忘年会やクリスマス・パーティー、新年会など、年末年始はどうしてもお酒を飲む機会が増えるもの。では、最近行った店に流れていた音楽を思い出せるだろうか。心理学者たちによれば、無意識に聞いているBGMによって私たちの行動(支払い金額にいたるまで)は大きく変わるという。

物理学者であり、音楽家でもあるジョン・パウエルの新刊『ドビュッシーはワインを美味にするか? 音楽の心理学』
より抜粋にて、興味深い実験をご紹介しよう。

 

読者のみなさんにふたつ質問をしてみたい。

1.あなたはBGMが好きですか?
2.BGMはあなたの行動に影響を与えますか?

わたしと同じように、どちらの質問にも迷わず「ノー!」と声をあげた方も多いだろう。だとすれば、わたし同様、あなたはおそらく間違っている。

不適切なBGMについていえば、わたしたちをイライラさせるだけで、とくだん影響を与えることはないかもしれない。ところが賢く厳選されたBGMは、静寂より好まれるというレベルを超え、笑えるほどのレベルでわたしたちの行動に大きな影響を与えているのだ。

心理学者のエイドリアン・ノース教授とデイヴィッド・ハーグリーヴス教授は、スーパーマーケットの通路の端にあるワイン陳列棚の上にスピーカーを設置し、音楽の種類が客の購買行動に与える影響について実験をおこなった。

ワインの棚は全部で4つあり、どの棚にも片側半分にフランス産ワイン、片側半分にドイツ産ワインが置かれている。それぞれの棚には価格や甘さ/渋みが似たものが置かれており、両国のワインが公平に戦う場が用意された。

あとはときどき音楽を変え、どの音楽が流れたときにどのワインが売れたかを観察するだけでよかった。

 

 

結果は驚くべきものだった。

スピーカーからドイツの音楽が流されたとき、ドイツ産ワインはフランス産よりも2倍の勢いで売れた。一方、フランスの音楽が流されたとき、フランス産ワインはドイツ産よりも5倍の勢いで売れた。

つまり、マーケティングの一環として使われる音楽について言えば、わたしたち人間はシロナガスクジラに狙われた無力な小魚にすぎないということになる。そのうえ、人は無意識のうちに音楽の影響を受けているという。

事実、この実験のなかで音楽がワイン選びに影響を与えたことに気づいたのは、購入者のうち7人にひとりだけだった。

心理学者チャールズ・アレニとデイヴィッド・キムによっておこなわれた別の実験では、ポップスとクラシック音楽がワインショップの客の支払金額にどのような影響を与えるかが調べられた。結果、哀れな買い物客がいかに騙されやすいかを示す、新たな事実が明らかになった。

ポップスの楽曲は客の購買パターンにまったく影響を与えなかったが、クラシック音楽は明らかに客をより優雅で裕福な気分にさせた。購入本数に変化はなかったものの、クラシック音楽が流れたときに客はより高いワインを選んだ。それも、少し高いワインなどではない。購入価格はなんと3倍以上に跳ね上がった!

それどころか、BGMはワインの味の感じ方にも影響を与えることが証明されている。この効果を調べたある実験では、数グループに分かれた参加者が無料のワインを愉しむあいだに、4種類の異なるBGMが流された。

バックにかける音楽として選ばれた曲調は、①力強くヘビー、②繊細で上品、③元気でフレッシュ、④甘美(メロウ)でソフトの4つ。もちろん、参加者にはBGMが重要であることを知らせず、通常のワイン試飲会かのように実験は進められた。

試飲後にワインの味が「ヘビー」「上品」「フレッシュ」「メロウ」のどれに当てはまるかを評価してもらうと、参加者たちに味と音楽の曲調を結びつける傾向があることがわかった。

たとえば、力強くヘビーな音楽(カンタータの「カルミナ・ブラーナ」)を聴いている人は、口にしたワインが力強くヘビーだと評価しがちだった。同じように、元気でフレッシュなポップスの曲をかけると、ワインの味が元気でフレッシュだと答える人の割合が多くなった。

実際のところ、どの音楽をかけたときにも、試飲用に出されたワインはすべて同じカベルネ・ソーヴィニヨンだった。さらに、参加者は無料のワインを愉しむことに夢中で、BGMにはほとんど気を留めていなかった。

くわえて、音楽は人のワインの愉しみ方にも影響を与えるようだ。ロンドンで開かれた試飲会(を装った実験)では、参加者たちが1番から5番までの番号がついたワインを順に飲んでいった。参加者にはそれぞれのワインの感想を訊き、最後にいちばん好きなワインを選んでもらった。

試飲会が始まってから1時間ほどのあいだに、BGMが甘美(メロウ)なドビュッシーの「月の光」から、激しい曲調のワーグナーの「ワルキューレの騎行」にゆっくりと変わっていった。伏せられていたものの、最後に出された5番のワインは1番のワインと同じものだった。

この実験でも、参加者たちには音楽の曲調とワインの味を関連づける傾向がみられた。1番のワインは甘美(メロウ)でまろやかな口当たりと評価された一方で、力強いヘビーなBGMとともに5番目に提供された同じワインは……力強くヘビーな味であるという評価を受けた。

また、好きなワインの投票では、1番のワインを選んだ参加者はゼロだったが、最も多くの人が5番を選んだ。

 

 

人の行動や感じ方がこれほど簡単にBGMの影響を受けるというのは、じつに驚くべきことかもしれない。しかし、ほかの数多くの研究でも、人間が想像以上にBGMの影響を受けていることが証明されてきた。

スーパーマーケットでおこなわれた別の実験では、スローテンポの音楽をかけると、速いテンポの音楽をかけたときに比べ、客が3倍以上のお金を支払うことがわかった。理由は単純。ゆっくりとした音楽を流すと人はゆっくり歩くようになるので、商品を見てまわる時間が長くなり、必然的に買い物する量も増えるというわけだ。

この実験をおこなったロナルド・ミリマン教授は次に、音楽がレストランの食事客に与える影響についても調べた。案の定、そちらの実証実験でも同じ結果が導き出された。

スローテンポの音楽をかけると、客は1時間ほどかけてゆっくり食事した。速いテンポの曲をかけると、客は45分でがつがつと食べた。また、スローテンポの音楽を聴いた客は、速いテンポのBGMを聴いた客よりも、食事中のドリンクに1.5倍のお金を支払った。これらの結果は、人々がBGMのテンポに示す典型的な反応だと考えていいだろう。

この実験は1980年代半ばにアメリカでおこなわれたものだったが、その15年後に英国のグラスゴーで同じ実証実験がおこなわれたときにも、まったく同じ結果が出た。さらに別の研究では、ゆっくりとした音楽が流れたときに、1分当たりの咀嚼回数が減ることもわかった。

この事実を知ったレストランの経営者たちは、レナード・コーエンの『グレイテスト・ヒッツ』を大急ぎで買いにいこうとするかもしれない。しかし、スローテンポの音楽によって客がより多くのお金を使ったことは事実だとしても、彼らがより長い時間レストランの席にとどまったということを忘れないでほしい。

混雑する人気レストランでは、速い音楽で客の回転率を上げるほうが得策という場合もあるだろう。

本書『ドビュッシーはワインを美味にするか? 音楽の心理学』でたびたび登場することになるノース教授とハーグリーヴス教授は、「BGMの種類」が人の行動に影響を与えることも明らかにした。

今回の実験では、大学のカフェテリアで異なる日に異なる種類の音楽を流し、店内の雰囲気についてのアンケート調査がおこなわれた。客たちはもちろん知らなかったが、アンケートに記入するあいだに流れる音楽の種類も実験の一部だった。

多くの人はBGMがかかっていることを意識してさえいなかったものの、実際には大きな影響を受けていた。アンケートの結果、イージー・リスニング音楽をかけた日には、カフェテリアの雰囲気は「大衆的」だという回答が多くなった。同じように、ポップスのときには「明るく陽気」、クラシック音楽のときには「洗練された」雰囲気だと多くの客が答えた。

音楽の変化はまた、店で客がどれだけのお金を使う気があるかということにも影響を与えた。同じ実験のなかで、すでに注文を終えた食事客に14種類の食べ物とドリンクが載ったリストを渡し、それぞれのメニューにいくら支払ってもいいかを書いてもらうという調査もおこなわれた。

BGMなしでアンケートに記入した客たちは、リストの全品の合計額を14.30ポンド(2002円)相当だと評価した。イージー・リスニング音楽を流すと、評価額は14.51ポンド(2031円)に微増。ポップスをかけた場合には、合計額が16.61ポンド(2325円)に跳ね上がった。

さらに、クラシック音楽は(いつものとおり)客を上品で洗練された気分にさせ、リストの品の評価額は17.23ポンド(2412円)まで吊り上がった。つまり、BGMなしとクラシック音楽をかけたときの差は2.93ポンド(410円)で、およそ20%の開きがあったことになる。

 

 

この分野における研究結果を総合的に判断すると、店舗やレストランで正しい種類のBGMをかけると、平均しておよそ10%の売り上げの増加が見込めるという。反対に、間違った種類の音楽(たとえば、由緒正しいイタリアン・レストランでラップ音楽のBGM)は客をイラつかせ、店内を大衆的な雰囲気、あるいはたんに間違った雰囲気に変えてしまう。

店の責任者が絶対にしてはいけないのは、スタッフに好きな音楽を選ばせることだ。もしスタッフが店の大半の客と同じ年代で、似たようなバックグラウンドをもっていれば、ウィンウィンの状況が生まれるかもしれない。ところが、たいていのケースにおいて、音楽と客層がマッチしないという状況が生まれる。

さらに追い打ちをかけるように、自分の好きな曲がかかっているため、スタッフは当然のように音量を上げることになる。すると、木目調の落ち着いた内装の50代向けのレストランが、23歳のスタッフ向けのバーの雰囲気に様変わりしてしまう。

“風変わりな中年客が食事中に聴く心地よい定番ジャズナンバー”の響きに発狂寸前の若いスタッフには同情するものの、どうかあきらめてほしい。若者たちは客よりもずっとルックスがよく、ココアのカップを手に11時半にベッドに行く必要はないのだから。

 

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