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人工知能(AI)の進歩を測る方法のいくつかあるが、その一つとして有効なのは、対チャンピオン戦におけるアルゴリズムの勝利をみていくことだ。しかも、その対戦種目の難易度はどんどん高くなっている。チェッカーズ、チェス、2016年の囲碁──。そして2018年8月22日には、5つのAIがゲーム「Dota 2」を通じてeスポーツの世界でもマスターの座を奪取する領域を広げようとした。
しかし、人工知能(AI)は、対戦相手であるブラジルのプロチーム「paiN」がに負けてしまうという結果となった。つまり、人間が現状において、名誉を守り抜いたのだ。
人間対マシンの戦いは、Dota 2の世界大会「The International」のサイドイヴェントとして行われた。The Internationalは、eスポーツ史上最高の賞金総額2,500万ドル(約28億円)を誇るトーナメントである。
ゲームで闘うAIのボットを開発したのは、OpenAIである。テスラの最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスクが共同創設した研究所で、人間レヴェルのAIとその安全な利用を研究している。
会場となったヴァンクーヴァーのホッケーアリーナでは、数千人の観客が呪文や炎の稲妻が飛び交う52分の戦いを観戦した。そしてそれは、人間側の圧勝に終わった。
OpenAIがDota 2をターゲットとしてるのは、このゲームが(見た目は別として)チェスや囲碁よりも数学的に複雑だからだ。
Dota 2は、チームメンバー5人がそれぞれクモや魔術師、ケンタウロスといったヒーローを選び、相手チームの本拠の破壊を目的に戦うゲームである。そしてこのゲームにおけるボットたちの負け方からは、経験やデータを通じて難しいタスクを学習させる機械学習の限界が浮かび上がってきた。
意思決定を行うソフトウェアにデータを数学的にレンダリングする手法は、音声認識といった一部のタスクでは非常に有効だが、戦略や計画といったタスクでは簡単には効果を発揮しない。
例えば今回の試合で、OpenAIはpaiNよりも多いキル数を記録していた。試合の実況者たちは、完璧なタイミングで繰り出される組織的な攻撃に驚いていたほどだ。人間チームには抵抗不可能にも思える攻撃である。
しかし、戦略面ではボットが遅れをとっており、勝利に必要となるリソース収集と割当てで多くのチャンスを逃していた。
対paiN戦での完敗は、AIの絶え間ない成長の歴史のなかのささいな出来事かもしれない。OpenAIの共同創設者で最高技術責任者(CTO)を務めるグレッグ・ブロックマンは、「paiN戦でお見せしたのは、AIが人間の能力の限界のすぐそばまで近づいているということです」と彼は言う。
paiN戦の前に行ったインタヴューで、レヒトはOpenAIが人間のプロチームを破ると予想していた(そうでなければ、その後の試合で勝利するだろうとしていた)。しかし、彼はマシンがすぐに多種多様な典型的職業で人間に勝るようになるという意見には反対した。
「ゲーム内の環境というのは、遊んでいて楽しめるようにシンプルかつ多くの制限を伴うようにつくられています」と彼は言う。「これは数百万の反復シミュレーションを必要とするアルゴリズムにとっては好都合です。しかし、ゲームの世界には現実世界の予測不可能性や困難が欠けているのです」
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