Quote source:https://ja.wikipedia.org/wiki/AKB48
なぜAKB48は成功し、乃木坂46に抜かれたのか?マーケティングでの考察
EVENING編集部( Evening Music Records )
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過去から現在に至るまで、音楽業界では様々な形でマーケティングが行われてきた。
もちろん、全てが成功した訳ではなく、失敗したマーケティングも存在するだろう。本記事では、その中でも成功と失敗の両方を経験している「AKB48」について述べていく。
AKB48と聞くと、成功した印象の方が強いかもしれない。しかし、現在では乃木坂46に人気を凌駕されている。(秋元康氏が両チームともプロデュースしている関係で成功と呼べるかもしれないが、「AKB48にとっては」失敗しているという観点で記述している。)この人気の入れ替わりは、偶然ではなく、マーケティングの失敗によるものでもあるだろう。したがって、AKB48に成功面・失敗面、両方の側面からアプローチしていきたい。
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マーケティングの成功例
(1)競争市場の導入
AKB48と聞いて最初に浮かぶワードはなんだろうか。握手会、総選挙、神7…様々な単語が想起されるのではないかと思う。そして、今あげた三単語に共通しているのが「競争」という概念である。AKB48は常に変革を求め、メンバー同士で争わせることを是としてきた。
競争はメンバー自身の意識を高める効果を果たし、(3)で後述する物語の構築にも一役買ってきた。競争となると、知らず知らずの内に白熱し、予定以上にお金を使ってしまう…そんなことも起こり得るのである。
(2)コンセプトの明確化
「会いに行けるアイドル」。今となっては当たり前のように思えるAKB48を表すこの言葉だが、AKB48が結成された当時ではあり得ないことであった。アイドルとはテレビの中の存在で、易々と会いに行ける存在ではなかったからである。AKB48はこのコンセプトを大々的に発表することで自身の存在意義を明確に世間に示してきた。つまり、コンセプトだけで差別化に成功したのである。この当時は珍しかった会いに行けるアイドルであるが、今ではむしろ会いに行けるのがアイドルである。(そのため、気軽に会いにいけないことが付加価値となることさえある。)
AKB48はキャッチーでわかりやすいこのコンセプトを示すことで、マーケティングにおける差別化に成功したのである。
(3)物語ビジネスの構築
「物語ビジネス」という単語を聞いたことはあるだろうか。これは、ジャンプ等の少年漫画でよく語られるマーケティング手法である。主にジャンプでは、作品内に「友情・努力・勝利」の三要素が含まれていることが多い。それと同じように、AKB48では、「越境、危機、成長、勝利」という山川悟氏の『事例でわかる物語マーケティング』に則ったイベントが数々開催されてきた。
例えば...
- 越境: AKB48のオーディションに合格する
- 危機:「組閣」制度により、慣れ親しんだチームが解散する
- 成長: 新たなチームの中で評価される
- 勝利: チーム内で序列をあげ、総選挙で上位にランクインし、選抜メンバーに選ばれる
※ 「組閣」制度とは、AKB48内に結成されたチームのメンバーがシャッフルされ、新たなチームが発表されるイベントのことである。まさに内閣の組閣を想像していただければ良いのではないだろうか。
上記の様なことが日常的に起こり得るのである。これによって、必然的に各メンバーに物語が発生し、自然発生的に物語ビジネスが構築され得るのである。
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マーケティングの失敗例
(1)競争市場の不透明さ
競争市場を構築する上で大事になるのが、透明性である。実際の市場でも、情報の非対称性が存在すると正しく取引ができないように、いちアイドルが構築した市場といえど、完全競争になるべく近づけることは欠かせない。しかし、AKB48で行われた競争が完全に透明であったかというとそうではない。運営とファンとでは情報量に差があるのだから、ある程度の情報は開示されて然るべきであるが、ファンの間で納得されていない競争結果が幾つか存在する。特に、シングル表題曲の選抜メンバーの選び方は数字に依拠するものでない以上、透明性が欠けてしまうのであるが、競争市場を構築したことによってそれが反感を買うことになってしまった。
(2)巨大組織故の管理不足
AKB48は、100人以上のメンバーを要する巨大グループである。また、坂道グループとは異なり、全メンバーが同じ事務所に所属している訳ではないため、統制が取りにくいのである。したがって、恋愛等のスキャンダルや、メンバー個人がネット上で炎上にさらされることが多い。これは、巨大組織の抱える問題であるが、アイドルという職業である以上、批判を免れることはできない。したがって、これはマーケティングにおける失敗と言えるだろう。
(3)物語ビジネスの落とし穴
物語ビジネスは、物語が自然発生することによって行われてきた、と成功例(3)で記述した。しかし、自然発生するからこその落とし穴が存在する。前述した週刊少年ジャンプであれば、物語を動かすのはその作品の作者であるため、物語の行方を自分で決定することができる。しかし、AKB48は自然発生する物語に自身のビジネスを委ねてきた。そうなると、思わぬ方向の物語が始まることがあるのだ。運営側がある程度までしか物語の舵を切ることができないというのは、物語ビジネスの魅力であり、欠点ともなり得る。(2)と共通する部分でもあるが、ビジネスの全決定を人が調整することが難しい形式のビジネスモデルを構築してしまったことは、マーケティングの失敗と言えるだろう。
以上、AKB48をマーケティングの視点から分析してきた。
現在から振り返ることで失敗・成功両面の原因・理由を考察することができるが、未来がどうなるかわからない段階で物事を決定するのは非常に大変なことであろう。しかし、なるべく失敗しないような、また、失敗してもリカバリーが効くようなマーケティングを行うために過去の成功例・失敗例は分析すべきなのだ。読者の皆さんにとって、これが現在を考えるきっかけとなれば、筆者にとって僥倖である。
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