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公開日：2025年12月22日

プロデュースや編曲など、さまざまな音楽シーンでマルチな活躍をするRhymeTube（ライムチューブ）。

今回の45分に渡るロングインタビューでは、活動の裏側や今後の展望、彼の音楽に対する熱量やこだわりなどから内に秘める情熱を感じた。

本記事では、彼の音楽ルーツから活躍シーンの裏側、これからのビジョンについてまでを語るRhymeTubeに迫る。

ーアーティスト業とプロデュース業を並行しておられますが、そのルーツについてお伺いしたいです。

もともと僕はラップをする側だったんですね。ODD Foot Works（Pecori(rap)、Tondenhey(guitar)、SunBalkan(bass)から成るボトムレスな音楽グループ）のペコリとグループを組んでいて、高校三年生から大学生まで一緒にやっていました。その時に「自分はフロントに立つ側じゃないな」という違和感を感じたんですよ。その頃に「楽曲やビートを作る側がしっくりくるな」というのが肌感であったので、裏方のルーツで言えばそれをやりながら知り合ったラッパーにビートを投げたことが最初です。

ーなるほど、そこで裏方の方が合っているなと感じ始めたということですか？

でも音楽をするきっかけとしては、自分がラップをするためのビートメイクでした。MPCという機材でビートを作るということをやっていたんですけど、ラップをするよりビートを作る方が楽しいという気持ちが強くなっていったんですよ。自分が憧れを持つ人も”アーティスト”というよりかは”プロデューサー”や”トラックメイカー”の人が増えてくるようになって、そこから気持ちのズレを感じました。

ーではもともとプロデューサーとしてのスキルやビジョンをお持ちだったということですか？

どうなんですかね。その当時に遡ってみないと分かりませんが、今思えばそうかもしれないですね。日本のプロデューサーでBACHLOGIC（バックロジック）という方がいるんですけど、彼への憧れが強くてどんどんプロデューサーとしてのマインドに切り替わっていったっていうのもあるかもしれないです。

© 日本猿

ープロデューサーとしてパフォーマンスのスキルをお持ちの方もおられますが、プロデュースも同時に行うとなると一朝一夕にできるものではないと感じます。プロデュース業においては、やってみたら自然とできたという感じですか？

僕がやっているのは、本当のプロデュースっていう意味だときちんとプロデュースできている楽曲はそんなにないかもしれないです。HIPHOPでは「トラック提供」をプロデュースという表記にすることが多いので、内部までディレクションすることはあまりないです。

ーでは、徐々にプロデュース業の幅を広げておられているのですか？

これが、僕今広げてるんじゃなくて狭めてるんですよね。昔は、空音君の「Hug」とかRin音くんの「snow jam」、SUSHI BOYSの「DRUG」のサウンドプロデュースをしていましたが、今はそういうことはやっていなくて。僕、根っこが多分オルタナティブな人間で、ヒップホップの”ど真ん中”っていうのを今までやってきていないんですよ。もちろんヒップホップは大好きだし、僕のルーツでもあるんですよ。ただ、感性かセンスかは分かりませんが、ポップスやクラブミュージック寄りのサウンドを軸にして自分の曲を作ったり提供をしたりしてきたので、最近は”ヒップホップ寄りのオルタナティブ”に絞ってやってますね。そこは僕の中で自分なりに芯を持って今プロデュースしてます。

ーコアとなるジャンルの焦点を絞ってご活動されてるようなイメージですか？

はい、そうですね。今だと多分UKのサウンドが中心かな。ガラージだったり、ドリルのリズムだったり・・・。日本猿（UKドリルを軸にした若手気鋭ラッパー）がいて、彼を１年ちょっと今プロデュースしているんですよ。彼が結構UKサウンドでラップをするところがフィールして、僕から声をかけてやっているんですけど。今は、日本猿のサウンドを真ん中に置いていて、そこからあまりズレないように他のラッパーもプロデュースしてますね。

ーなるほど。逆にこれから注目するトラックや取り入れていきたいサウンドとかはありますか？

Brakence（ブレイケンス、GlitchPopの新星）というアーティストがやってるサウンドは、グリッチポップというか、いろんなジャンルやリズムが混ざっていて、それがすごく好きなんですよね。結構ガチャガチャになってるというか、複雑に色んな音が混ざってるっていう感じが聞いてて楽しいので。ハイパーポップとかの類になるんですかね？一応。

ーアーティスト単位では現時点でどういったところに注目されていますか？

個人的にいいと思ってるラッパーで、MK woop（エムケイウープ、東京を拠点とするラッパー兼DJ）っていうラッパーがいまして。どの曲もドライで好きです。僕が言うより彼の音楽を聞いてもらえたらすぐに分かると思うんですけど、クールなんだけどハードというか、音として耳障りがすごい良くて、最初に聞いたときにすぐ「おっやべえ！」ってなったって感じです。夏に出たEPもとても良くて、自分はgaucheって曲が好きです。

ーすごいですねそれは。来るものがあったんですね。接点のないアーティストの方でも構いませんが他にはいらっしゃいますか？

ラッパーじゃない所でいうと、jo0ji（ジョージ）（シンガーソングライター）という方は、うちの奥さんがめちゃくちゃ好きで。常日頃聞いてるんですけど、それを僕も聞いて好きになりました。僕は高校を卒業するぐらいまでバンドサウンドを通って来なかったので、音楽としてちゃんと聞き始めてから通じるようになりました。jo0jiさんはメロディがとにかくいい！トップラインがすごい良いなあって思う。

ー面白いですね。ジャンルに関わらず、耳障りでいいなと感じるようなアーティストの方もいらっしゃるんですね。

やっぱり音楽っていうのは楽しいもので、もちろん内面を揺るがす歌詞に食らって元気が出たり生きる糧になったりとか、そういう励ましの意味もあるんですけど、BGMとしてムードとしてっていうところが僕はありますね。気分に合ったサウンドとなると、言葉としてじゃなく、耳で、音としてきて入ってきたものが重要でもあるかなと思いますね。

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ープロデュース業における課題はありますか？

プロデュース業は全体的に僕の見込みがまだ甘いです。日本猿を最初見つけた時は、おそらく去年（2024年）の夏前ぐらいだったんですけど、まだ彼の曲がそんなに再生数もなくて、今年のラップスターのファイナリストにいるビジョンが見えて。これは何かきっかけを作ったら多分凄いことになるなと思って声をかけたんですけど、僕がまだきっかけを作れていないという課題があります。ラップスターも落ちてしまったので。

ープロデューサーとして何か思うことがあるのですか？

彼なりに落ちた理由を分かっててすごい反省してるんですね。でも、彼以外の若いアーティスト達にも言いたいんですけど、いっぱい挫折してほしいなって思ってます。「もうこれしかない」っていうぐらい完璧なものを作った上で挫折してほしいんですよね。「ちょっと抜いちゃった」「ちょっと甘えちゃった」みたいな所での挫折はあまり意味がないので「もうこれしかない」ぐらいの極限のものが出来てから挫折したらすごい伸びるんですよ。

ーなるほど。

今日本猿はそういう状況なのでこっからむしろ頑張ってほしいですね。オンゴーイングで試行錯誤して、成功して、どんどん上にいってほしいです。僕はしっかりサポートしたいと思ってます。

ー今お話を聞く中で「ビジョンが見える」とおっしゃっていましたが、プロデューサーの方でも断言できる人はなかなか少ないと思います。やはりビビッと感じるものがあったのですか？

あるある（笑）多くの人がそれを言わないだけで多分あると思いますよ大なり小なり。ただ僕はそれを本当に言ってしまう、ちょっとバカなだけですね（笑）堂々としていれば失敗しても意外と恥ずかしくないんです。

ーご自身で感じられたことを正しく表現されているということですね。

そうですね。それを言われたらアーティスト側も嬉しいと思うし、それぐらいアーティストのことをいいと思ってるっていう意思表明だと思ってるので。現に、これからプロデュースするラッパーでもそういうやつがいて、それも楽しみですね。

ーすごいですね。次々と新しい芽を見つけて育てるみたいなところまで行かれてるわけですね。

でもまず自分があがらないといけないなと思ってます。もちろんラッパーの人が売れてくれたら、それは一番いいこと。ただ、僕も一緒に上がらないといけないっていうのもあって、実はひっそりずっと自分の活動（制作）はしてます。

ープロデュース業とご自身のアーティスト業の比重は今どのくらいですか？

実は自分の制作が生活の1割、プロデュースワークが2割、子育てが7割ですね。

ーお子さん！？おめでとうございます。笑

ありがとうございます。もう1歳なので、今が一番おてんばぐらい動きます。

ーかわいい盛りですね。

そうなんです。タイミング的には一番活動しづらい時期ですが、僕は制作の速さに自信がありまして。頭の中で固まっているものをただ作る、そのスピードが速いということは僕の長所です。基本的に日中は子育てで、21時ぐらいから全てを始めますが、子育てが始まってから余計時間がなくなったので、尚の事制作スピードが上がりましたね。子どもが生まれる前よりは流石にペースは落ちました。

ーそれだけ集中してクリエイティブを作れるみたいなところだと、何か日頃インスピレーションを受けるものや刺激の元になるようなものがあるということですか？

学生時代だったら多分今の何十倍も音楽を聞いてるんですよ。移動中もずっとイヤホンで新譜を彫ったり、TSUTAYA行ってレンタルしたり・・・。今ってなかなかそういう時間が作りづらいので、せいぜいYouTube流してリビングにいるときにBGMとして聞くみたいな感じなんですよね。「シナぷしゅ」（テレビ東京系列乳幼児向け子供番組）という番組があって、日中はそういう音楽ばかり聞いてるんです。でもこれが意外とインスピレーションになることもあって！

ーそうなんですか。笑

「何これ！？」みたいな気持ちになってクレジット見ます！まあそれは半分冗談で（笑）本当の意味でいうインスピレーションの大元はやっぱり自分がプロデュースしてるラッパーですよね。

ーはいはい。笑 えーそうなんですね。

「これって何に影響を受けたの？」「何聞いてんの？」といった話をして、そこからもらいます。「これ聞いてるんですよ」とか「今これがアツいですよ」と言われる曲は、ティーンとか20代前半の子たちが聞いてる音楽で、僕がたどり着けないサウンドが多いので、そこからめちゃくちゃ影響を受けますね。僕の世代になってくると音楽ジャンルに対する苦手意識がだんだん出てくると思うんですよ。僕の年代ぐらいから受け付けられなくなる音楽とか。でもそういう視点を一切排除して聞くようにしています。すごい音割れしてるビートや常識外的な音楽を聞いて、意外とこういうのありだなとか思うこともあって新しい発見がよくあります。

ー日々アンテナを張られているんですね。自分の中の感性を新しく更新していくことに積極的なんですね。

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ーご自身の制作やプロデュース業をされる中での苦悩や、今まで一番難しさを感じた局面はありますか？

まさに今です。自分の制作が主に一番の悩みなんですけど、本当は今年アルバム出す予定だったんですよ。今月（11月）に出す予定だったんですけど、トラックは全部できたけど、一曲も完成しないという事態がありまして。

ーやっぱりお忙しい中でのご活動ですもんね。

僕はプロデューサーとしていろんな方を客演で呼ぶじゃないですか。それをまとめるのがとても大変だなと思いました。スケジュールからブッキングまでを完全にインディペンデントでやっているので、誰の力も借りずにすることが大変ですね。急なスケジュール変更、やりとりをする上での配慮みたいな部分など、すべての連絡や話し合いを自分でやることは、とても大変な作業だなと感じます。尚且つ、本当に呼びたい人たちはなかなか連絡が取れなかったり、忙しかったり。そもそも「誰だよお前」みたいな雰囲気を出されることもあるので、自分の追い求めてる音楽を実現するのはとても難しいなって思います。

ー業界の根回しみたいなところのが、ご自身の一種の負荷的な部分になってるという感じですか？

そうなんですよ。今年アルバムができていたら、本当はレーベルを作るつもりだったんですよ。レーベルを立ち上げるためにいろんな人に会って勉強しているんですけど、もう本当に大変です。全然アーティストとして使う脳みそじゃないんですよね。

ーそうですね。業界のレコード会社さんのようなイメージの動き方ですよね。

そうなんですよ。社会人としてのマナーとかビジネス的な考え方もすごい大事なので、その辺はもう頭おかしくなりそうになるなって思いながらやってます。でもこれができるようになれば、もっと若い子たちを支えられるなって思ってるので、今はとにかく行動しようと言う気持ちで動いてます。だから”自分をプロデュースする”じゃないですけど、音楽的にもトータル的な意味でも、セルフプロデュースみたいなことを頑張りたいです。

ー2026年は今の活動を実らせていく年にするイメージですか？

2026年はまず自分のアルバムを出すことが第一ですね。結構前のアルバムから期間が空いているし、もう頭にはあるものなのでそれを早く出したいとは思ってます。プラス、自分のアルバムをリリースするためのレーベルを作りたいっていうところと、プロデュースしてるアーティストを全員一段階上に押し上げたいっていう気持ちがあります。単曲でプロデュースというよりは、アルバムのような作品集として”まとまったプロデュース”を中心にやっていこうかなって思ってます。プロデューサーとしては、3年後ぐらいには誰もが知っているような人になりたいなと思っているので、とても短い期間にすごく大変な努力をしないといけないなと思います。

ープロデュース側に焦点を当てますと、今までで一番手応えがあった／世の中からの反響があったことは何ですか？

単純に”ヒットした＝手応え”ではないんですよね。”数字＝自分が成し遂げた”とかではなくて。でもSUSHI BOYSの「DRUG」は、だいぶ狙い通りになったなと思います。その当時日本にはなかったサウンドだし、すごくヒットしたわけではありませんが、知ってる人は知ってるっていう位置まで曲を持っていけたことはイメージ通りだなという肌感です。あとは最近出したFARMHOUSE（ feat Kee Rooz）の「1day(R)」もイメージ通りの感想や評価をもらってるので、意図を持ってプロデュースもしくはクリエイティブを作って、それ通りに世の中から帰ってくる瞬間が「あ、これ来たな」みたいな思いになりますね。でも結構反響をもらうと麻痺して「いや、もっといけるだろう」っていう気持ちになります。飽くなき欲求的な意味では、真に満足したことはないかもしれないです。

ーまだ上がれるだろうという思いがあるということですか？

そうです。「世界的にヒットしろよ！」とか。多分世界的にヒットしても満足できない可能性ありますよね。そういう人たちが多分USの最前線でやってる人たちだと思うので、それぐらいのスケールのでかい気持ちが大事かもしれないです。

ーそうは言ってもリスナーの方から反響をいただけた際は、純粋に嬉しく感じますか？

そうですね。僕はあくまで縁の下の力持ちみたいなところがあるので、そういう意味だとあまり反響や感想は来ないんですけど、友達や知り合いから言われるのはうれしいですね。僕の知り合いは大体アーティストだったり、音楽に精通する人たちだったりするので、そういう人たちから何か言われることはすごい納得できるし勉強になりますね。

ー業界の方や同業の方から評価される機会はなかなかありませんからね。それこそ認めてもらえたみたいに感じる一番のポイントなんですか？

そうですね。僕の周りっていうスケールの小さい話ですけど、それでもこういう身近な人が伝えてくれる感想とかは次の自分のモチベーションになりますね。でも、手応えを自分の中で感じてた作品が全然回らなかった時は精神的にくらって制作意欲がちょっと減ることもあるので、そう言う時に止まっちゃいけないなとは思ってます。やっぱり続けてることは正義で、一番大事な才能だと思ってるんですよね。結局続けてないと意味ないし、続けていたら自分自身も進化するし、音楽も成長する。結果がちゃんとついてくるので、止まらずにやりたい。

ー続けることが基礎で、大切なポイントということですね。

そうですね、でも簡単じゃないですね。やっぱり社会に出てる人も、仕事と同時進行で音楽をやるっていうのはとても大変だと思いますね。土日のような短い時間でもできるっていうのはもう「早くやりたい！」っていう好きだからこその気持ちがあるからですよね。音楽が好きっていうのも一緒の才能なので、それがあるだけでめっちゃ強いんですよ。だからこそ、これは若い子たちにも言いたいですけど、今結果が出なくても焦らないでずっと続けて欲しいなって思います。

ーこれから業界を目指されるような方や若者にとってはすごく心強い言葉になりますね。

そうですね。って僕が言ったところでという感じはあるかもしれませんが、みんなやめないで続けてほしいって思います。

ーありがとうございます。

ーでは、最後に今回の記事を読んでくださった読者の方に向けて、何かメッセージをお伝えするとしたら...

そうですね（笑）じゃあ僕はトラックメーカーなので、これを読んでる若い世代のトラックメーカーに伝えるんですけど、好きなアーティストがいたらDMやメールで作品を送りまくってください！無視されても諦めずに、永遠に送り続けてください。いつか絶対帰ってきますっていう、それだけです（笑）

ーなるほど。

意外とみんな人間で、しっかり見てます。手が届かないような存在に感じるかもしれないけど、ちゃんと届きます。だから、憧れのまま終わらせちゃだめだよっていうのを同業者に捧げるメッセージとします！一方で、リスナーや音楽を聴いてる人たちに捧げることがあるとしたら、ルーツを追いかけて欲しいです。例えば僕のことが好きだとしたら、僕だけを追いかけるんじゃなくて、僕が好きな人も追っかけてほしいなって思います。僕もそうしていたんですけど、ルーツも一緒に知ると音楽の深みが増すんですよ。憧れてる人の憧れを追いかけるみたいな。

ー考え方とかバックボーン含めて？

そうですね。音楽の解釈が変わりますね。「だからこういうサウンドなんだ」「だからこういうラップしてるんだ」とかがわかってくるし面白いです。良い音楽をさらに良く聞けるんで、そうしてみたらどうでしょうか？って感じですね。

ーありがとうございます。実践される方もおられると思います。

今回の取材では、RhymeTubeの活動にかける想いや音楽制作のルーツ、プロデュースについてお話しを伺うことができた。

是非、RhymeTubeのトラックを聞き、彼がプロデュースするラッパーも聞いてみてはどうだろうか。彼のこれからの活躍に目が離せない。

関連リンク

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