチームで構築している無数の作戦の中から最適なプレースタイルをチームメンバーに支持する判断力が求められる。このポジションでは、状況を察知する身体的な能力の高さと、その状況を理解しプレーに反映させる身体的な能力の高さが必要となり、通常であれば日常的に行われる練習の中で、様々なケースを実体験することでクォーターバック(QB)の選手の知見が積み重ねられることになる。
VRを活用した場合、この様な練習で積み重ねる必要があった知見を、VR空間上で蓄積することが可能となる。
QB選手は、VRヘッドセットを装着し、練習場ではなく控室などで頭に叩き込む必要のある幾つもの作戦プレーの場面を、VR上でリアルな臨場感とともに体験することが出来るようになる為、その習熟度が飛躍的に向上するのだ。
これはスポーツでの一例だが、VRが活用できるのは他にも無数に可能性があり、医療・教育・エンターテインメントなどなど... リアルの世界を代替することで生産性や効率の向上するシチュエーションであれば、全てに事業化の可能性があると言っても過言ではない。
Facebook社が今回発表した「メタバース」構想は、このような未来の到来を前に、VR事業のプラットフォームとしてのポジションを獲得することが出来る可能性を秘めている。
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ザッカーバーグ氏の想いとは
今回の発表に当たり、様々な逆風が聞こえたであろうザッカーバーグ氏の想いを推察し、本記事を締めくくりたい。
本発表の数日前、2021年10月5日に、米Facebook社の元従業員でプロダクトマネージャーを務めていたフランシス・ホーゲン氏が、米上院の公聴会に出席し、Facebookの危険性に関する証言を行なったと言うセンセーショナルなニュースが公表された。これはFacebookサービスは、ユーザーの安全よりもビジネス的な利益を追求していることをリークしたと言う内容であり、ザッカーバーグ氏も多数のメディアからの追及に対して対応する必要があった。
ホーゲン氏がリークし、議会で議論された情報は「10代の少女を中心とする若者たちが、Instagramを使用したことにより悪影響を受けた」という同社による調査があったと言うもので、この調査によると、同プラットフォームを使用した後、イギリスでは10代の少女の13.5%が自殺願望に近い感情を抱くようになり、17%は摂食障害を悪化させ、さらに32%が自身の身体に対し否定的な感情を抱くようになったと報告されていたのだ。
これに対しザッカーバーグ氏は「この情報には曲解がある。議論の対象となった同社の調査において、孤独、不安、悲しみや摂食障害といった深刻な問題を含む、12件の調査のうち11件において、こうした問題に悩む10代の少女たちはInstagramを使用したことで困難な時を楽に過ごせるようになったと述べている」と反論していた。
今回の「メタバース」構想の水面下では、このような解決すべき問題も多くあることは事実であった為、否定的な世界からの反応が出てくることは予期できたであろう。
ザッカーバーグ氏のコメントにも「今は未来に目を向けるべき時期ではない、と言う人がいることは承知している。いま取り組むべき重要な課題がいくつもあることは、私も分かっている。でも、いつの時期にも目の前の課題がなくなることはない」という言及があり、重々理解していた様子が窺えたが、それに続けたコメントが重要なように感じられた。
「未来に目を向けるのにふさわしい時期を待っていても、そんな時はずっと来ないのかもしれない」
彼が懸けた「メタバース」の未来に注目していきたい。
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