エイベックスの新プロジェクト「XGALX」から見る日本の音楽業界がグローバルで取るべき戦略とは...

EVENING編集部( Evening Music Records )

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総合エンターテインメント企業 エイベックスが新たに手がけるプロジェクト「XGALX」(読み:エックスギャラックス)をご存じだろうか。

 

このプロジェクトは、「“BOLD(大胆)” なカルチャーを全世界に発信し、独特な世界観を持つアーティストグループを輩出するグローバルエンタテインメントプロダクション」と評されており、つまりは新しい価値を世界で通用する程の影響力を持つグローバルアーティストを育成するプロジェクトと言えるものだ。(図①)

 

また、アーティストのコンセプトや育成、楽曲制作においては、"韓国式" の価値観や戦略が色濃く採用されており、プロジェクト第1弾としてデビューした「XG」(読み:エックスジー)は、リリース楽曲やMV動画を視聴すると分かるが、とても日本人メンバーで構成されたグループとは思えない程の語学力や表現力を兼ね備えていることが分かる。まさに、アーティストを育成するプロダクション企業としての強いIP創出を地で行く事業展開を進めているのが、今のエイベックスだ。

 

 

ここまで見ると、非常に順調な音楽ビジネスを手堅く続けているように思えるが、エイベックスを取り巻く環境は易しいものではないことも事実だ。

 

エイベックスが中期経営計画「avex vision 2027」で公表した業績の振り返りを見ると、2014年の年間売上高 約1,600億円をピークに、近年ではコロナ禍の影響もあってか、年間売上高 1,000億円を割り込み、営業利益はマイナス域に達するなど、業績は良好とは言えない状況だ。この原因には、2018年の安室奈美恵 引退や、2021年のAAA活動休止など、複合的な要因が重なったことは間違いないが、根本的には「新しいIP」(Intellectual Property:知的財産)の創出が滞っていたことが挙げられることを同社も提言している。(図②)

 

IPとは、創出企業が持つコンテンツのことで、エンターテインメント企業の大きな収益源となるアーティストやキャラクター等を指すが、近年のエイベックスでは新たな創出に苦慮している状況だ。勿論、直近でも魅力的なアーティストや楽曲はコンスタントにリリースされてはいるが、近年の韓国芸能事務所が手がける様な世界的なヒットにまでは繋がっていないと言う意味合いで、困難な局面が続いていると言える。

 

実際に、アジア圏のエンターテインメント・ビジネスは、世界の音楽マーケットの中でもトップの売上成長率を上げており、その成長率は対前年29.9%の伸び(日本除く)と世界最大の成長を遂げているのだが、日本はその中でも10%を割る成長率と著しく低い水準にある。さらに見ると、アジア圏の大きな成長を牽引したのは、韓国 K-POPによるところが大きいと言え、業界構造自体の変化やグローバル視点の楽曲制作を的確に取り入れていった韓国勢に大きく溝を空けられている状況と言える。

 

 

では、なぜこの様な差が、ここ数年で生まれてしまったのだろうか。

 

 

↓ 図①: エイベックスIR資料「avex vision 2027」より

韓国と日本のアーティスト育成方法の違い

 

 

日本の韓国の音楽業界における差を考察するには、アーティスト「XG」を見てみると分かりやすい。

 

エイベックス内でも以前から議論に挙がり、外部向けのリリース等でもその方針を示していたが、次なる「強いIPの創出」が目標であり、課題であることは語られていた。一方、同社では1990年から2000年代にかけ、非常に多くの "貯金" があり、すでにヒットを飛ばしているアーティストを中心に、例年開催される大型ライブや定期的なリリースをコンスタントにこなしていくことで収益が付いてくる状況にあり、いわば新人によるヒットを生み出すことに対する危機感が薄れていたとも言えるかも知れない。

 

実際に、同社の黒岩克巳 社長は、外部メディアの取材に対し、近年の不振について「ゼロから何かを作っていくというのが、会社ごとになっていなかった感がある」ともコメントを残している。

 

反面、韓国の音楽マーケットでは、国内の音楽市場規模も限られるため、当初から世界でヒットを創出しなければ活路がない様な状況に置かれており、スタートライン時点での新しいIP創出に対する危機感が異なっており、この前提がここ数年での日本と韓国での差を生み出していると考察できる。

 

 

また、韓国の芸能事務所における新人アーティストの育成は、練習生と呼ばれるデビュー前のアーティストの卵を厳しいレッスン環境に置き、その内の一握りの才能ある人材をデビューさせる方針を取っている。これは日本の芸能事務所でも同様の育成方法が見られるが、目指している視座が異なることが重要だ。

 

韓国の芸能事務所では、デビュー後はグローバル的な活躍を見据えた戦略を取ることが多く、練習生には、基礎的な学力を満たすことに加え、複数の語学に堪能であることが前提とされることも一般的だ。また、人間的な素養にも評価の目が配られ、厳しいレッスンをやり抜く忍耐力や、メンバー間での良好な関係性を構築するための協調性、その前提となる道徳的な倫理観にまでも採点が施され、忖度抜きの選別が行われた後にデビューが許されるという構造になっている。

 

これは、ネットリテラシーに長けた現代において韓国芸能界でも度々問題になっているが、韓国アイドルは、デビューの座を獲得した後でも、過去の素性や噂などを含め、細かい情報を熱心なファンに詮索される運命にあり、基礎的な倫理面で問題がある様な場合、継続的な芸能活動が困難となることが多いため、事務所側が入念にデビュー前に育成を施すことにも起因している。ただ、世界で活躍するレベルの人材を育成するという視点で、初期段階から行動レベルで取り組めているかどうかには差があると言える。この方針による良例は、世界的な成功を収めたBTSが最たる例だろう。

 

 

話を戻すが、エイベックスではこの様な現状を打破するために「XGALX」プロジェクトを打ち立て、国際的に活躍することができるアーティストの初手として「XG」をデビューさせている。彼女らのデビュー曲「Tippy Toes」は、DSPチャート世界7カ国で第1位を獲得し、動画再生の約80%を海外から集めるなど、グローバル市場での活躍の片鱗を見せている。

 

 

↓ 図②: エイベックスIR資料「avex vision 2027」より

継続的なヒット創出に必要なこととは

 

 

日本と韓国の音楽市場での差について、ここまで述べてきたが、今後継続的なヒットを創出することができるかどうかは「新しい領域へのチャレンジ」によって変わってくると思われる。

 

コロナ禍を経た音楽業界では、「IP × グローバル × テクノロジー」が世界共通のルールとなっており、これらを適切に満たす様なアーティストやプロジェクトでないと、世界を魅了することは難しいと言える。ただ、この基準を満たすコンテンツを生み出すには、既存の事業を淡々とこなすだけでは難しいのが実情であり、一定のリスクを許容しながらも、世の中に新しいIPとしての価値を提示することができるアーティストやコンテンツを生み出すアクションを起こすことが必要になってくる。つまりは、新しい領域に挑戦することが成功に必要な要素となる。

 

エイベックスの黒岩社長自身も「未知の領域なので、(全てがヒットする)確信はない」と話しており、XGもデビュー時の成果は残すことができたものの、今後世界的なヒット曲を継続的に生み出せるかは実力次第となってくる。一方で「韓国のエンタメ企業のように、日本からもアジア市場、世界市場に打って出るアーティストを作っていきたい」と意気込むなど、日本のエンターテインメント企業としての展望を語っている。

 

日本の音楽市場は、世界で2番目に大きいマーケットだ。世界をリードするには十分な土壌がある。

 

次の世界の音楽シーンを魅了するアーティストを生み出す行動を起こすのは、今ではないだろうか。

 

 

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