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コロナ禍で急増するオンラインライブを成功させるには...? 2020年に急拡大した理由を「嵐」活動休止前最後のライブから探る。
EVENING編集部( Evening Music Records )
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2020年急拡大したオンラインライブ
新型コロナ感染症が流行し、2020年は実際の会場で開催されるリアルライブの多くが中止や延期を余儀なくされた。その一方、画面越しでファンがライブを楽しめる有料型オンラインライブが音楽業界で重要な役割を果たした。ぴあ総研が行った国内オンラインライブ市場に関する市場調査によると、有料型オンラインライブの市場規模は4~6月では11億、7~9月では64億、10~12月では373億となり、短期間で急拡大したことが公表されている。
オンラインライブのあり方
実際のライブは、アーティストのパフォーマンスの迫力や臨場感、会場内のファンの熱気や一体感を感じられる最高のエンターテイメントの場である。そのため、実際のライブ会場に足を運び、アーティストのパフォーマンスを生で見ることにとって変わるものは無い。
しかし、オンラインライブにもオンラインの良さがある。例えば、会場の席数は限られているのに対し、オンラインライブは視聴数に制限がないため、今までチケットが手に入らなかったアーティストのライブをより多くの人に楽しんでもらえる機会を提供できる。さらに最高のカメラワークでパフォーマンスを堪能できるため、席運に左右されること無く、全員が「神席」(最前列や花道横などアーティストのパフォーマンスをかなり近い距離でみることができる席)からの目線でライブを楽しむことができる。しかし、オンラインになるとファンの歓声をアーティストに届けることが難しいため、実際のライブよりもファンとの繋がりが希薄になってしまう。そのため、オンライン上でもファンと繋がれる企画を行うことは重要になってくるだろう。
実際のライブを再現するのではなく、オンラインの良さを活かし、新しいワクワクや感動を届けることがオンラインライブのあり方であると思う。
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オンラインライブを成功させる秘訣とは何か...
そもそもオンラインライブの成功とは何なのだろうか。もちろん動員数を増やして収益を上げることは成功の要素として不可欠である。しかし、成功の本質は視聴者がアーティストのライブを「リアル」に感じ、それぞれの空間で楽しむことを実現することである。視聴者が動画を見るだけでは、ライブDVDと差別化できない。そのため、「リアル」を感じる体験をどう作るのかがオンラインライブにおいて非常に重要である。これを意識することで、実際のライブと比較して感じられる物足りなさを軽減できるかも知れない。
では、具体的にどんな体験を組み込めば、視聴者はライブの「リアル」を感じ、満足度が高いライブ配信になるだろうか...。
2020年のコロナ禍、様々なアーティストが工夫を凝らしたオンラインライブを行ってきた。本稿ではその中でも、2020年12月31日に行われた嵐活動休止前最後のライブ「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」を取り上げようと思う。このライブは、嵐が今まで日本のエンターテイメントの最前線を駆け抜けてきた集大成として捉えられており、オンライン上で最大限の「リアル」な顧客体験を提供するヒントが沢山散りばめられている。沢山紹介したいが本稿では3つ紹介する。
ライブ前の準備期間を楽しむ企画を盛り込むこと
多くのファンはライブへの参加が決まると、1ヶ月前からワクワクしライブに向けた様々な準備に忙しくなる。例えばライブで使ううちわを作成したり、ライブで着る参戦服を考えたり、遠征する場合にはホテルを予約したり、過去のライブ映像をみてコール&レスポンスを練習したりする。そして期待感がピークに達した状態でライブ会場に向かうのである。
オンラインライブでは会場に実際行かない分、このような準備がファンにとって意味を持たなくなってしまう。そこで、嵐はライブの1ヶ月前から「This is 嵐 LIVE みんなで準備だ!T V」と題した動画の配信をYouTubeで始めた。告知編1回、本編10回のシリーズとして、ライブの準備を、ファンと嵐が一緒に楽しみながら進めていくための動画である。チケットの購入方法、視聴環境の準備方法など誰もが戸惑わずに楽しめるように嵐が教えてくれる動画や、「G U T S」のダンス「言葉より大切なもの」の歌、「感謝カンゲキ雨嵐」のコールを嵐が実践しながら指導するパフォーマンス講座もあった。
パフォーマンス講座は最後に「課題」がだされ、ファンは歌やコール、ダンスを練習し、録画・録音したものを提出することになった。この音声や動画はライブで実際に使用されるため、ファンは1ヶ月間ライブの参加者の1人として最高の準備期間を過ごすことができたのである。準備をすることで、ライブに対する期待感も日々高まっていったのだ。
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ライブ中に「リアル感」を感じられる場の構築する
ライブ内では、「リアル感」を感じられる瞬間が沢山あった。特に、コールや歌、ダンスなどのファンの投稿素材をライブに融合したことはファンの一体感を生み出した。投稿されたファンの声を用いて「あ・ら・し」コールを作り、ライブ開始直前に無人の会場に響かせたり、嵐が立つステージの背面と天井いっぱいに「GUTS!」を踊るファンの動画が映されたりした。ライブ音声やデジタル音源を用いるのではなく、参加者の投稿素材を使うことで、リアル感が増し、参加者の気持ちを盛り上げることができた。
また、ライブ中にオンライン上で嵐と会える「MEETS CHANCE機能」が導入された。会場には約100枚のモニターとカメラが用意され、モニターはファンの姿を映し出すために、カメラは嵐を映すために使われた。当選したファンの映像が、嵐の目の前のモニター画面にリアルタイムで映され、直接双方向でコミュニケーションが取れる仕組みになっていた。そのため、多くのファンはMEETS CHANCEのために、実際のライブと同じようにライブTシャツを着用し、うちわを手にしてライブを鑑賞していた。オンライン上でも、ファンと繋がれるサービスがあると、オンラインライブをより一層楽しいものにしてくれるだろう。
ライブに参加した証を残す
実際のライブでは紙チケットやグッズなど、時間が経ってもライブの記憶が蘇るようなライブに参加した証が残る。しかし、オンラインライブはオンライングッズを買わない限り、ライブの参加したことが形として残しづらい。
This is 嵐LIVEではライブが終わって年が明けると、配信に参加したファンクラブ会員には、紙チケットと実際に演出で使われた銀テープが届いた。銀テープとは、ライブ中に会場で飛ばされ、それをファンが拾って帰るというライブのお土産の役割を果たす。嵐のライブに参加した記念が手元に残ることで、ファンはオンラインライブに参加したことを改めて実感し、その時間に嵐のパフォーマンスをリアルで見ていたことを確かめることができる。
まとめ
嵐のライブはどうすればファンを楽しませられるかを追求した結果である。嵐と同じように膨大な資金を投資してライブを作り上げることは難しい状況であっても、オンライン上でも視聴者に「リアル感」を感じてもらい、楽しませたいという精神がオンラインライブの成功の鍵であると思う。それは画面越しでファンにメッセージを伝えるといった小さなことから、デジタルやAR技術を駆使した大きな企画に至るまで全てに共通することである。
今後新型コロナウイルスが終息し、会場でのライブが再開されたとしても、多くのアーティストがオンラインライブと併用していくことが予想される。このライブ自粛ムードをチャンスに変えてオンラインライブが今後さらに発展していく事を期待したい。
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