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WANIMA、横浜アリーナで開催の「Cheddar Flavor Tour Final 2021」。ライブで感じた湧き上がる高揚感と興奮とは...
EVENING編集部( Evening Music Records )
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5月にスタートし、京都大作戦の出演予定だった2週目の開催中止(延期)を受けて急遽決定した「京都編」も含め22公演を開催してきたWANIMA「Cheddar Flavor Tour 2021」。その「Final」が、この横浜アリーナ2デイズ「Cheddar Flavor Tour Final 2021」である。タイトルはツアーに引き続き昨年9月にリリースしたミニアルバム『Cheddar Flavor』のタイトルを冠しているものの、WANIMAはこのツアーが始まる直前の4月には6thシングル『Chilly Chili Sauce』、USEN STUDIO COASTでひとまずツアーがひと段落した後の8月には7thシングル『Chopped Grill Chicken』をリリース。横浜アリーナを貸し切ってのこの2日間は、WANIMA初となるこれら「3部作」を提げて行われる、この1年の総決算であるともいえる。
このライブに先駆けて彼らはサブスク限定で3部作の楽曲を収録し、本ツアーのSEである新曲「Brand New Day」を加えたアルバム『Fresh Cheese Delivery』を配信。もともとフルアルバムを作るつもりだったところにコロナ禍となり、開催中だった「COMINATCHA!! TOUR 2019-2020」も多くの公演の中止を余儀なくされるなか、受け取る人に未来を楽しみにしてもらえるように、楽曲を小分けにしてリリースすることにした――という3部作の背景を考えると、「ひとつ」の作品となったこのアルバムは2020年から2021年にかけて曲を作り続け走り抜けてきたWANIMAの集大成でもある。そして、この「Cheddar Flavor Tour Final 2021」もまさしくそういうものだった。苦しい時期をWANIMAの音楽のもとに集ってともに乗り越えてきたメンバー、スタッフ、そしてもちろんファン、全員で再会を祝し、ここから先の未来を一緒に歩んでいくことを誓い合うような、強い思いに満ち溢れていた。
横浜アリーナを埋めたオーディエンスによる熱い手拍子が巻き起こるなか、「Brand New Day」をバックにステージに登場したKENTA、FUJI、KO-SHINの3人。FUJIがドラを力強く打ち鳴らし、1曲目「Cheddar Flavor」から分厚いサウンドが繰り出される。KENTAはさっそく笑顔で客席を見渡している。ここから3部作のタイトルトラックを3連打。「Chilly Chili Sauce」ではオーディエンスのジャンプで横アリが揺れ、「Chopped Grill Chicken」ではKENTAがハンドマイクでステージの端から端まで闊歩する。わずか3曲、だがこれだけでWANIMAの3人がいかに気合を入れてこの日に臨んでいるかがわかる。髪の毛を真っ赤に染めたKO-SHINのギターリフはずっしりとした量感を持ち、FUJIのドラムは目の前の壁を叩き割るかのようなテンションで鳴り響き、KENTAの歌は湧き上がる高揚感と興奮を隠さない。
嵐のような手拍子が重なり...
「とうとうやってまいりました、Cheddar Flavor Tour Final、2日目。我々が東京都在住熊本県出身、WANIMAでございます!」。そんな挨拶とともに、少し話をするため観客に椅子を勧めるKENTA。「昨日よりいい椅子使ってます!」とその舌も絶好調だ。「みんなができんことは全部代わりに、責任持って我々WANIMAがやります!」。客席のあちこちに目を向けながらKENTAが語る。「今日1日くらい、気を遣わんと、ゆっくりして帰ってください」。とはいえ、当然ながら「ゆっくり」はしていられないのがWANIMAのライブだ。と、ここでFUJIのドラムソロが聞こえてくる。雷鳴のようなタムに機関銃のようなスネア、電光石火のシンバルにサンプリングパッドに仕込んだ声素材(FUJIによるモノマネ声)も駆使しつつ、カメラに向かってポーズを決める。気合一閃ドラを叩くと、KENTAとKO-SHINも帰ってきて「JUICE UP!!のテーマ」へ。3人の声が合わさり、そこに嵐のような手拍子も重なっていく。
『Chopped Grill Chicken』からの「Get out」でますますバンドのサウンドはヒートアップ。3人の呼吸もばっちりで、ツアーを重ねてきた手応えが音に宿っているようだ。3人だけではない。鮮やかな照明、どっしりとしたスケールの大きな音、チーム一体で培ってきたものが、ここ横浜アリーナで特大の花を咲かせている、そんな印象である。そこから彼らのライブの鉄板曲「いつもの流れ」へ。KO-SHINの鋭いギターが空気を変え、KENTAはお立ち台に乗ってベースを弾く。観客は全力で手を掲げ、その熱い音に応えている。そのテンションのまま突入したのは『Chilly Chili Sauce』収録の「月の傍で」。音源の何倍も激しい音が、かえってこの曲にこめられた切なさを爆発させる。喉を振り絞るようにして歌うKENTAの声に込められた感情は、次の「THANX」でさらに大きなものになる。「こんな大変な時期にWANIMAに会いに来てくれてありがとう 心の中で歌ってくれ!」。そんな言葉とともに披露されたこの曲、歌うKENTAはいい笑顔だ。
そんななか歌われたのがWANIMAにとって、KENTAにとってとても大事な曲「1106」だった。このツアー、STUDIO COASTで観たときも思ったが、この曲の位置付けは大きく変わった。もともとKENTAが亡き祖父に向けて書いた曲、その思いは今ももちろん変わっていないが、そこに、このコロナ禍で彼が感じてきた苦しみ、悔しさ、喪失感、そういったものが重なることで、この「1106」はより普遍的で強い曲に生まれ変わった気がする。「コロナになって、彼氏、彼女、家族、友達、ペット、なんでもいいけど、今大事なものはなんですか?って訊かれたとき頭に思い浮かぶ人やったり、ものやったり、そういうのがおったらいいなって思います。もしそれが見当たらん人がおるんやったら、目の前の俺らWANIMA、イメージしてよ。いつだっておるやんか。メンバー、スタッフ、目の前におるみんなはもう失いたくないなって思う。やから、キツい時とかあったらいつでも頼って欲しいんよ。それだけは今日言おうと思ってた。俺はじいちゃんに向けて歌うけど、みんな大事な人を思い浮かべて聴いて欲しいなって思います」。歌に入る前に彼が語った言葉はそれを物語っていた。そして実際、横浜アリーナで鳴り響いた「1106」は、KENTAの思いとそこにいる全員の思いが共鳴・増幅して、どこまでも広がっていくような感覚になる曲だった。
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息を呑むような圧巻のパフォーマンス
ライブも後半に差し掛かり、KO-SHINがブルージーで繊細なギターのソロ演奏を披露すると、そこから『Cheddar Flavor』の「Faker」へ。鍛え上げられた3ピースのアンサンブル、早口で言葉を重ねていくボーカルとコーラス、構成している要素は力強いのにどうしようもなく繊細で切ない、WANIMAの真骨頂である。最後のロングトーンが空気を振るわせると、かき鳴らされるギターに合わせてKENTAが再び口を開く。「この音は、このライブは、このライブは、俺らにとって欠かせないものやから、ないとダメやから。目の前におるおまえたち、俺にとって必要なものやから、ないとダメやから。となりに、となりに、となりにおってくれよ!」。となりに、となりに、と連呼されるなか始まった「となりに」。腕を掲げる人、両手を広げる人、体をに動かす人、ただじっとステージを見つめる人、それぞれのやり方でKENTAからのメッセージを受け取ろうとする人々の姿が客席にはあった。FUJIがドラムをかき回し、KO-SHINがガシガシと弦をかき鳴らすフィニッシュまで、息を呑むような圧巻のパフォーマンスだ。
ここから、堰を切ったようにKENTAの思いが溢れ出していく。「横アリ! なあなあ、明日って晴れるかなあ? おい横浜、明日晴れるかな、晴れるといいなあ! この心のモヤモヤが取れるといいよね。早くコロナなんか明けるといいな。この心のモヤモヤが晴れますように!」。そんな言葉から始まった「エル」では3人の声が本当だったら起きているはずの客席での大合唱をカバー。「1106」と同じく、この「エル」も今鳴らされることで新たな意味をもち、さらに強くなった楽曲のひとつだろう。FUJIによる「横浜!」コールも飛び出し、KO-SHINがソロを弾く横にはKENTAが寄り添う。続く「つづくもの」ではマイクを手にしたKENTAがステージの端、お客さんのすぐ近くまで走り寄る。《生きている限り ソレはつづくもの》という歌詞、そして「ライブってやっぱサイコーやな!」と言ってWANIMAコールを繰り出す彼の姿には、こんな時代でも、いやこんな時代だからこそ再確認した、音楽を作り鳴らす意志がメラメラと燃える。そんな思いにオーディエンスとの信頼関係も加わって凄まじい熱狂を生み出したのが次の「オドルヨル」だった。いうまでもなくWANIMA屈指のライブ定番曲。だがそんな「予定調和」をはるかに超えた空間が横浜アリーナには生まれていた。ステージ後方では巨大なミラーボールがぐるぐる回り、色とりどりのライトがステージも客席も眩く照らし出し、FUJIの叩き出すビートとKO-SHINのヘヴィなリフがアリーナ一面のジャンプを誘う。KENTAの「飛び跳ねろ!」の声に応えて、横浜アリーナが揺れる揺れる! 「オドルヨルに、なりました!」。声も絶え絶えにそう宣言するKENTAの顔には満面の笑みだ。
「みんな見えとるよ!」。ステージ中央にあぐらをかいて座ったKENTAが改めて客席に声をかける。「24本、全国いろんなところを周ってきました」。地域ごとに異なるコロナの状況、街の空気感を感じながら、そんな中でもWANIMAとみんなで作り上げ、成功させることをテーマに掲げて敢行してきたツアー。「WANIMA史上、今までで一番気合が入ったツアーでした。今の俺らが信じる音楽、今のWANIMAを観てほしくてさ。こんな時代でも、俺らおるよ、変わらずに音出しよるよって。だから今かなりホッとしてるのと、今日来てくれてありがとうという気持ちでいっぱいです」という正直な気持ちに大きな拍手が送られる。
最後は明るいギターサウンドとともに...
そんなツアーの中、みんなが飛び跳ねる姿や手を叩く姿に多くのものをもらったというKENTA。「みんなの毎日の生活の事情はわからないけど、たぶん、毎日楽しくて幸せでいっぱいなんですっていうやつはおらんと思う。毎日苦しくてさ、毎日ちょっとの小さな幸せ見つけてさ。そこは俺らもみんなも何ら変わりないと思っとるんよ。やからこういう楽しい1日、俺らが楽しいなって思う1日をみんなと一緒に共有したくて、ともに音を出したくて。俺らこんな音しか出せんけど、俺らの出す音で、みんなの小さな何かが変わればいいなって思って、信じて、デビューした頃と変わらず音出してます。これから先は腐らずに、信じたやつが勝つ時代やって俺は思うからさ。これから先もいろんなことがあると思うけど、こんな俺らでよかったら、いつでも音出すし、いつでもライブするけん、また気が向いたらWANIMAに会いに来てよ」。彼らがまさに「腐らず」「信じ」て、音楽を作り続けてきたこの1年は、このKENTAの言葉によって、ここから先の未来へとつながった。それを証明したのが本編ラスト2曲、「離れていても」と「ネガウコト」だった。3部作のなかでも、一際率直なKENTAの思いが感じられる曲たち。「これからもよろしく 愛しとるよ」という言葉とともに優しく語りかけるように歌われた「ネガウコト」は、その美しい照明も相まって、暗闇に最後に差し込んできた光そのもののようだった。ステージ両脇のスクリーンに、まっすぐ前を見つめて歌うKENTAの表情が映る。その表情は、このライブを改めて噛み締めているようにも、歌詞に込めたメッセージを自分自身に言い聞かせているようにも見えた。
いったんステージを去ったものの、鳴り止まない拍手に応えて再び戻ってきた3人。「拍手はアンコールってことで受け止めていいですか?」と笑うKENTA。今出てくるときにKO-SHINだけ遅かったことをツッコみ、そこから3人で雑談を繰り広げると、「今のWANIMA、最強やから。そして、今のおまえたちも最強、最高やからな!」とおもむろに胸を張る。そして披露されたのは、「(『Fresh Cheese Delivery』の)18曲の中でもWANIMA、とくに俺が大事にしてる曲」だという「最後になるなら」だった。そこから「夏の思い出を作っていない」と「花火」を演奏すると、最後は明るいギターサウンドとともに「いつかきっと」。《はみ出すくらいのはじまりを歌う/悲しみに耐えて 生きるワケを探す》と歌うこの曲が、ここからまた始まっていくWANIMAと我々の日々を照らし出した。
なお、本公演の模様を11月28日(日) 20:30〜WOWOWにて放送、配信される。
文・小川智宏
【WOWOW「WANIMA Cheddar Flavor Tour Final 2021」 放送概要】
放送局:WOWOW
番組名:「WANIMA Cheddar Flavor Tour Final 2021」
初回放送日時:11月28日(日)20:30よりOA
番組HP:https://www.wowow.co.jp/detail/174717
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